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PJ: 宮本 聰

「私は企業機密を漏らしません!」退職時の誓約書はどれほど意味を持つ?
2009年06月14日 05:21 JST

【PJニュース 2009年6月14日】退職時に「誓約書」を書かされた人が結構いるのではないだろうか。

普通、退職する時には、名刺、徽章(きしょう)、就業規則、組織図、社員名簿、顧客リストなどを返還することになっている。加えて社外秘や機密文書(特許資料、財務諸表など社外秘すべて)の返還と守秘義務の「誓約書」の提出を求められる。記者も大分前だが誓約書を書かされた記憶がある。

退職にあたってどうして誓約書まで書かされるのだろうか。企業としては止(や)むに止まれず提出を義務付けているといったところだろう。それだけ、企業の秘密情報が退職後に使われているという証しともいえる。その現実はどうだろうか?

◆形ある企業秘密の漏洩は罪に問われる

例えば「退職者による営業秘密の不正取得、使用、開示、いわゆる営業秘密の漏洩(営業秘密の侵害)にあった場合、元従業員や転職先のライバル会社に対して、製造・販売の差し止めや損害賠償といった民事的措置を求めることに加え、元従業員やライバル会社を刑事告発することができる」が公式な見解だろう。

◆企業が即戦力を求める限り、機密情報は転職の武器

だが転職者で異業種に就く人はほとんどいない。多くは同業他社への転職となる。その理由は簡単で企業が「即戦力」を求めているからだ。“横横異動”といわれる競合他社への転職には手土産が必要で、顧客リストしかり、売り上げ実績や個人のネットワークなどがそれに該当する。

営業部長職で他社に転職する場合、個人の資質(知識・経験・スキル)は当然だが、その人が持っている情報やネットワークに価値があるから採用すると言っていいだろう。販売実績表、競合品分析データ、製品の強み弱み一覧などを持ってきてくれるなら大歓迎だ。本来、これらはすべて社外秘のものだ。ではこれらを使ったとして罰せられるのだろうか。この程度で罰せられることはまずない。なぜなら以下の3点で証拠立てが難しいからである。

1)情報管理(対象となる情報などが、秘密情報として厳格に管理されているか)
2)価値(対象となる情報などが、客観的にその企業にとって役立つものか)
3)入手経路(社員でなければ入手できないものか)

◆形のない情報の漏洩は防ぎようがない

その人の記憶にある知識や個人のチャンネルを利用したからといって、機密漏洩だと立件できるかというとかなり難しい。行きつく先は企業人のモラル頼みということになるが、モラルほどあいまいなものはなく、個人差が大きい。どこまでが倫理かを線引きするのは極めて難しいといえる。

企業秘密の漏洩防止は企業にとって頭の痛い問題である。しかし、取り締まる法があっても形のない情報は、漏洩を防ぐ手だてはないものと考えるべきだろう。さらならば、退職時の守秘義務「誓約書」は企業の気休め程度の意味しかない。人事担当者の悩みはつきない。それが現実だ。【了】

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