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PJ: 石川 信義

昔とんぼの旅日記-タイからラオス編(45)
2009年10月16日 07:00 JST


タイ・ナコンパノムの露店街。(画:石川信義) 

【PJニュース 2009年10月16日】リバー・ビュウは僕が目をむくくらいの豪華なホテルだった。ロビーも広く何人ものボーイが制服を着て気をつけをしている。おくする様子もなくそこへ彼女らは入っていった。奥のしゃれたカラオケバーに陣取る。

「あたし、オレンジジュース」
「わたくしはレモンスカッシュ」

僕も少し気取って、飲めもしないのに「僕はカクテルのレインボー」と言った。

でもいくら気取っても、サンダル履きの甚平姿ではサマにならない。もうちょっとカクテルに似合うスタイルで出掛けるんだったなァ。

ステージでは、大型スクリーンに唄(うた)のスライドが映し出され、先にきた2-3組の客が歌を唄っていた。それがみんなタイの演歌だ。タイの歌はどれも甘ったるくて少々間のびしている。

4人は僕に向かって、何か唄えとさかんに言うが、タイの歌が僕に唄えるわけがない。もじもじしていたら、彼女ら、勝手に「イエスターデイ」と「ラブミーテンダー」をボーイに注文してしまった。なんとかごまかして唄ったが、初めて唄ったわりには、途切れ途切れだったが、まあまあで唄えた。彼女らは一斉に拍手して尊敬のまなざしだ。

よして下さいよ、こんなヘボ歌に照れくせえ。せめて、襟裳岬くらいここのカラオケにあったらなァ。

一方、彼女らはと言えば、自分たちでカラオケしたいと言ったくせに、恥ずかしがってちっとも唄わない。唄って下さいと僕が言うと、みんな下を向いてしまう。もじもじして自分のつめをいじり出す。

名前は、眼鏡さんがジェブさん。この人は細身でのっぽ型。テキパキ、はっきりものを言う。車の持ち主、小柄でぷっくり型はニンさん。とても愛嬌(あいきょう)があって気使いが細やか、色香もあってなかなかに魅力的。ちょっと真面目で堅物そうなのがポーサン、この人は大柄で肩がごつい。英語がまったく分からなくて、素朴で少し田舎っぽい人がペンさんだ。

みんな日本の話を聞きたがるが、カラオケでは話ができない。1時間くらいでそこを出た。料金、1200円。

そのあと、僕のホテルのレストランで3次会をやった。中国料理の夜食を食べて、話に興じた。富士山から始まって、雪国の話、スキーの話、アルプスの話、そして京都、日本の仏たち・・・。

夜が更けて彼女らは帰っていった。彼女らこそ「和風ハンカチ」をさしあげねばならぬ。特等賞として一人に2枚ずつはさしあげたいが、あいにく、和風ハンカチはもう無くなってしまった。残念だった。

それにしてもこの4人、感じの良い人たちだった。ちょっとひかえ目で、少々恥ずかしがり屋で、それでいて鷹揚(おうよう)、おっとりしたところがある。良き昔のタイ人をこの人たちに見た、と僕は思った。【つづく】

■関連情報
石川信義(いしかわ・のぶよし):1930年、群馬県桐生市生まれ。海軍兵学校78期、旧制二高を経て、東京大学経済学部・医学部卒。学生時代は東京大学スキー山岳部所属。61年、第5次南極観測隊に参加。65年、東京大学カラコルム遠征隊の副隊長・登攀隊長。東京大学附属病院神経科、都立松沢病院勤務を経て、68年、群馬県太田市に三枚橋病院を創設し、日本初の完全開放の精神病院を実現した。以来、精神病院の自由・開放化、精神障害者の地域化(ノーマライゼーション)運動に尽力する。

著書に、『心病める人たち』岩波新書(1990年)、 href="http://books.livedoor.com/item/1754987">『鎮魂のカラコルム』岩波書店(2006年)、『開かれている病棟』(星和書店)など。

【むかしとんぼ】ムカシトンボ(昔蜻蛉)、学名Epiophlebia superstes。トンボ目・ムカシトンボ科のトンボ。体長約5センチ。春季、渓流で見られる。日本固有種。原始的なトンボの形をつたえ、生きている化石といわれる。日本以外では近縁種のヒマラヤムカシトンボ(Epiophlebia laidlawi)がヒマラヤ山脈周辺に分布するのみ。

石川信義ブログ『昔とんぼの旅日記』

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