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PJ: 石川 信義

昔とんぼの旅日記-イラン編(45)
2009年12月06日 13:35 JST


(画:石川信義) 

【PJニュース 2009年12月6日】すぐに入り口門がある。見上げるほどに巨大なものだ。門の両脇に大きな牡牛(おうし)像がしつらえられている。くぐりぬけた後には人面有翼獣神像だ。出入する人たちを睥睨(へいげい)する姿で見事なものだ。ただし、この四像とも、顔がみんな削り取られている。後世のイスラム教徒が顔を破壊してしまった。

この門を通り抜けると、「儀仗(ぎじょう)兵の通路」がのびる。長槍を持った筋骨逞(たくま)しい儀仗兵の行進が見える。行進の横に、ホーマーと呼ばれる想像上の奇怪至極な鳥の像がある。カラス天狗そっくりの顔で、威嚇するかのようにこちらに向けて嘴(くちばし)をパカッとあけている。

「謁見(えっけん)の間」、王が主階段の奥の間に座った。両側に高官、その脇に近衛兵が並んだはずだ。王の前にひざまずくエジプトやインドの使者。それらに向かって王が手をさしのべている姿が見えた。

この「謁見の間」に、見るのを楽しみにしていた「ライオンと牡牛」と「各国使節の貢ぎ物」のレリーフを見付けた。期待に違わず、面白いものだった。

「ライオンと牡牛」のレリーフは、牡牛のお尻にがぶりとライオンが噛みついた図柄だ。噛みつかれて牡牛が、ナヌッ!!と目をとび出さんばかりに丸くして振り返り自分のお尻を見ている。噛みついたライオンは一所懸命の顔だが、それが少しも恐い顔ではなくて、むしろユーモラスな表情だ。

この二頭の動物は様式化されているが、曲線は洗練され、力が横溢している。牡牛の表情は引き締って、貴族的にすら見える。このレリーフは抜きんでた傑作だ。

そのレリーフをずっと見ていたら、見張り番のおじさんがホースを持って来て、レリーフに水をぶっかけてくれた。水をかけると図柄が一層くっきりと浮き出てくるのだ。

この「ライオンと牡牛」のレリーフは、二層と対で、まったく同じものが四枚も並んでいる。なお、面白い。同じ図柄が四枚とは! 余程、王が気に入った図柄なんだろう。一説によると、ライオンは太陽、牡牛は月をあらわしているのだとか。だが、こういう解釈をくっつけるのはどうも嫌いだ。このレリーフは、理屈抜きで、そのまま素直に見たい。【つづく】

■関連情報
石川信義(いしかわ・のぶよし):1930年、群馬県桐生市生まれ。海軍兵学校78期、旧制二高を経て、東京大学経済学部・医学部卒。学生時代は東京大学スキー山岳部所属。61年、第5次南極観測隊に参加。65年、東京大学カラコルム遠征隊の副隊長・登攀隊長。東京大学附属病院神経科、都立松沢病院勤務を経て、68年、群馬県太田市に三枚橋病院を創設し、日本初の完全開放の精神病院を実現した。以来、精神病院の自由・開放化、精神障害者の地域化(ノーマライゼーション)運動に尽力する。

著書に、『心病める人たち』岩波新書(1990年)、 href="http://books.livedoor.com/item/1754987">『鎮魂のカラコルム』岩波書店(2006年)、『開かれている病棟』(星和書店)など。

【むかしとんぼ】ムカシトンボ(昔蜻蛉)、学名Epiophlebia superstes。トンボ目・ムカシトンボ科のトンボ。体長約5センチ。春季、渓流で見られる。日本固有種。原始的なトンボの形をつたえ、生きている化石といわれる。日本以外では近縁種のヒマラヤムカシトンボ(Epiophlebia laidlawi)がヒマラヤ山脈周辺に分布するのみ。

石川信義ブログ『昔とんぼの旅日記』

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