SakuraFinancialNews

Updated: Jan 29 23:44    

HOME > (610) > 昔とんぼの旅日記-イラン編(9)...

PJ: 石川 信義

昔とんぼの旅日記-イラン編(9)
2009年10月30日 08:07 JST


イランのドームにて(画:石川信義) 

【PJニュース 2009年10月30日】僕も縁台にひとり腰を降ろした。「サラーム」と低い声で老人が言う。「サラーム」とこちらも低い声で挨拶(あいさつ)を返す。「サラーム」というのは「平和を」という意味だ。

お兄ちゃんがひとり寄ってきて、「貴方もなさいますか?」と言った。お願いします、と僕。

水パイプの道具は高さ30センチくらい。構造は電気スタンドの下部に水入りガラスの壺、電球部分に煙草と炭火の受け皿がしつらえられていると想像すればよい。吸い方は、パイプの先端を口にくわえ、水を通した煙草の煙をのむ。

水煙草は風情がある。煙草の葉の中に香料を入れる。オレンジ、バニラ、ペパーミント。僕はオレンジを選んだ。その葉をてっぺんの銀色の受け皿に置く。その上にホイル銀紙をかけ、その上に炭火だ。ゆっくりとのむのがこつだ。ポコッ、ポコッと水が乾いた音を立てる。煙草とオレンジのミックスした香りが、鼻腔一杯にまで広がる。やわらかで甘い。ゆっくりと吐き出す。フワッと紫煙が立ちのぼる。目で追いながら差し出された茶を飲む。また吸う。しまいには、縁台に寝そべって天井を眺めながら吸った。

小一時間もそこにいたろうか。

立ち去る時にお兄ちゃんが聞いた。どうだった? とても良かったよ。こんな所が日本にもあったらなァ。最大級の賛辞を残して、その場を去った

水煙草のあと、バザールの奥へさらに進んでふと外を見たら、向こうに素朴で味わいのある土壁作りのモスクが見えた。複雑に入り組んだ露路をくぐり抜け、くぐり抜け、迷い迷ってやっとそのモスクへたどり着いた。モスクの前は無人でひっそりとしている。小さなくぐり戸をぬけて中へ入ったら、内庭の風景がなかなかのものだった。

左方に簡素な土壁のドーム、右方にあずま屋風の家屋を載せたエイバーン入口門、その真ん中に木立に囲まれた池がある。池のほとりの木陰で一人の学生が寝そべって本を読んでいた。他に誰もいない。静かだ。池が木々を映し出し、水の上に白い雲が浮かんでいる。

ドームの入り口にどっしりとあぐらをかき、スケッチを始めた。スケッチは、これで今日三枚目だ。どうしちゃったんだろう、今日の俺は。【つづく】

■関連情報
石川信義(いしかわ・のぶよし):1930年、群馬県桐生市生まれ。海軍兵学校78期、旧制二高を経て、東京大学経済学部・医学部卒。学生時代は東京大学スキー山岳部所属。61年、第5次南極観測隊に参加。65年、東京大学カラコルム遠征隊の副隊長・登攀隊長。東京大学附属病院神経科、都立松沢病院勤務を経て、68年、群馬県太田市に三枚橋病院を創設し、日本初の完全開放の精神病院を実現した。以来、精神病院の自由・開放化、精神障害者の地域化(ノーマライゼーション)運動に尽力する。

著書に、『心病める人たち』岩波新書(1990年)、 href="http://books.livedoor.com/item/1754987">『鎮魂のカラコルム』岩波書店(2006年)、『開かれている病棟』(星和書店)など。

【むかしとんぼ】ムカシトンボ(昔蜻蛉)、学名Epiophlebia superstes。トンボ目・ムカシトンボ科のトンボ。体長約5センチ。春季、渓流で見られる。日本固有種。原始的なトンボの形をつたえ、生きている化石といわれる。日本以外では近縁種のヒマラヤムカシトンボ(Epiophlebia laidlawi)がヒマラヤ山脈周辺に分布するのみ。

石川信義ブログ『昔とんぼの旅日記』

PJニュースは一般市民からパブリック・ジャーナリスト(PJ:市民記者)を募り、市民主体型のジャーナリズムを目指すパブリック・メディアです。身近な話題から政治論議までニュースやオピニオンを幅広く提供しています。海軍兵学校78期

PJ募集中!みなさんもPJに登録して身の丈にあったニュースや多くの人に伝えたいオピニオンをパブリックに伝えてみませんか。



関連記事:
タグ:
pagetop

PJ 記者