PJ: 林田 力
重要文化財の「銅御殿」が危機、マンション建設で。周辺住民や美術館が提訴=東京・文京
2010年05月21日 06:07 JST
【PJニュース 2010年5月21日】東京都文京区小石川にある重要無形文化財・銅(あかがね)御殿(旧磯野家住宅)が隣接地のマンション建設で破損する恐れがあるとして、周辺住民や所有者の美術館が5月20日に提訴した。
銅御殿は1912年に竣工した木造3階建ての和風建築である。屋根と外壁が銅板葺き・銅板張りであることが名前の由来である。伝統的な木造建築の意匠・技法・構成、明治の大工の創意を融合させた近代和風木造建築の傑作の一つで、関東大震災や戦災をくぐり抜けた建物である。銅御殿を中心とする湯立坂は文化財と緑に覆われた都市景観を形成している。2005年に国の重要文化財に指定された。所有者は財団法人大谷美術館である。
この銅御殿の東側隣接地に野村不動産(施工:鹿島建設)が地上12階・地下2階の「(仮称)文京茗荷谷マンション」を建設中である。周辺住民や大谷美術館は反対したが、2009年6月に着工した。周辺住民らの主張するマンション建設による銅御殿への被害は主に以下の3点である。
第1にビル風である。マンション建設により、場所によっては現状の1.7倍以上のビル風が銅御殿の土庇に吹き付けるとの調査結果があり、土庇の破損が懸念される。
第2に地下水位低下による地盤沈下である。
第3に工事振動による被害である。既に掘削工事の振動によって、銅御殿の書院の壁・チリに大きな亀裂が生じたとする。
この問題は議会でも取り上げられた。東京都議会では2010年3月10日に小林健二議員が東京都景観条例に基づいて定められた「歴史的景観保全の指針」が不十分であると主張した。また、衆議院文部科学委員会では2010年4月16日に石田芳弘議員が「文化行政としては大変に憂慮にたえない」と指摘した。
周辺住民らが起こした訴訟は2つである。
第1に環境保全措置命令訴訟である。これは周辺地域住民9名が国(行政庁:文化庁)を訴えた訴訟である。この訴訟の請求は大きく2点ある。
1.文化庁長官がマンション建設について文化財保護法第43条第1項本文の許可手続を行う義務があることの確認を求める(公法上の確認訴訟)。
重要文化財の保存に影響を及ぼす行為については、文化庁長官の許可を取らなければならない(同法第43条第1項)。ところが、文化庁は銅御殿への影響は軽微であるとの通知を野村不動産に発し、許可対象としなかった。これは違法であり、文化庁には許可手続を行うべき義務があると主張する。
2.文化庁長官が野村不動産に対し、銅御殿に現状を超えるピーク風力計数をもたらす構造物を建設してはならないとの命令を求める(義務付け訴訟)。
文化庁長官は、文化財の保存のために必要な場合、一定の行為を制限・禁止する権限を有する(同法第45条第1項)。文化庁長官はマンション建設による銅御殿への風害を回避するために、野村不動産に対して命令すべき法的義務を有していると主張する。
第2に建築確認取消訴訟である。これは財団法人大谷美術館及び周辺地域住民8名が文京区及び財団法人住宅金融普及協会を訴えた訴訟である。この訴訟の請求は大きく3点ある。
1.住宅金融普及協会による「(仮称)文京茗荷谷マンション」の建築確認処分及び計画変更確認処分の取り消しを求める(取消訴訟)。
同マンションは、「土地の区画形質の変更」として都市計画法上の開発行為に該当するが、野村不動産は開発行為の許可を取得しておらず、また隣接する銅御殿への影響も配慮されていない。さらに地盤沈下調査も不十分である。従って、同マンションの建築確認・計画変更確認は違法であると主張する。
2.文京区が住宅金融普及協会に対し、同マンションが建築基準関係規定に適合しない旨の通知を発することを求める(義務付け訴訟)。
3.文京区が野村不動産及び鹿島建設に対し、同マンション建設工事を停止させる是正命令権限を行使することを求める(義務付け訴訟)。
上記2点の文京区への義務付け請求は特定行政庁の権限に基づくものである。特定行政庁は指定検査確認機関が違法な建築確認を行った場合、これを検査確認機関に通知すべき義務がある(建築基準法6条の2第11項)。また、特定行政庁は違法建築に対する是正命令の権限を有している(同法9条)。【了】
■個人ウェブサイト
林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』
PJニュースは一般市民からパブリック・ジャーナリスト(PJ:市民記者)を募り、市民主体型のジャーナリズムを目指すパブリック・メディアです。身近な話題から政治論議までニュースやオピニオンを幅広く提供しています。
PJ募集中!みなさんもPJに登録して身の丈にあったニュースや多くの人に伝えたいオピニオンをパブリックに伝えてみませんか。

