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PJ: 三田 典玄

「著作者の権利を守る」は著作権法の「目的」ではない
2010年01月22日 15:05 JST

【PJニュース 2010年1月22日】いよいよ、最初の著作権法改正のドラフトが出てきて、日本版のフェア・ユースについての議論が始まった。しかし、かなりコストをかけて情報を作り出している著作権者には、あまり受けが良くないようだ。とりあえず、なにか一言言っておかなければ、という感じもある。

もともと、著作権法というものがなぜできたのか、といえば、それは著作者の権利を守るため、ではない。

著作権法の、第一章、第一節、第一条にはその目的が書いてある。以下、引用する。

第一条 この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。

つまり、目的は「文化の発展」である。そして、権利の保護は「公正な利用」に留意しつつ、権利の保護を図る、という「手段」なのだ。

「文化の発展に寄与しない著作物」というものが明確にあるのかどうか、というのはもちろん議論のあるところだろうが、今の民放のタレ流す、バカ騒ぎバラエティ番組も、この法律に守られている、というのは、やはり腑に落ちない、と感じられる方は多いだろう。バカ騒ぎはそれはそれで面白い。ときにはそういうものを見たくなることもある。ほんのちょっとくらいは、文化の発展に寄与することもあるかもしれない。ただし、毎日毎日それを見せられているほうはたまらない。だから、最近はテレビを見なくなった、という方も多いだろう。PJもその一人だ。

それはともかく、現状の日本の著作権法での一番の問題は、この法律があるために著作権者が過剰な著作の防衛を行い、結果として著作権法の目的である「文化の発展」に寄与しているとは到底思えない異常な事態が日本では始まっている、ということにある。そしてそれが日本のコンテンツ産業そのものを没落させている、という現状認識からこの法改正の検討が始まっている。

子供の書いた描線ヨレヨレのアニメのキャラクタでも、ネットに出せば「著作権法違反」で訴えてくるとか「アニメのキャラクタが描かれたTシャツが映ってしまった家族写真」が著作権法違反、などというのは、著作者が自らの権利を主張するあまり、本法の目的である「文化の発展」にはまるで寄与していない、ということの良い例だろう。

いまやキャラクタのファンサイトでも、その対象となるキャラクタの絵を出せない、という状況もある。これでは、誰もがいやになってしまって、そのキャラクタを使わない、という人も多く出てくるだろう。守ることだけを考えるあまり、コンテンツを腐らせて価値のないものにしてしまった、という例は多く報告されている。

著作権を持っている会社の言い分ももちろんあるだろうが、もともとこの法律の目的はその会社や個人の権利を守ることではない。目的は「文化の発展」であって、その手段として「権利の保護」があるに過ぎないことを、もう一度思い出す必要がある。

誰もがこの世に生きている以上、自分だけのことを考えて生きているわけにはいかない。ときには譲歩し、ときには人に尽くし、お互いが暮らしやすくする、ということが、これらの法律の基礎にはある。そのことを忘れて、「法律に書いてある」という条文をそのまま鵜呑みにし、人を貶め、自分の権利だけを主張するような行為は、立法の精神を逸脱していると言うほかない。ましてや世間に知れたキャラクタなどの著作物を多く生産し、多くの人にエンターティンメントを供給する立場の会社は、「人に見てもらったり、買ってもらったり、気持ちよくしてあげてナンボ」の仕事である「河原乞食」でしかない、ということはいつの時代も肝に銘じておきたいものだ。

人間の基本である衣食住だけではない「豊かさ」という目に見えないものを - 言い換えれば誰でもいつでも捨てられるもの - を社会に供給している企業だからこそ、利潤と奉仕のバランスが特に必要とされる。日本は戦後の長い高度成長の時代に、エンターティンメントは産業として大きく成長した。だが、その基本は時代が変わっても変わるものではない。この基本を忘れるようであれば、いつでもエンターティンメント産業そのものが衰退し、なくなる危機を迎えることだろう、とPJは思う。【了】

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