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PJ: 石川 信義

昔とんぼの旅日記-イラン編(13)
2009年11月03日 07:00 JST


イランのドームにて(画:石川信義) 

【PJニュース 11月3日】19日。バスでイスファハーンへ向かった。今日は難なくバスに乗れた。午前10時発。このバスもボルボの新車だった。運賃180円。4時間走る。

車は再び荒涼たる沙漠丘陵地帯を走った。樹木一本とてない荒野だ。遠方には茶褐色の荒々しい山々が見える。残雪をいただく山も見えた。

隣には20歳台の兄ちゃんが座ったが、一張羅の服の着続けなのだろう、これがやたら臭い人で、饐(す)えたようなにおいを発する。冷房の吹き出し口を調整して、においがこっちへ来ないようにしたが、今度は冷房の風がもろに吹きつけるようになった。寒くて閉口した。鼻水が出た。

鋸(のこぎり)の歯のような山裾を上ったら、そこが峠だった。車は緩やかに降り始める。そこで車掌が検札に来た。隣の兄ちゃんは薩摩守を目論(もくろ)んだらしく、切符を買っていないので叱られている。彼はもじもじしながら、1万5000リアルを財布から取り出した。こっそり横からのぞいてみたら、財布の中はあと空っぽだった。気の毒に思えて、においのくらい我慢してやらなくちゃと思った。イスファハーンには、午後2時前に着いた。

あらかじめ目星を付けておいたホテルへタクシーで向かった。イスファハーンはイラン最大の世界遺産観光地だから、最近、しきりにスリやバイクのひったくりが出没するとか。だから、ホテルはパスポートや現金を安心して預けられるところがよい。3番目の高級ホテルは安心料代わりだ。この町一番のホテルは、昔のキャラバンサライを大改造したもので僕好みの宿らしいが、一泊120ドル、敬遠した。

選んだのは、「アーリーカープー」という変てこな名前のホテルで、一泊65ドルだ。3-4泊するのだからもうちょい安くと言って、10%値引きしてもらった。ホテルの前は美しい並木道で、前と隣には映画館がある。このあたり、道の両側はずらりと商店だ。ザーヤンデ川のフィー・オセという名物橋にも近くて、ロケーションは絶好だ。

部屋はクラシックのロココ調で落ち着いている。堂々、シャワーとバスタブ付き、すぐに風呂に入る。そのあと、まずはお目当てのエマーム広場を下検分しようとすぐにとび出した。

ここイスファハーンの歴史は古い。

7世紀アラブ人侵入の時、ここが彼らの野営地とされた、それで軍隊の地=アリスババンと呼ばれ、そこからイスファハーンの名となった。ここは、16世紀にサファビー朝の都となる。時の大帝、アッパース一世は、自ら大都市計画を立て、エマーム広場を中心として宮殿、モスク、バザール、橋などを作った。作るに当たっては、ペルシヤ文化の粋を盡したという。

当時のイスファハーンは人口60万人。これはその頃ヨーロッパ最大の都市だったロンドンと同じ。無論、シルクロード要衡の地として繁栄したからだ。諸外国からの特使や商人が盛んに出入りして国際的な大都市だった。町にはモスクが160、浴湯が270、キャラバン・サライが1800軒もあったというから、いかにここが殷賑(いんしん)を極めていたかわかる。

エマーム広場には、西欧、アラブ、中央アジア、中国、インド人などが色取り取りの民族衣装を身にまとい、お国言葉で笑いさんざめきながら行き交っていた。そのエマーム広場に立つというのだから、少々わくわくして行った。【つづく】

■関連情報
石川信義(いしかわ・のぶよし):1930年、群馬県桐生市生まれ。海軍兵学校78期、旧制二高を経て、東京大学経済学部・医学部卒。学生時代は東京大学スキー山岳部所属。61年、第5次南極観測隊に参加。65年、東京大学カラコルム遠征隊の副隊長・登攀隊長。東京大学附属病院神経科、都立松沢病院勤務を経て、68年、群馬県太田市に三枚橋病院を創設し、日本初の完全開放の精神病院を実現した。以来、精神病院の自由・開放化、精神障害者の地域化(ノーマライゼーション)運動に尽力する。

著書に、『心病める人たち』岩波新書(1990年)、 href="http://books.livedoor.com/item/1754987">『鎮魂のカラコルム』岩波書店(2006年)、『開かれている病棟』(星和書店)など。

【むかしとんぼ】ムカシトンボ(昔蜻蛉)、学名Epiophlebia superstes。トンボ目・ムカシトンボ科のトンボ。体長約5センチ。春季、渓流で見られる。日本固有種。原始的なトンボの形をつたえ、生きている化石といわれる。日本以外では近縁種のヒマラヤムカシトンボ(Epiophlebia laidlawi)がヒマラヤ山脈周辺に分布するのみ。

石川信義ブログ『昔とんぼの旅日記』

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