PJ: 多岐 太宿
衝撃の「ジャイアント・キリング」。天皇杯2回戦=松本山雅FCの跳躍
2009年12月04日 09:10 JST
2009年10月11日、小林陽介(元浦和)と坪井慶介は同期入団に当たる。(撮影:多岐太宿) 
【PJニュース 2009年12月4日】トーナメント戦の面白さは、「ジャイアント・キリング」にある。相手は強ければ強いほど良い。リーグ戦とは異なり、一発勝負だからこその醍醐味(だいごみ)がそこにある。
天皇杯2回戦。相対する浦和レッズの顔触れはまさに豪華絢爛(けんらん)というほかない。田中達也や鈴木啓太、坪井慶介ら日本代表経験者、ポンテやエジミウソンら実力派外国人選手。対する松本山雅は地域リーグ。上から数えて4部に相当するクラブである。さらにアルウィンのアウェイゴール裏には立すいの余地なく埋め尽くす浦和サポーター。まさに真赤に燃えていた。しかし14494人のすべてが浦和の背中を押していたわけではなかった。ホームゴール裏には対面する「赤い悪魔」に負けず劣らずの「グリーンモンスター」――緑の壁――がそびえ立っていた。
前半12分、いきなり望外の決勝点が生まれる。右サイドの阿部が前線へフィードを送ると、素早く反応したのがエース柿本倫明。眼前に落ちたボールを狙い澄まして放たれたループシュートはGK山岸範宏の頭上をふわりと追い越して行った。「攻めるとしたらカウンターしかない。キーパーの位置どりは確認していた」と値千金のゴール。いきなりの先制パンチにスタジアムの雰囲気は最高潮。その後、試合を圧倒的優位に進めていたのは目の覚めた浦和。
しかしシュート20本を放ちながらも、GK原裕晃の好セーブもあり、ゴールが遠かった。ディフェンスラインの山崎透は空中戦にことごとく競り勝ち、坂本史生も田中達也をほぼ封じ込める奮闘を見せた。前線も「点を取って勝利に貢献できれば良かったが、守備も頑張らないといけない相手」と小林陽介が語るように激しいチェックで浦和の攻撃の芽を一つ一つつぶしていった。
攻め込まれつつも試合途中から「あ、今日は入らないな」という感覚を覚えた。時間を経るごとに焦りの見える浦和はプレーが粗雑になり、「イライラしている気がした」(阿部琢久哉)。攻撃の意識が強くなればなるほど、守備のほころびは目立つ。プレーは正確さを欠き、集中力に乏しくなる。後半27分、パスミスを奪った鐡戸がそのまま攻め上がり、左サイドの今井昌太にボールを出すと原口元気をぶち抜きクロスを上げる。
梅崎司の痛恨のクリアミスをゴール前まで詰めていた阿部が見逃さずにダメ押しの追加点。「チャンスには上がるように心掛けている。(浦和は)知っている人ばかりだったが思いきりやった。興奮しました」。
試合終了のホイッスルに、スタジアムは沸点に達した。言葉にならない叫び声を上げる松本サポーターに反比例するように凍りつく浦和サポーター。目の前で繰り広げられた現実を受け入れる作業は容易なことではなかったらしく、しばらくの間、ありえないといった表情で押し黙ったのだった。直後、すさまじい大ブーイングが選手たちに降り注いだのであったが――。
その日は、大げさな表現をすれば松本山雅FCが日本サッカーの主役に躍り出た日だった。ネット・テレビ・新聞はこの試合を、衝撃をもって報じたのだった。
さて、確かにアマチュア契約選手も数多い松本山雅だからこそ、あえてセンセーショナルに「J1浦和、アマチュアクラブに敗退」と書きたい気持ちも理解出来る。しかし、松本山雅は近い将来のJリーグ昇格を目指している。故に「アマチュア」というより「セミプロ」という呼び方の方がふさわしい。あの試合直後の怒とうのごとき報道の中、浦和の“迷走”ばかりにスポットがあたり、松本山雅の奮闘が顧みられないのは、やむを得ないことなのかも知れないが、やはり残念ではあった。【了】
■関連情報
PJニュースは一般市民からパブリック・ジャーナリスト(PJ:市民記者)を募り、市民主体型のジャーナリズムを目指すパブリック・メディアです。身近な話題から政治論議までニュースやオピニオンを幅広く提供しています。
PJ募集中!みなさんもPJに登録して身の丈にあったニュースや多くの人に伝えたいオピニオンをパブリックに伝えてみませんか。

