PJ: 石川 信義
昔とんぼの旅日記-イラン編(23)
2009年11月14日 09:50 JST
イランのモスク・エマーム(画:石川信義) 
【PJニュース 2009年11月14日】5月21日、土曜日。
朝、と言っても10時だが、またエマーム広場へ出掛けた。モスク・エマームのなか内部をじっくり見るつもりで。
このモスクは、16世紀にサファビー朝アッパー一世が作り、完成に26年かかった。彼はこれが出来上がる前に死んでしまった。こんな立派なものを見ないで死んだとはかわいそう。
巨大ドームの中央礼拝堂へ行く前に、まず二つの門をくぐりぬける。最初の門を飾る「蜂の巣装飾」は見事なものだ。モスクに入る度、この特異な装飾に感心させられる。これは、壁面に立体的効果を与え、見る者をして心が吸いこまれるような錯覚を起こさせる。この様式と言い、柱の使い方と言い、あるいは幾何学的な対称構造と言い、イスラムの建築感覚には独特のものがある。キリスト教の聖堂よりも、こちらの方が僕は好き。
そうだ。自己流でこのイスラム様式をいつも「蜂の巣装飾」と書くが、これは「鍾乳石装飾」と言うのが正しい。ただ僕の目にはどう見ても「蜂の巣」としか見えないから勝手にそう言っているだけ、建築家は眉をひそめるかもしれない。
二つの門を過ぎると礼拝堂だ。大変壮大なもので、天井を見上げるとのけぞってしまう程高い。このドームは二重構造になっていて外側は54メートル、内側は38メートルだという。その天井が、驚くべき細かさの淡い青色と褐色の紋様で全面彩色されている。これは精緻(せいち)の極み、お見事! と言うほかない。
これを作った17世紀のサファビー朝の時代は、青タイルの彩色技術が頂点を極めた時代だ。青の色がここは特に美しい。イスラムは青を尊ぶ。コーランにも、青は蒼穹(そうきゅう)の色、高貴なるものの色とある。この礼拝堂に立ったイスラム教徒は、わが身が神の色に包まれて浄化されると感じ、「かたじけなさに涙こぼれる」だろう。
だが俺はイスラム教徒じゃないから、無法なイチャモンをつけるぜ。この紋様はあまりに細かすぎて、少々わずらわしい。技巧が過ぎるとドーンという迫力が失われるな。この礼拝堂、「すげぇ」とは思っても、その場にひれ伏すとまでには至りません。感動したものがあると1時間くらいその場に居るのが常だが、ここは30分くらいだ。申しわけねえ。【つづく】
■関連情報
石川信義(いしかわ・のぶよし):1930年、群馬県桐生市生まれ。海軍兵学校78期、旧制二高を経て、東京大学経済学部・医学部卒。学生時代は東京大学スキー山岳部所属。61年、第5次南極観測隊に参加。65年、東京大学カラコルム遠征隊の副隊長・登攀隊長。東京大学附属病院神経科、都立松沢病院勤務を経て、68年、群馬県太田市に三枚橋病院を創設し、日本初の完全開放の精神病院を実現した。以来、精神病院の自由・開放化、精神障害者の地域化(ノーマライゼーション)運動に尽力する。
著書に、『心病める人たち』岩波新書(1990年)、
href="http://books.livedoor.com/item/1754987">『鎮魂のカラコルム』岩波書店(2006年)、『開かれている病棟』(星和書店)など。
【むかしとんぼ】ムカシトンボ(昔蜻蛉)、学名Epiophlebia superstes。トンボ目・ムカシトンボ科のトンボ。体長約5センチ。春季、渓流で見られる。日本固有種。原始的なトンボの形をつたえ、生きている化石といわれる。日本以外では近縁種のヒマラヤムカシトンボ(Epiophlebia laidlawi)がヒマラヤ山脈周辺に分布するのみ。
石川信義ブログ『昔とんぼの旅日記』
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