SakuraFinancialNews

PJ: 林田 力

二子玉川公金支出差止訴訟で住民側控訴(上)
2010年06月07日 09:30 JST


再開発で建設中のマンション「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」と抗議する住民(撮影:林田力、2009年3月28日) 

【PJニュース 2010年6月7日】世田谷区の二子玉川再開発への公金支出を求める住民訴訟の判決が2010年5月25日に東京地方裁判所(八木一洋裁判長)で言い渡された。判決主文は一部却下・一部棄却で、原告の住民側は控訴した。

この裁判は世田谷区による二子玉川東地区第一種市街地再開発事業(街の名称:二子玉川ライズ)への補助金支出が違法として、世田谷区民が世田谷区長を提訴した訴訟である。住民側は再開発の根拠となる都市計画決定などが違法であり、その違法な決定に基づいてなされた再開発への補助金支出も違法と主張した(林田力「二子玉川再開発公金支出差止訴訟判決言渡日決定(上)」PJニュース2010年5月9日)。
http://news.livedoor.com/article/detail/4758811/

判決書は全52頁の大部なもので、大きく8個の争点に分けて判断している。注目すべき事実認定には、世田谷区と東京急行電鉄ら東急グループ(東急電鉄等)の「密約」(住民側の表現)がある。もともと再開発地域内の広大な二子玉川遊園跡地は風致地区の周辺環境に適応し、都市計画公園として指定されていた。ところが、都市計画決定で公園予定地が二子玉川駅から離れた場所に移動され、都市計画上の規制も緩和された。それによって、高さ約150mなどの超高層ビル建設を中心とする現行の再開発が可能になった。

この変更は世田谷区の区長・担当者が東急電鉄等の社長・担当者の密約に従って行われたと住民側は主張する。この密約が、二子玉川再開発が東急グループの利潤追求を目的としたもので、公共性に欠けるとの住民側主張の根拠となった。

この点について判決は1986年以降に世田谷区と東急電鉄等の間で複数回の覚書が締結されたことを認定した。そこでは再開発地域の用途変更や公園予定地の指定替えなどが約束された。その後の都市計画決定(1989年6月16日)は覚書の合意事項に沿った内容になっている。覚書が区議会議員に提示されたのは1999年(平成11年)7月になってからであった(判決書25頁以下)。

都市計画決定に先立ち、世田谷区と東急電鉄等の間で区議会にも明らかにされない「密約」が交わされたとの住民側主張が認定されたことになる。しかし、判決は「東急電鉄等は、本件覚書等により、二子玉川公園となるべき土地の約半分を世田谷区に無償で譲渡することを約していること」を挙げ、覚書を締結した世田谷区の判断を「合理性を欠くとまではいえない」と判示した(判決書29頁)。

この判示には2点の問題点がある。

第1に合理性の検討が浅薄である。覚書の内容が実現されることによって、東急電鉄等は二子玉川駅から離れた場所にある土地を世田谷区に無償で譲渡する代償に、駅から近い場所に高層ビルを建設できるようになる。

駅から離れた土地よりも駅から近い土地の方が経済的な価値が高いことは自明の理である。駅から離れた土地を無償譲渡したとしても、東急電鉄等にとって利益になる取引であることは容易に想像できる。その程度の分析もすることなく、無償譲渡を受けるというだけで機械的に「合理性を欠くとまではいえない」する裁判所の判断はチープである。

第2に手続の公正さへの検討が欠けている。密約の問題点は世田谷区長や職員が区民や区議会に事前承認も事後承諾もせずに、私企業と都市計画の方向性を決めてしまうことである。そのような進め方は、仮に内容的に「合理性を欠くとまではいえない」ものであっても正当化できない。判決は、この点の住民側の批判を無視している。【つづく】

■個人ウェブサイト
林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』

PJニュースは一般市民からパブリック・ジャーナリスト(PJ:市民記者)を募り、市民主体型のジャーナリズムを目指すパブリック・メディアです。身近な話題から政治論議までニュースやオピニオンを幅広く提供しています。

PJ募集中!みなさんもPJに登録して身の丈にあったニュースや多くの人に伝えたいオピニオンをパブリックに伝えてみませんか。



関連記事:
タグ:
pagetop

PJ 記者