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PJ: 石川 信義

昔とんぼの旅日記-イラン編(28)
2009年11月19日 07:34 JST


(画:石川信義) 

【PJニュース 2009年11月19日】先生運ちゃん氏に、奥さんにあげて下さいと「和風ハンカチ」を渡した。この人は良い人だったから、きっと奥さんも「和風ハンカチ」に値する良い人に違いない。

そのあと、この宿に入った。一泊30ドル也。古色蒼然(そうぜん)のボロ宿にしてはいささか高いが、なんてったって「ヒストリカル・ホテル」なんだから、まあ仕方ないか。正式にはこのホテル、「アレク・オ・ドッジャール」という舌をかみそうな名前を持っている。

到着早々、部屋のベットにごろんと寝そべって、ぼんやり窓の下のホールを見降ろした。

そうしたら、真下の縁台に二人の娘さんが来て座った。ティー紅茶を飲んで話をしているが、黒いヴェールの下で顔が笑っている。やがて、見ているのに二人が気付いた。ニコッとして手を振った。こちらは肩ひじ立ててベットに寝そべったまま、オッと片手をあげる。東海道の宿場の旅籠(はたご)もこんなだったかな? 客と客との距離が近い。こりゃあいいやと、僕は大いにこのホテルを気に入った。

そこのところを、画帖を取り出して、一枚、絵にした。

夕刻、バザールをぶらぶらし、そのあと、通りを歩いて「アミール・チャグヌーク・タキイエ」という長たらしい名前の門のところまで行った。この門はバザールの入り口門でアーチがやたらたくさん積み上げてある。数えたら大小併せて25もあった。中央に2本の高いミナレットが聳(そび)えている。夕暮れ時で、門に照明がついていた。青や赤の光に映えて、なかなかきれいだ。前の噴水広場に、多勢の人がたむろしている。向こうの芝生に10人くらいの黒衣(チャドル)の女性が、一列に座って門を見上げていた。その姿がまるでカラスが並んでいるみたいで、思わず笑ってしまった。【つづく】

■関連情報
石川信義(いしかわ・のぶよし):1930年、群馬県桐生市生まれ。海軍兵学校78期、旧制二高を経て、東京大学経済学部・医学部卒。学生時代は東京大学スキー山岳部所属。61年、第5次南極観測隊に参加。65年、東京大学カラコルム遠征隊の副隊長・登攀隊長。東京大学附属病院神経科、都立松沢病院勤務を経て、68年、群馬県太田市に三枚橋病院を創設し、日本初の完全開放の精神病院を実現した。以来、精神病院の自由・開放化、精神障害者の地域化(ノーマライゼーション)運動に尽力する。

著書に、『心病める人たち』岩波新書(1990年)、 href="http://books.livedoor.com/item/1754987">『鎮魂のカラコルム』岩波書店(2006年)、『開かれている病棟』(星和書店)など。

【むかしとんぼ】ムカシトンボ(昔蜻蛉)、学名Epiophlebia superstes。トンボ目・ムカシトンボ科のトンボ。体長約5センチ。春季、渓流で見られる。日本固有種。原始的なトンボの形をつたえ、生きている化石といわれる。日本以外では近縁種のヒマラヤムカシトンボ(Epiophlebia laidlawi)がヒマラヤ山脈周辺に分布するのみ。

石川信義ブログ『昔とんぼの旅日記』

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