PJ: 林田 力
向ヶ丘遊園の跡地利用計画は大幅縮小=神奈川・川崎
2010年04月10日 11:41 JST
【PJニュース 2010年4月10日】小田急電鉄は3月26日、向ヶ丘遊園(川崎市多摩区長尾)の跡地利用計画をまとめ、「川崎市環境影響評価に関する条例」に基づく環境評価手続(アセスメント)に着手すると発表した。向ヶ丘遊園は「ばら苑」や「ブースカランド」で有名な遊園地であったが、2002年3月に閉園した。
小田急では2007年にマンション建設主体の跡地利用計画を発表した。地下1階地上5階建てのマンションを中心とする計画戸数850戸の大型開発であった。これに対し、緑地の保全を求める住民らから多数の反対意見が寄せられた。アセスメントでは3,786通もの意見書が提出された。その後、リーマン・ショックなどの経済情勢悪化もあり、小田急は2008年12月に指定開発行為廃止届けを提出した。
今回の跡地利用計画は2007年の計画から大きく縮小した。計画では跡地を複数のゾーンに区分し、ゾーン毎に整備方針を定める。具体的な整備方針は以下の通りである。
・「ガーデンゾーン」:飲食・物販、研修施設等の多目的施設を含む庭園や広場を整備する。
・「緑地編入ゾーン」「樹林地ゾーン」:緑地を保全する。
・「事業ゾーン(レジデンスA)」:戸建てを中心とした約60戸の住宅を整備する。
・「事業ゾーン(レジデンスB)」:約160戸の低層集合住宅を整備する。
また、跡地には「藤子・F・不二雄ミュージアム」も建設される。これはドラえもんなど藤子・F・不二雄氏の作品を展示するミュージアムで、2011年9月3日にオープンする予定である。遊園地の跡地利用としては夢のある計画である。
「レジデンスA」と「レジデンスB」を合わせた計画戸数は220戸となり、2007年の計画から約4分の1の縮減になる。開発規模を縮小した点も、緑地が残された点も、魅力的な施設(藤子・F・不二雄ミュージアム)が建設される点も、好感を持てる内容である。
但し、計画には懸念も残る。事業の中心が新築住宅の分譲である点は2007年の計画から変わっていない。小田急は社会情勢の変化を踏まえて2007年の計画を廃止し、新たな計画を策定した筈である。しかし、規模を縮小したものの、新築分譲というビジネスモデルは変えていない。
日本全体で見れば住宅は余っており、少子化による人口減少でストックの一層の増大が確実視されている。2007年の計画よりは縮小しても、まだまだ大量供給と言える水準である。それだけのニーズがあるかが問題である。売れ残ればゴーストタウン化し、周辺地域に負担をかけることになる。周辺住民としても無関心ではいられない。
この懸念は住宅のコンセプトによって一層増大する。都心近くの「別荘地を思わせる緑と静寂に包まれた街」をテーマに、「上質なゆとりある居住空間」「自然を感じる生活」「安心・安全な暮らし」を実現するとする。ここからは高級志向がうかがえる。依然として景気の見通しが暗い中で、高額な住宅となると販売のハードルが一層高くなる。
また、高級志向に関連して「安心・安全」を強調している点も気になるところである。「レジデンスA」の戸建てでは「タウンセキュリティによる安心・安全な暮らしを提供」と明言する。これはゲーテッド・コミュニティを目指しているように解釈できる。ゲーテッド・コミュニティは地域社会を分断するものであり、周辺住民の重大な関心事になる。
高級住宅街のゲーテッド・コミュニティとしては、千葉市緑区あすみが丘で東急不動産が開発したワンハンドレッドヒルズ(俗称:チバリーヒルズ)が失敗事例として有名である。向ヶ丘遊園の跡地利用が同じ轍を踏むことにならないか、注視したい。【了】
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