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PJ: 石川 信義

昔とんぼの旅日記 - キルギス編(19)
2010年03月19日 07:28 JST


ドゥンガン・モスク。(画:石川信義) 

【PJニュース 2010年3月19日】「それにさ、あそこにはイスラムのドゥンガン・モスクもあるだろッ」。〈ドゥングァン〉というのは、弾圧を逃れて中国からやってきたモスレムの人達のことだ。
「ドゥンガン・モスク」と言ったとたん、リーナーは顔をほころばせた。そうだ、リーナはイスラム教徒だった! 彼は酒も飲むし礼拝もしないので、僕は彼がモスレムであることをすっかり忘れていた。

車はイシク・クル北岸をひた走る。3時間近くを走ってやっとイシク・クルの東の端っこに着いた。前方のすぐ真上に、ひときわ高く氷河の山々が見える。

カラ・コルの町は小さな町だった。

町へ入ったら、リーナが道を歩いていた肥った中年おばさんとやせた老年おばさんの二人に声をかけ、例によって話しを始めた。彼は僕の耳に「My friends(俺の友達だよ)」とささやく。とにかくリーナは「friends」がやたら多い。ビジュケクでもここへ来る途中でも、いったい何人の人に声をかけておしゃべりをしたことだろう。

ひとしきり話が続いたが、そのうち2人の女性が後部座席に乗り込んできた。「Nice to meet you(こんにちは)」、あわてて僕は挨拶をする。中年おばさんは英語がぺらぺら。「どこから? そう、東京。日本の方は、私、好きよ。日本人は賢くて穏やかで、親切で・・・ペチャクチャ」、止まらなくなった。

「フム、フム。OK, Thank you・・・」適当に僕は合槌(あいづち)を打つ。この人、朝青龍の頬っぺたに丸い紅をつけて女にしたような顔をしている。笑顔がなかなか可愛らしい。老年おばちゃんは痩せてちびっ子で無口、笑顔がやさしい。

ロシア正教の聖三位一体教会に着いた。屋根が若草色、本体は古びた木造でなかなかの趣きある建物だ。中に入ったら、内装に水色がふんだんに使われいて大変に明るい。

ぐるりの壁に、大きなイコンがずらりと飾られている。

朝青龍オバチャンが僕に耳を寄せて「あたしはイスラム、でもあまり熱心な信者ではないの。貴方はブッディスト(仏教徒)?」と聞いた。面倒だから僕は「YES」と答えた。

見終わったらこの教会をスケッチしてみる気になった。リーナにお茶代を渡し、「1時間後に戻って来て下さい」と3人を追っぱらった。

建物の前には、ピンクに真紅の大きなバラが一杯に咲いている。とにもかくにも絵を描きあげたが、こちらの建物がねじれ、あちらの建物が歪みで、わが友長野君に叱られそうな絵になった。

リーナが戻ってきたが、まだ2人の御婦人が一緒だ。これからどうするのかと思っていたら、郊外の公園のようなところに連れていかれた。

「ここはどこ?」。「Museum(博物館)」。

ポプラと白樺の並木を200mくらい歩いたら白亜の建物に出た。入ったら、ナントナント、これがロシアのシルクロード探検家「ブルジョワリスキー」の博物館だった。【つづく】

■関連情報
石川信義(いしかわ・のぶよし):1930年、群馬県桐生市生まれ。海軍兵学校78期、旧制二高を経て、東京大学経済学部・医学部卒。学生時代は東京大学スキー山岳部所属。61年、第5次南極観測隊に参加。65年、東京大学カラコルム遠征隊の副隊長・登攀隊長。東京大学附属病院神経科、都立松沢病院勤務を経て、68年、群馬県太田市に三枚橋病院を創設し、日本初の完全開放の精神病院を実現した。以来、精神病院の自由・開放化、精神障害者の地域化(ノーマライゼーション)運動に尽力する。

著書に、『心病める人たち』岩波新書(1990年)、 href="http://books.livedoor.com/item/1754987">『鎮魂のカラコルム』岩波書店(2006年)、『開かれている病棟』(星和書店)など。

【むかしとんぼ】ムカシトンボ(昔蜻蛉)、学名Epiophlebia superstes。トンボ目・ムカシトンボ科のトンボ。体長約5センチ。春季、渓流で見られる。日本固有種。原始的なトンボの形をつたえ、生きている化石といわれる。日本以外では近縁種のヒマラヤムカシトンボ(Epiophlebia laidlawi)がヒマラヤ山脈周辺に分布するのみ。

石川信義ブログ『昔とんぼの旅日記』

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