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PJ: 石川 信義

昔とんぼの旅日記-イラン編(1)
2009年10月22日 11:12 JST


イラン・カーシャーン旧市街。(画:石川信義) 

【PJニュース 2009年10月22日】2005年、イランにて。5月17日、火曜日。

イランのカーシャーンという小さな町に来ている。テヘランから200キロ、バスに4時間乗ってここまで来た。

宿に入り、熱いシャワーを浴びてほっと一息ついたところだ。いま、午後6時半。この町のレストランは8時を過ぎないとオープンしないというので、それならその合間にとペンを取った。

本来なら、いま僕はウズベキスタンに居るはずだった。サマルカンドのモスクをもう一度見たかったし、前回行き損なったフェルナガ盆地も歩いてみたい、ついでにキルギスも、と思っていたから。

それがなぜいまイランに?

ウズベク航空のフライト飛行ダイヤが変わり、旅行日程が合わなくなったからで、旅行社で直ちに行き先を変更した。

「それならイランへ行きます。イランは前々から行きたかった所ですから」と。

それにしても、この変更、幸いだったと言うべきか否か。

この旅に出る直前、ウズベキスタンのフェルナガ盆地で反カリモフの民衆暴動が起こった。朝日新聞は「中央アジアの火薬庫、発火」と一面トップで報道した。群集に向かって軍隊が発砲し、死者千人とか。女、子供もだいぶ死んだ。カリモフは「女、子供に死者が出たのは、あいつらが夫や父の盾となったからだ」とうそぶいたという。

昨年の秋、ウズベキスタンを旅した時、カリモフ大統領の強権独裁やその一族の利権独占についての不満を、何人かの人たちから聞いたものだが、果たしてだ。反政府運動の起こるのは自然の成り行きだったかもしれない。

それにしても、まかり間違えば、その発砲現場に僕が居合わせた公算は大だった。予定では、その当日がフェルナガ盆地のはずだったから。ウズベキスタンのこのニュースを耳にした時、やじ馬で申し訳ないが、しくじった、めったに出会えない修羅場を目撃するチャンス機会を逸した、残念に思った。一方で、もしその場に居たら、まだ若い時分の血の気が少しは残っている俺だから、どうしていたろう? いや危ないところだったと思ったりして、いささか複雑な心境になった。

ともあれ、僕は、いまイランに居る。

でも、やはり旅先を変更して良かった。思ったとおり、イランは興味深い国だ。この国に入ってまだ2日しかたっていないのに、既にして僕はもうイランを気に入っている。なんと言っても、長年あこがれてきたペルシヤに居るのだ!【つづく】

■関連情報
石川信義(いしかわ・のぶよし):1930年、群馬県桐生市生まれ。海軍兵学校78期、旧制二高を経て、東京大学経済学部・医学部卒。学生時代は東京大学スキー山岳部所属。61年、第5次南極観測隊に参加。65年、東京大学カラコルム遠征隊の副隊長・登攀隊長。東京大学附属病院神経科、都立松沢病院勤務を経て、68年、群馬県太田市に三枚橋病院を創設し、日本初の完全開放の精神病院を実現した。以来、精神病院の自由・開放化、精神障害者の地域化(ノーマライゼーション)運動に尽力する。

著書に、『心病める人たち』岩波新書(1990年)、 href="http://books.livedoor.com/item/1754987">『鎮魂のカラコルム』岩波書店(2006年)、『開かれている病棟』(星和書店)など。

【むかしとんぼ】ムカシトンボ(昔蜻蛉)、学名Epiophlebia superstes。トンボ目・ムカシトンボ科のトンボ。体長約5センチ。春季、渓流で見られる。日本固有種。原始的なトンボの形をつたえ、生きている化石といわれる。日本以外では近縁種のヒマラヤムカシトンボ(Epiophlebia laidlawi)がヒマラヤ山脈周辺に分布するのみ。

石川信義ブログ『昔とんぼの旅日記』

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