PJ: 小田 光康
ネット時代の取材マナーとオーマイニュース終焉、ITジャーナリスト佐々木俊尚氏に聞く
2009年06月26日 11:38 JST
【PJニュース 2009年6月26日】私信として送ったつもりの取材の電子メールが不特定多数の人々に伝わるなど思わぬトラブルにはまってしまった、取材する側と取材される側両方がその取材内容を公開して取材自体の透明性が高まったなど、ネット時代に突入し取材のマナーやそのあり方が問われている。ネットが出現する以前にも取材マナーは当然のごとく存在していたのだが、ネットというメディアが出現し、その内容も変容せざるを経ない時期にさしかかっている。こうしたネット時代の取材倫理について、オーマイニュースでの事例を参考に、情報技術(IT)ジャーナリストの佐々木俊尚氏に聞いた。佐々木氏は多忙だったため直接面会して取材することはかなわなかった。このやりとりを佐々木氏が公開することをわたしが認めたうえで、この取材を受けていただいた。以下、わたしが行った佐々木氏への電子メールでの取材のやりとりである。なお、この件については佐々木氏は6月24日深夜、わたしに返信するとほぼ同時に自身のブログで公開した。
佐々木さん、PJニュースの小田です。取材についての規範意識・倫理について取材させていただきたいと思います。まず、オーマイニュースの件です。佐々木さんがオーマイニュース編集委員という肩書の経営コンサルタント的なポジションにおられた時期に、オーマイニュース経営関係者に告げずに内部告白や批判をネットや雑誌で繰り広げた件についてです。佐々木さんの記事が侃々諤々(かんかんがくがく)な議論を呼び、オーマイの経営に少なからずの影響を与えました。
1 オーマイからコンサルタント契約を受けた報酬を得ていた上で、他の媒体で報酬を受けたオーマイの内部告発記事を書くことがある種の利益相反にならないのか。
そもそも誤解があるようですが、コンサルタント契約はしていません。「オーマイニュース編集委員」に就任するという契約で、月ごとの報酬をいただきました。報酬額に関しては個人的な事柄なので公開しません。編集委員がどのような仕事を行うのかということについて、オ・ヨンホ代表からは「オーマイニュースの言論を高めてほしい。アドバイスもしてほしい」という依頼を受けています。ただしこれについては文書化はされていません。
つまりオーマイニュースの言論をいかにしてより良いものにしていくのかが私のミッションでした。しかし残念なことにオーマイニュース編集部はまったくインターネットの本質を理解しておらず、ネットの流儀とはまったく相反した編集活動を行いました。
ネットの本質、ネットの流儀とは以下のようなことです――ニュースの収集から編集、公開にいたるまでのプロセスをすべて可視化し、その可視化されたプロセスに対して外部からの反論や評価、分析などをきちんと受け入れること。
しかしオーマイニュース編集部は編集プロセスのほとんどをオープンにせず、さらに外部からの批判の声に対しても黙殺するという方向で編集活動を行いました。オピニオン会員の封殺がその最も象徴的な事件です。
編集部スタッフの多くはマスメディア出身者で、マスメディア的な編集から一歩も踏み出すことができなかったということなのでしょう。たいていのマスメディアでは、編集プロセスはブラックボックス化され、読者など外部の第三者からの批判を受け入れることを認めていません。しかしこのようなマスメディア的な編集は、ネットの世界では通用しません。
上記のような状況で、「オーマイニュースの言論を高めていく」という私のミッションを遂行するためには、無理にでもその編集プロセスを可視化させ、外部からの批判を突きつけることしか方法はありませんでした。少なくともあの時点で私はそう判断しました。そのアプローチの一環として、外部媒体で批判記事を書いたのです。
私のミッションが「オーマイニュースの言論を高めていく」ということである限り、これは利益相反ではありません。
2 また、オーマイに対して守秘義務違反にならなかったのか。
守秘義務に関する契約は結んでいません。
次に、以下の記事での佐々木さんのコメントについてです。(http://news.ameba.jp/domestic/2009/05/38560.html)
「オーマイニュースは3年前、オピニオン会員を追い出した時点で市民メディアとしての意味を失い、完全に終焉(しゅうえん)を迎えてしまっていたのです」
3 佐々木さんにとっての「市民メディア」とはどのように定義されるのか。
市民メディアとは、プロのジャーナリストではない普通の個人が参加するメディアです。
4 オピニオン会員を追い出すことがなぜ市民メディアとしての意味を失うことにつながるのか。
参加者をフィルタリングし、自分の都合の良い人間だけを許容するようなメディアは、市民メディアの名には値しないからです。だからオーマイニュースは市民メディアではありませんでした。
5 「正直なところ、もうオーマイニュースにはなんら興味はありませんし、3年前に行うべきだった総括を今ごろになって行うことにはなんら意味は感じません」
なぜ3年前に総括しなかったものをいまになってする意味が無いのか。
私がオーマイニュース編集部に対して行った一連の批判に対し、3年前の時点では編集部側はだれも反論しませんでした。もしオーマイニュースを市民メディアとして存続させようとする意志があったのであれば、あの時点でなぜきちんとした反論を行わなかったのでしょうか?
そうした反論を行わずして、オーマイニュースが完全に消滅し、リカバリー不可能になったいまになって問題を蒸し返すというのは、私にとっては無駄な議論に思えます。だから「意味が無い」と書いたのです。
6 「私への非難や中傷はご自由にどうぞ。インターネットでは何を書こうと自由ですからね」
自由と勝手は同義語なのか。ネットでは誹謗(ひぼう)中傷も認められるという意味なのか。
誹謗中傷も自由です。ただし度を超せば告訴告発なり民事訴訟なりに発展する可能性はあります。またそこまで行かなくても、内容のない非難や中傷を行えば、多くの人々から「こいつはバカじゃないのか」と判断されてしまう危険性があります。そういう可能性を認識したうえで、ご自由にご発言くださいと言っているのです。
7 この記事を最近になって読んで驚きました。わたしへのインタビューで、インタビュー前のやりとりを佐々木さんのブログ等で断りもなく公開していたことです。取材を許可した範囲以外の部分を公開することに関して、ジャーナリストの倫理的にどう考えているのか。
インタビュー取材を行った際、記事化に際して「電話でのやりとりも含めて書いていいですか」とあなたにおうかがいしたところ、「問題ないのでぜひ書いてください」とおっしゃったのをお忘れになっているようです。
とはいえこのやりとりに関してはテープに録音しているわけでもなく、「そんなことはいっていない」と言われれば水掛け論になってしまうでしょう。それでもなおかつ「倫理的に許せない」とおっしゃるのであれば、本件については謝罪します。申し訳ありません。
ただ気になるのは、4年も前のブログのエントリーについて今ごろになってご指摘されていることです。4年間もこの記事に気づかれないまま放置されていたのですか? 「小田光康」のキーワードでGoogle検索すると、検索結果の2番目にヒットする記事ですよ? なぜいまになって?
佐々木氏はこれらの質疑応答に加え、「なおオーマイニュースに関する取材についてはこれで終わりとしてください。以降、新たな取材についてはお断りしたいと思います」とした。
質問7に関しては、わたしは取材内容以外の部分について公開することを認めたことはない。取材内容以外を公開するのであれば、取材自体を断っていた。また、佐々木氏の回答からも分かるように、佐々木氏の原稿がブログなどで公開されたことを、取材を受けたわたしは佐々木氏から知らされていない。
この質疑応答からさまざまな教訓が得られるだろう。次回はそれらについて言及していきたい。【了】
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