PJ: 石川 信義
昔とんぼの旅日記「開かれた医療へ」(1)
2010年07月27日 06:56 JST
タージマハール(画:石川信義) 
【PJニュース 2010年7月27日】「昔とんぼの旅日記」の稿を閉じるに当り、「精神病者の受難と再生」なる一文を最後に掲げさせて頂くことにした。“旅日記なのに精神医学?”、看板に偽りありの謗りは免れまいが、「日本の精神病者の置かれた状況」をお分かり頂きたいがための出稿である。これを了とせられたら有難い。
(註)本論は慶応義塾大学経済学部編の「マイノリティからの展望」(弘文堂)と関東弁護士会連合会編の「精神障害のある人の人権」(明石書店)に掲載したものを訂正加筆した。
■「精神病者の受難と再生」
(1)はじめに
欧米諸国の精神病者に対する過去数百年の歴史は悪夢の連続であった。中世から近世にかけて熾烈をきわめた「魔女狩り」は宗教権力の狂気そのものであったし、そこから今世紀半ばに至る「狂気の収容」は国家権力の悪の象徴だった。
精神病院は社会の“ゴミ捨て場”と化し、精神病者はそこに無惨に打ち捨てられていた。
1950〜60年代、欧米諸国はようやく悪夢から目覚めてその是正に動きだす。以来、精神病者は“障害者地域化(ノーマライゼイション)”の波の中、いま、社会の一員として復権を遂げつつある。
日本はどうだったか?愚かなことに、我が国は欧米諸国が誤りに気づいて改革に乗り出したのと時を同じくして、突如、かつてない規模の「精神病者収容」を猛烈な勢いで開始した。ために、日本の精神病者は彼らの経験したことのない不幸に見舞われることになる。
遅まきながら、僅か十数年前から国はその軌道の修正を始めた。しかし、過去に侵した負の遺産はあまりに重く、我が国では今もなお多くの“心病める人たち”が、精神病院の中で希望のない日々を送ることを余儀なくされている。
本稿は、欧米の精神医療の歴史的な歩みをまず概観し、それと比しつつ、日本の精神医療が如何なる道を辿ったか、いまどんな状況にあるかについて述べたものである。【つづく】
■関連情報
石川信義(いしかわ・のぶよし):1930年、群馬県桐生市生まれ。海軍兵学校78期、旧制二高を経て、東京大学経済学部・医学部卒。学生時代は東京大学スキー山岳部所属。61年、第5次南極観測隊に参加。65年、東京大学カラコルム遠征隊の副隊長・登攀隊長。東京大学附属病院神経科、都立松沢病院勤務を経て、68年、群馬県太田市に三枚橋病院を創設し、日本初の完全開放の精神病院を実現した。以来、精神病院の自由・開放化、精神障害者の地域化(ノーマライゼーション)運動に尽力する。
著書に、『心病める人たち』岩波新書(1990年)、
href="http://books.livedoor.com/item/1754987">『鎮魂のカラコルム』岩波書店(2006年)、『開かれている病棟』(星和書店)など。
【むかしとんぼ】ムカシトンボ(昔蜻蛉)、学名Epiophlebia superstes。トンボ目・ムカシトンボ科のトンボ。体長約5センチ。春季、渓流で見られる。日本固有種。原始的なトンボの形をつたえ、生きている化石といわれる。日本以外では近縁種のヒマラヤムカシトンボ(Epiophlebia laidlawi)がヒマラヤ山脈周辺に分布するのみ。
石川信義ブログ『昔とんぼの旅日記』
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