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PJ: 石川 信義

昔とんぼの旅日記-イラン編(54)
2009年12月15日 13:27 JST


(画:石川信義) 

【PJニュース 2009年12月15日】5月28日、土曜日。

朝、出掛けようとしたら、前の部屋が引き払おうとしている。チラッと部屋をのぞいたら、なかなか良いシングルだ。スウィートでふんぞりかえるのはやめにしようとフロントへ行って、シングルへ部屋を変えてもらった。これで明日午後の部屋代と併せて、40ドルの節約となる。「佐藤君」のことを考えればこれくらいの労はなんでもない。

部屋の引っ越しを済ませて、国立考古学博物館へ行った。イラン最高の博物館とあって、建物もなかなか立派だ。門はササーン朝の時代の城門を再現していて、その上に翩翻(へんぽん)とイラン国旗をなびかせている。

イラン国旗は横三色で、上から緑、白、赤。緑はイスラムのシンボル、白は平和、赤は勇気を表しているとか。国旗に「勇気」を入れるなんぞは、さすがペルシヤ帝国の末裔だ。白地の真ん中にはタマネギみたいな図柄が入っている。タマネギと見えるのは四本の剣と三日月でこれは殉教者を意味している。

御丁寧にも、三色の境界が「アッラーフ・アクバル」、神は偉大なりというアラビア文字で仕切られている。しかも同じ言葉が22行も書いてあるのだ。イスラム革命がイラン暦第11月の22日に起こったからだとか。この国旗を、小学生が描くとしたら、大いに難儀するだろう。

国旗を見ていたら、イランの国歌を思い出した。手元には「世界の国家集」という本がある。国歌は、その国のお国ぶりがあらわれていて面白い。シャー国王時代のイラン国歌は、1934年に作られた。

歌詞は「長く生き給え/君は王のなかの王/パーレヴィ」から始まって、「イランは治まれり/恵みあれ/我等が王に」で終る。これは「君が代」と同じようなもんだ。

ホメイニ革命が起って、1980年に定められた現在の国歌は「イスラムの国出来て/信仰は与えられ/革命によりて/圧政はついえ去りぬ」から始まり、「われらの宗教は支えとなり/自由と福祉は武力により得ぬ/暗き夜は過ぎたり/さち幸の日は輝やきぬ/コーランの庇護のもと栄えゆくイラン」で終わる。

40年前に来た時と、今のイランの差がこの国歌の歌詞の差だ。「長く生き給え」の、王の「圧政はついえ去りぬ」だ。現在のイラン国歌はひたすらコーランにすがり、神の手に導かれて希望があると唄う。

空に翻る国旗を見、この国歌を唄うと、現在のイランという国がいかに強くイスラムの信仰をその軸に据えているかがよくわかる。ブッシュは「悪だ、アメリカの民主主義だ」と言うが、この意志を誰も侵すことは出来ないだろう。

話は外れるが、この本で、1959年に制定されたイラクの国歌を見ると、おもしろいことに歌詞がない。メロディーだけだ。

これもいい手だ。下手な歌詞をつけるよりはイメージがずっと拡がる。でもイラクは惜しいことをした。1981年にこの国歌を廃止して、歌詞つきの国歌を作ってしまった。バッカだなァ。

国旗と国歌でいまのイランをイメージし、ペルセポリスでペルシヤ帝国を念頭に浮かべそれから博物館の玄関に立った。【つづく】

■関連情報
石川信義(いしかわ・のぶよし):1930年、群馬県桐生市生まれ。海軍兵学校78期、旧制二高を経て、東京大学経済学部・医学部卒。学生時代は東京大学スキー山岳部所属。61年、第5次南極観測隊に参加。65年、東京大学カラコルム遠征隊の副隊長・登攀隊長。東京大学附属病院神経科、都立松沢病院勤務を経て、68年、群馬県太田市に三枚橋病院を創設し、日本初の完全開放の精神病院を実現した。以来、精神病院の自由・開放化、精神障害者の地域化(ノーマライゼーション)運動に尽力する。

著書に、『心病める人たち』岩波新書(1990年)、 href="http://books.livedoor.com/item/1754987">『鎮魂のカラコルム』岩波書店(2006年)、『開かれている病棟』(星和書店)など。

【むかしとんぼ】ムカシトンボ(昔蜻蛉)、学名Epiophlebia superstes。トンボ目・ムカシトンボ科のトンボ。体長約5センチ。春季、渓流で見られる。日本固有種。原始的なトンボの形をつたえ、生きている化石といわれる。日本以外では近縁種のヒマラヤムカシトンボ(Epiophlebia laidlawi)がヒマラヤ山脈周辺に分布するのみ。

石川信義ブログ『昔とんぼの旅日記』

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