PJ: 石川 信義
昔とんぼの旅日記-イラン編(10)
2009年10月31日 08:24 JST
(画:石川信義) 
【PJニュース 2009年10月31日】描いていたら、数人の学生が庭に入って来た。ノートを抱えているところを見ると大学生らしい。たちまち僕を見つけて、画をのぞきこんでワイワイやり出す。質問攻めに会う。そのうち、来るは来るは、30人くらいの学生が集まってしまった。
彼らはぐるりを取り囲み大さわぎだ。「日本人だよ」「東京からだってよ」「これからイスファハーンへ行くんだってさ」ってなことを、先に来た学生が後から来たやつらに説明してやっている。これでは、スケッチどころではない。おかげで色づけがひどい雑なものになった。もっともこれは、僕がカッコつけて、さも達者な画家のふりをして、パッパッと「あざやかな」筆さばきをしたせいもある。それでもみんな、口々に「グット」「ワンダフル」と言ってくれる。カッチケネェ。
僕はピースを取り出して、みんなにすすめた。しかし誰も煙草はのまないと言う。感心。感心。それではと煙草に火をつけたら、一人がピースの箱をつくづくと眺め、「デザインの鳩(はと)は平和のシンボルですよネ、親父にやりたいので、一本いただけますか?」と言った。
「ウン、お前さん、親孝行だね」、日本語で言って、一箱を丸ごと彼にさしあげた。普通ならここで、「僕にも」「私にも」となるところだが、誰もそれを言わない。それこそ、本当に感心、感心だ。大いにこの学生たちを気に入る。そう言えば、椅子(いす)とお茶を出してくれた店の主人も、お礼にとさし出したお金を頑として受け取らなかった。
イラン人には、どこか毅然(きぜん)として己れを持するところがある。【つづく】
■関連情報
石川信義(いしかわ・のぶよし):1930年、群馬県桐生市生まれ。海軍兵学校78期、旧制二高を経て、東京大学経済学部・医学部卒。学生時代は東京大学スキー山岳部所属。61年、第5次南極観測隊に参加。65年、東京大学カラコルム遠征隊の副隊長・登攀隊長。東京大学附属病院神経科、都立松沢病院勤務を経て、68年、群馬県太田市に三枚橋病院を創設し、日本初の完全開放の精神病院を実現した。以来、精神病院の自由・開放化、精神障害者の地域化(ノーマライゼーション)運動に尽力する。
著書に、『心病める人たち』岩波新書(1990年)、
href="http://books.livedoor.com/item/1754987">『鎮魂のカラコルム』岩波書店(2006年)、『開かれている病棟』(星和書店)など。
【むかしとんぼ】ムカシトンボ(昔蜻蛉)、学名Epiophlebia superstes。トンボ目・ムカシトンボ科のトンボ。体長約5センチ。春季、渓流で見られる。日本固有種。原始的なトンボの形をつたえ、生きている化石といわれる。日本以外では近縁種のヒマラヤムカシトンボ(Epiophlebia laidlawi)がヒマラヤ山脈周辺に分布するのみ。
石川信義ブログ『昔とんぼの旅日記』
PJニュースは一般市民からパブリック・ジャーナリスト(PJ:市民記者)を募り、市民主体型のジャーナリズムを目指すパブリック・メディアです。身近な話題から政治論議までニュースやオピニオンを幅広く提供しています。海軍兵学校78期
PJ募集中!みなさんもPJに登録して身の丈にあったニュースや多くの人に伝えたいオピニオンをパブリックに伝えてみませんか。

