SakuraFinancialNews

Updated: Mar 05 08:20    

HOME > (610) > 昔とんぼの旅日記-イラン編(17)...

PJ: 石川 信義

昔とんぼの旅日記-イラン編(17)
2009年11月07日 09:16 JST


イラン・エマーム広場(画:石川信義) 

【PJニュース 2009年11月7日】腰をあげて、今度は回廊の店を見て回った。店はアッパース一世がこの広場を造った時から存在している。400年も昔だ。二階が住居、一階がお店、ほとんどが伝統工芸品の店だ。駱駝(らくだ)の骨や真鍮(しんちゅう)や貝殻の象嵌(ぞうがん)細工、ペルシヤ紋様や古代遺構の浮き彫りを型染めしたガラム・カールというペルシヤ更紗、エナメル彩色した銅皿やカップ、彫金を施された銅の壺、手描きの細密画、それに勿論、ペルシヤ絨毯。どれもこれも、中世ペルシヤ文化のにおいがぷんぷんする。

この回廊では、あちこちの店で職人さんがカチン、カチン、カチンと一心に銅版を彫っていたりして、働くその姿を見て回るのが楽しかった。「見事なもんですね」と褒めると、仕事をしながらちょっと顔をあげて、「ウン」と彼らは誇らしげな顔をする。日本でもそうだが、手作り職人はみんないい顔をしている。さっきのナン焼きおじいちゃんと同じ顔だ。

小さなペルシヤ更紗を何枚か求めて、ホテルへ戻った。

夜は、ホテル前に立ち並ぶ店ののぞき見をしながら、ぶらぶら歩いた。夜8時頃になると、路上は人であふれる。

映画館の前は黒山の人だかりだ。僕も列に並びたい。イラン映画には秀れた作品がいっぱいある。例えば、ナーデリーの「駈ける少年」、キヤーロスタミーの「友だちのうちはどこ?」、「そして人生はつづく」、「桜桃の味」などなど。いずれも子供が主人公で、それは良い作品だ。土のにおいがする。大地に立つ人間がいる。イラン映画を見ると、いつも僕は、大金をかけたハリウッド作品の安手さを考えてしまう。

スイー・オセ橋まで行ったら、橋が夜間照明されていて、その光がきれいに川面に映えて美しかった。ザーヤンデ川はかなりの川幅で、満々と水をたたえている。この沙漠地帯で、この川だけは「涸(か)れ川」とならない。

ほとりの堤防の芝生は、夕涼みの人で一杯だった。川そばの屋台で、羊の炙(あぶ)り焼き薄切りを紙に包んでもらい、堤防に座って、それをつまんで食べた。結構、結構。満足してホテルへ帰る。

呉清源大国手の囲碁の本を読む。吾が輩の碁の腕前は四段くらい。ザル碁の典型だが、師を尊敬している。無論、僕の腕前で師の碁の神髄が分かるはずもないが、この人の瘦身(そうしん)颯爽(さっそう)の姿、その風貌(ふうぼう)が好きだ。90歳を過ぎてなお囲碁一筋、この人に「求道者」の面影を見る。あらゆるものを削ぎ落として枯れ切った人はどんな人でも美しいものだ。【つづく】

■関連情報
石川信義(いしかわ・のぶよし):1930年、群馬県桐生市生まれ。海軍兵学校78期、旧制二高を経て、東京大学経済学部・医学部卒。学生時代は東京大学スキー山岳部所属。61年、第5次南極観測隊に参加。65年、東京大学カラコルム遠征隊の副隊長・登攀隊長。東京大学附属病院神経科、都立松沢病院勤務を経て、68年、群馬県太田市に三枚橋病院を創設し、日本初の完全開放の精神病院を実現した。以来、精神病院の自由・開放化、精神障害者の地域化(ノーマライゼーション)運動に尽力する。

著書に、『心病める人たち』岩波新書(1990年)、 href="http://books.livedoor.com/item/1754987">『鎮魂のカラコルム』岩波書店(2006年)、『開かれている病棟』(星和書店)など。

【むかしとんぼ】ムカシトンボ(昔蜻蛉)、学名Epiophlebia superstes。トンボ目・ムカシトンボ科のトンボ。体長約5センチ。春季、渓流で見られる。日本固有種。原始的なトンボの形をつたえ、生きている化石といわれる。日本以外では近縁種のヒマラヤムカシトンボ(Epiophlebia laidlawi)がヒマラヤ山脈周辺に分布するのみ。

石川信義ブログ『昔とんぼの旅日記』

PJニュースは一般市民からパブリック・ジャーナリスト(PJ:市民記者)を募り、市民主体型のジャーナリズムを目指すパブリック・メディアです。身近な話題から政治論議までニュースやオピニオンを幅広く提供しています。海軍兵学校78期

PJ募集中!みなさんもPJに登録して身の丈にあったニュースや多くの人に伝えたいオピニオンをパブリックに伝えてみませんか。



関連記事:
タグ:
pagetop

PJ 記者