PJ: 紙野 武広
【本の紹介】『遊牧夫婦』近藤雄生著
2010年09月08日 06:17 JST
『遊牧夫婦』近藤雄生著 
【PJニュース 2010年9月8日】本書は、著者が結婚早々に妻と旅した五年間のうちの最初の一年をまとめたものである。近藤夫妻が、いろんな人たちとの出会いと別れを繰り返しながら旅を続けていく様子がつぶさに記録されている。この記録をどう読むか。紀行文として、新たな夫婦のあり方として、また、ちょっとしたルポルタージュとして…。その解釈は読み手一人一人に任されている。
「無職、結婚、そのまま海外!」と本書の帯にはデカデカと書いている。私はこんなものが本になるのかと少々訝(いぶか)しく思いながら、本書を手にした。旅の始まりはオーストラリアのシドニー。途中二人の思い出の地キャンベラを通り、西部のバンバリーでイルカのボランティアをして過ごす。そして、そこから北上して東ティモール、バリ、ラマレラまでの旅だ。
近藤夫妻の馴れ初めから始まり、著者がぽつぽつと記事を書きながら旅をしていく様子が綴られている。私は読み進めながら、結婚、人生、国籍、また、オーストラリアという国について考えを巡らしていった。著者の旅を追体験している気分で、ページを次へ次へとめくっていき、あっという間に読み終えてしまった。読後には心地よいモヤモヤが残った。
著者の言うように旅が暮らしになる時代なのかもしれない。読んでいるうちに旅と暮らしの境界がなくなっていく。だが、私にはその不安定な状態が「旅」そのものだというふうに思えた。私が感じたあのモヤモヤは、自分でも感じたことのある「旅」の余韻にほかならない。
本書は確固としたテーマを持たない。決まった枠にはめることもできない。その分、読み手の解釈は自由だ。興味のある方は気軽に、ふらり旅に出た気分で本書を読んでみてはいかがだろうか。【了】
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