PJ: 林田 力
土地所有権移転登記の登記申請書を閲覧(上)
2010年07月06日 08:38 JST
閲覧した登記原因証明情報(撮影:林田力、撮影日:2010年7月3日) 
【PJニュース 2010年7月6日】東京法務局中野出張所(中野区野方)にてこのほど、土地所有権移転登記の登記申請書を閲覧した。不動産を購入する場合など通常は登記簿謄本(全部事項証明書)を取得する。これによって土地についての権利関係を確認できる。登記には権利推定力が認められている。即ち、登記簿の内容は実際の権利関係に合致していると推定される。このため、登記簿の内容は一応、信頼できる。
しかし、現実には実際の権利関係とは異なる登記が存在し得る。これは登記手続きでは形式的な書類審査しか行わないためである。住民票や実印、印鑑証明書、権利証(登記識別情報)を無断で借用または偽造できるならば、登記できてしまう。この結果、自分名義のはずの土地が登記簿上は譲渡されてしまったり、抵当権が設定されてしまったりという事態が起こりうる。このようなことを行う犯罪者は地面師と呼ばれる。
このような場合、先ず登記簿を調べることになるが、登記簿に記録された権利変動に不審点がある場合、どのような形で登記申請がなされたのか調べる必要がある。調査の必要は相続問題でも生じ得る。
故人(被相続人)の所有(相続財産)と思っていた不動産が、相続人の一人または第三者に所有権移転されていたということもある。そのような所有権移転登記の原因となる契約などが実際に行われていることを相続人が知っていれば問題ないが、そうでなければ実体がないのに勝手に名義を変更した可能性が生じる。
相続対策として特定の相続人に不動産を生前贈与する例は少なくない。全相続人了解の下で生前贈与したならば問題ない。しかし、そうではない場合、同居の相続人が勝手に親の権利証や実印を利用して、被相続人の知らないところで登記した疑いが生じる。このような場合に登記申請書を閲覧する必要がある。
登記簿は不動産に関する権利関係の公示が目的であり、誰でも確認できるものである。一方、登記申請書は登記申請するために申請人(の代理人)が作成し、法務局に提出した書類であり、閲覧は利害関係のある人に限られる。たとえば前述の相続の例ならば相続人である。閲覧中にメモや写真撮影は認められるが、コピーは交付されない。
法務局のカウンターで登記申請書の閲覧を希望すると、受付の人では対応の範囲を超えるためか、別の人に担当が代わった。最初に、どの申請書の閲覧を希望するのか尋ねられる。問題の不動産登記の全部事項証明書を提示し、閲覧したい登記申請の受付年月日・受付番号を答えた。
続いて利害関係を聞かれる。予め用意した戸籍全部事項証明書と身分証を提示し、土地所有者であった被相続人の相続人であることを説明した。申請書を渡されるので記入し、法務局内の印紙売場で購入した登記印紙(収入印紙とは別物)を貼り付けて提出した。しばらく待つと閲覧できる。登記申請書は大体、以下のような内容になっている。
・登記申請書
・印紙貼付台紙
・登記義務者(不動産の譲渡人)の住民票
・登記義務者の印鑑証明
・登記義務者・登記権利者(不動産の譲受人)の司法書士への委任状
・登記原因証明情報
・登記権利者の住民票
・固定資産評価証明書
申請書を閲覧することによって、どの司法書士に依頼したのか、いつ司法書士に委任状を提出したのか、署名の筆跡などを確認できる。
閲覧する上で最も肝心な資料は登記原因証明情報である。これは不動産登記法第61条に定めた「登記原因を証する情報」である。登記の原因となった事実や法律行為を示す情報である。具体的には売買ならば売買契約書が相当する。売買契約書だけでは権利移転日が不明な場合、例えば契約書で残金支払い時を権利移転時と定めた場合は、売買契約書に加え、残金の領収書も必要になる。「登記原因証明情報」という名前の文書が求められている訳ではない。
前述の通り、登記官は書面審査しか行わないため、登記申請の内容が正しいか否かは、この登記原因証明情報の内容が申請内容と矛盾しないか否かによって判断される。これによって、書面審査しか行わないながらも登記の信頼性を高めることができる。
しかし、制度には抜け道もあり、登記原因証明情報という名前の文書を作成して登記申請されることが多い。これは登記の原因についての事実を記載したものに当事者が署名押印したものである。
例えば「乙は、甲に対し、平成××年×月×日、本件不動産の所有権を贈与し、甲はこれを受諾した」と書かれた登記原因証明情報と題する文書に譲渡人・譲受人が署名捺印するものである。文面は司法書士が用意し、当事者は署名捺印するだけである。登記のために用意された文書であり、登記の原因となった契約などを調査することは困難になる。【つづく】
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林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』
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