PJ: 小田 光康
【特報】神戸地検、「誰かが殺した」事件を再々捜査着手
2006年02月12日 08:18 JST

元阪神タイガースの投手・スカウトであった故・渡辺省三さんの死亡現場。落下地点がビルから不自然に離れていた。神戸市・中央区。(資料写真、撮影:渡辺直子) 
元阪神タイガースの投手・スカウトだった故・渡辺省三氏の死亡事件、通称「誰かが殺した事件」をめぐり、遺族の渡辺直子さんが出版物などで同球団関係者らの名誉を毀損したとされる神戸地裁で現在公判中の事件に絡み、神戸地方検察庁特別刑事部が、他殺の線も視野に入れた省三さんの死因について、捜査を開始したことが11日、明らかになった。
直子さんの母親が署名した覚えの無い供述調書が存在した点、省三さんが飛び降りたとされる落下位置がビルから不自然に離れている点、省三さんが死亡した際の所持金の一部が無くなってしまっていた点、死亡後に何者かによって省三さんの携帯電話が使われていた点など、1998年8月当時、省三さんが自殺だったと断じるには、不自然な点が多かった。これらの点は、神戸地検特別刑事部も把握しているもよう。
神戸地検はこれまで2度、省三さんの事件について不起訴処分を下している。しかも、神戸地検は遺族の直子さんに対して名誉棄損の罪で、懲役8カ月を求刑している最中でもある。検察側が名誉棄損事件で論告求刑した後に、その原因となった「誰かが殺した事件」の根本的な洗い直しをすること自体、異例中の異例の出来事だ。
そして、直子さんが警察などに頼らず、友人らの協力を得ながら、ほぼ独力で「誰かが殺した事件」を調査開始してから約7年半、直子さんら故・省三さんの遺族らが求めていた事件の真相の解明にもつながりそうだ。
事件の経緯
「罪名殺人、被疑者不詳」刑事告発
故・省三氏が神戸市中央区のビル近くの路上で死亡したのは1998年8月31日。警察は「飛び降り自殺」として即決処理したが、この死因について疑問を抱いた遺族の直子さんは、この日から友人らの協力を受けつつ、ほぼ独力で調査を開始した。そして1999年7月、神戸地方検察庁に「罪名殺人、被疑者不詳」で刑事告発した。だが、神戸地検は同年12月、殺人の嫌疑なしとして、不起訴処分とした。
直子さんはこの処分を不服として2000年3月、神戸検察審査会に審査申し立てをした。その結果、検察審査会は01年2月、「不起訴不当」の議決を下した。これを受け、当時の神戸地検の次席検事は、「検察審査会の不起訴不当の議決を踏まえて再捜査する」と広報した。だが、直子さんへの事情聴取すら行わずに02年3月、神戸地検は再度、不起訴処分とした。
国を相手に民事訴訟
直子さんは検察側の判断に不服だったため、その後、民事事件として国家賠償請求することにした。02年7月、省三さんの死因は他殺であり、当局が適正な捜査を怠ったとして、国と兵庫県を相手取り、神戸地方裁判所に総額1000万円の損害賠償を求めた。だが、同裁判所は05年4月、直子さんの求めを棄却した。
一審判決を不服とし、直子さんは05年5月、大阪高等裁判所に控訴した。しかし、同年12月の第二審判決でも、「控訴人らの請求はいずれも理由がないから、これを棄却した原判決は相当であり、本件控訴は、理由がない」と、直子さんにとって不本意な結果となった。直子さんは同月、最高裁判所に上告した。
直子さん、PJニュースで事件を連載
直子さんは05年4月、PJ(パブリック・ジャーナリスト=市民記者)に登録し、「誰かが殺した事件」を中心に、自らの神戸地検への供述をつづった「供述調書#」や、自らが刑事被告となった「名誉棄損事件」など、事件の事実関係に的を絞った連載をこれまで続けてきた。
名誉棄損の罪で刑事被告に
直子さんが国を相手取った民事訴訟を起こしていた最中の05年6月、神戸地方検察庁特別刑事部は、直子さんが出版物やホームページで阪神球団関係者らの名誉毀損をした疑いで取り調べを開始した。検察側の調べでは、02年から03年にかけて、雑誌「スキャンダル大戦争2号」、「スキャンダル大戦争3号」、「スキャンダル大戦争5号」の各号で、直子さんが犯人視する人物の実名を表記して名誉棄損したとされる。一方で、直子さんは、検察側からこの取り調べが「誰かが殺した事件」についての洗い直し捜査への内偵調査の一環であるとも告げられた。
11回におよぶ取り調べと13通の供述調書に押印した直子さんは05年8月1日、神戸地検特別刑事部により、名誉棄損の疑いで在宅起訴された。そして今年の06年1月31日、神戸地方裁判所で、直子さんに対しての検察側による論告求刑が行われた。検察側は直子さんに懲役8カ月を求刑した。判決は今年3月3日を予定している。
神戸地検特別刑事部が「誰かが殺した事件」の洗い直しへ
直子さんの名誉棄損事件での結審が行われた1月31日を期に、神戸地検特別刑事部は「誰かが殺した事件」について、洗い直し捜査を開始した。省三さんの遺族、直子さんは「批判を恐れず、真実を追究するためにあえて再々捜査に踏み切ってくださった検察官の勇気、正義感、そして公明正大な英断に心から感謝しております。一刻も早く、父の死因の真相究明をしただけることを願っています」と語った。【了】
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