PJ: 西条 五郎
4月11日、東京・渋谷でチベット映画2本同時公開
2009年04月09日 08:54 JST
チベット問題を描いた映画『風の馬』より(提供:アップリンク) 
11日から東京・渋谷の映画館「アップリンク」で、チベット問題を描いた映画『風の馬』と『雪の下の炎』が同時公開される。チベット民衆蜂起から50周年の今年、改めてチベット問題を考えさせられる2作だ。
日本初の劇場公開『風の馬』
ポール・ワーグナー監督『風の馬』は、ラサで暮らすチベット人一家を描いた作品。歌手としてレコードやテレビでのデビューが決まった妹のドルカと、仕事もせず酒におぼれる兄のドルジェ。ある日、従兄弟の尼僧・ペマが路上で中国への抗議行動をして逮捕され、瀕死(ひんし)の状態で釈放される。ドルジェはアメリカ人旅行者エミーに、ペマの証言をビデオで撮影し国外の支援団体に届けるよう依頼するが、中国当局に発覚し一家はラサを追われる。
前半、ドルジェが、平和的な抗議活動を呼びかける友人に対して、「自由を叫べば自由が手に入るのか。火炎瓶を用意してから呼びに来い」と毒づく。終盤では、ドルカの恋人である共産党員の中国人男性が一家の逃亡を手助けする。弾圧、抵抗、亡命という単純なストーリーではなく、チベット人が抱く無力感や、中国人との間の愛情といったささやかな希望も描き出している。悲しい映画だが、兄妹が亡命途中のヒマラヤの山中でルンタ(風の馬=チベットの経文を書いた紙吹雪)を飛ばすシーンには、勇気付けられる。
「日本での劇場上映は初めて」(劇場担当者)という同作品だが、発表から11年経っている。それでも内容に古さを感じないのは、この11年間、チベットの問題が何ら改善されていないということでもある。
33年の獄中生活から生還した僧侶のドキュメント『雪の下の炎』
中国によるチベット侵攻を目の当たりにし、1959年のラサ民族蜂起の年に28歳で逮捕・投獄されたチベット僧、パルデン・ギャツォ師。33年間に及ぶ獄中生活と拷問に耐え抜き生還したパルデン師の半生とともにチベット問題を描いたのが、ドキュメンタリー映画『雪の下の炎』だ。
昨年のチベット騒乱直後に完成したこの映画の監督は、ニューヨーク在住の楽真琴(ささ・まこと)氏。作品は、パルデン師のほか彼の友人やフリー・チベット活動家などのへのインタビューや記録映像を織り交ぜた構成で、パルデン師の半生とチベットの“失われた50年”描き出す。2006年2月、イタリア・トリノでの冬季オリンピック大会中に、北京オリンピック開催決定に抗議したパルデン師らの13日間のハンガーストライキにも密着している。
パルデン師の獄中体験は壮絶だ。同房の瀕死のチベット人に水を求められたパルデン師は、自分も水など持っていないため、唾液を口移しで飲ませたという。自身の体験を語るパルデン師の表情は一貫して険しい。しかし、怒りや恨みよりも悲しみを強く感じさせる。作品が描き出すチベット問題に関する情報・知識だけではなく、パルデン師の人柄や“空気”にも注目したい。
トークショー、演奏会のイベントも
両作品では、上映とセットのイベントも盛りだくさんだ。『風の馬』では4月18日にツェリン・ドルジェ氏(在日チベット人・SFTJ代表)と渡辺一枝氏(作家)の対談、19日に野田雅也氏(フォトジャーナリスト)によるチベット関連の写真・映像を交えたトーク、5月2日にチベット仏教世界の歴史研究で知られる石濱裕美子氏(早稲田大学教授)のトーク。『雪の下の炎』では、4月16日にドルマ・セーリング氏(在日チベット人)と貞兼綾子氏(チベット民族学者)の対談、30日に川辺ゆか氏・Reelha氏によるチベット音楽演奏会のほか、公開初日の11日には、僭越ながらPJ西条が楽真琴監督と対談させていただく予定。各イベントの詳細は、下記の作品サイトで。
アップリンク
住所:東京都渋谷区宇田川町37-18 トツネビル2階
TEL:03-6821-6821
前売り一般1300円、当日一般1500円、2作品鑑賞券あり
『風の馬』公式サイト
『雪の下の炎』公式サイト
【了】
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