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PJ: 石川 信義

昔とんぼの旅日記-イラン編(50)
2009年12月11日 12:06 JST


(画:石川信義) 

【PJニュース 2009年12月11日】27日、金曜日だ。再びテヘランへ戻って来た。

今朝は11時まで寝ていた。薬のおかげでぐっすり眠った。夢もあまり見なかったようだ。今日は午後の2時半にはホテルを出て、シーラーズ空港へ向かわなくてはならない。出掛けようかなと思ったが、バタバタしたくないので部屋でごろごろしていた。もう旅も終わりだから、日本から持参の不要になった細々した物をハウスキーパーのおばちゃんたちにやった。大喜びだった。おせんべいをジャパニーズ・クッキーと言って食べさせ、うまいかと聞いたら変な顔をした。甘くもないこんなケーキ、どこがいいんだろと思ったようだ。

帰りの飛行機は満席だった。バスや車で10日以上かけてたどった道を、1時間半でひとっ飛びだ。やっぱり飛行機は速い。

テヘランへ着いて、案内書で目星をつけておいた「イランジャール」という中級ホテルにとびこんだ。フロント氏、「一番小さなシングルしか空いていない。25ドル」と言う。部屋を見せてもらったら、狭苦しくて、おまけにシャワーが廊下の共通トイレの中だ。イラン最後の2晩をこんな部屋で過ごすのは気がすすまない。

他の部屋ないの? ありますがお高いですよ。スウィートで52ドルです。よっぽど俺は貧乏っ子に見えるらしい。

その部屋は広くてキングサイズベット、シャワーもあった。2泊だから、もうちょっと安くしない? と言ったが、フロント氏は、うちはフィックスです。52ドル、と言って譲らない。彼、ピシッとした態度でスパッと物を言う。僕の尻ポケットからお札がはみ出ているのをたちまちみつけて、

「それは駄目。きちんとしまいなさい。テヘランは油断してはいけません」
と真剣な顔でお説教をした。

ハハーッ。それでは52ドルで結構です。値切りの達人も即座に妥協した。このオッチャンなら、安心して貴重品を預けられる。

以前、香港でカードをスキミングされて、身に覚えのない88万円の請求書を送りつけられたことがある。すぐ支払いをストップさせたが、ホテルは選ばないと危ないのだ。このホテルはしっかりした老舗だから大丈夫だ。フロント氏の態度でそれがわかる。

夜、夕食をとりに外に出た。出掛ける時にフロント氏から英文の注意書きを渡された。

「必要以上の金を持って出るべからず。何か事あらば、直ちにホテルのフロントへ電話せよ。町で警官風に呼び止められた場合は、身分証明書の提示を求め、パトカーの有無を確かめよ。ニセ警官出没す。警官以外の何者も貴方の所持品を調べること能わずと知るべし」

と、あった。テヘランでは、警官のふりして、パスポートや現金をかっさらうわる悪者が最近増えていると聞いたが、ほんとなんだ。こういうてあい手相は何処にでも居る。観光客が増えると出てくる。この冬に訪れたラオスはまだだったな。ラオスののんびりが懐かしくなった。【つづく】

■関連情報
石川信義(いしかわ・のぶよし):1930年、群馬県桐生市生まれ。海軍兵学校78期、旧制二高を経て、東京大学経済学部・医学部卒。学生時代は東京大学スキー山岳部所属。61年、第5次南極観測隊に参加。65年、東京大学カラコルム遠征隊の副隊長・登攀隊長。東京大学附属病院神経科、都立松沢病院勤務を経て、68年、群馬県太田市に三枚橋病院を創設し、日本初の完全開放の精神病院を実現した。以来、精神病院の自由・開放化、精神障害者の地域化(ノーマライゼーション)運動に尽力する。

著書に、『心病める人たち』岩波新書(1990年)、 href="http://books.livedoor.com/item/1754987">『鎮魂のカラコルム』岩波書店(2006年)、『開かれている病棟』(星和書店)など。

【むかしとんぼ】ムカシトンボ(昔蜻蛉)、学名Epiophlebia superstes。トンボ目・ムカシトンボ科のトンボ。体長約5センチ。春季、渓流で見られる。日本固有種。原始的なトンボの形をつたえ、生きている化石といわれる。日本以外では近縁種のヒマラヤムカシトンボ(Epiophlebia laidlawi)がヒマラヤ山脈周辺に分布するのみ。

石川信義ブログ『昔とんぼの旅日記』

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