PJ: 藤倉 善郎
「水子の霊を祓え」=箱根大天狗神社で不吉な初詣
2010年01月02日 09:00 JST
まるでパチンコ屋のようにピカピカ光りまくる境内(撮影:藤倉善郎、1月1日) 
【PJニュース 2010年1月2日】12月31日夜、神奈川県・箱根町にある「箱根大天狗神社」で年末の「大祓い」が行われた。終了後、年が明けるまで、神職が集まった参拝客(信者)らに「この社に神様はいない」「来年はよくない年」「もっと神様に尽くせ」「(関連施設の参拝者が少ないので)もっと行くように」などと、ネガティブなお説教。記者も複数の神社関係者から、「水子の霊は誰にでもいる」「来年は悪い年」と、さんざん不吉な話を聞かされた。
同神社の札所職員によると、同神社は「昭和50年ごろにできた」という新興の宗教団体。おおよそ2000〜3000人程度の信者がおり、大みそかには九州からも信者が訪れているという。境内はカラフルな点滅イルミネーションと銀色のリボンで埋め尽くされ、本殿はもちろん敷地全体が光のプールと化している。まるでパチンコ屋のようなけばけばしさだ。名称は「箱根大天狗神社」だが、主な信仰対象は天狗ではなく水子の霊(幼童神霊=ようどうしんれい)。
「中絶や死産で亡くなった子どもの霊は、体がバラバラになった状態で辺りをさまよっている。うちの先生(教祖)が日本で唯一、水子の霊を元の姿に戻して天国に送ってあげる力を神様から授かり、この神社で供養している」(札所職員)
境内には、羽根の生えた天使の像がいくつも鎮座する。弓を引く天使の姿を描いた絵や、ラッパを吹きならしている天使の像もある。これを札所の職員たちは「天使ではなく幼童神霊」と言い張る。記者は、子どもができたことはない。しかし記者は別の札所職員から「父親・母親やご先祖様までたどれば、必ず水子がいる。全ての人にかかわりがある」と言われた。子どもと死別した経験もないのに、体がバラバラになった水子の霊がつきまとっているとは、恐ろしい話だ。
境内では、「悪魔祓い」(1人1回1000円)も行っている。試しに受けてみることにした。境内の一角にある「悪魔祓い八雷龍虎殿」の中で行われる。
「1人ずつ中に入って、ゆっくり歩いてきてください。中で先生(教祖)が呪文を唱える声が聞こえます。途中、決して後ろを振り返らず、呪文を最後まで聞いて出てきてください」(受付の女性)
内部は薄暗く、虎や鷹や天狗や獅子や龍の像が所狭しと並べられ、天井からも吊られている。その両目には豆電球が仕込まれており、赤く光っている。お化け屋敷のようだ。大音量で教祖の呪文が流れ始めたが、音が悪く、何を言っているのかさっぱりわからない。数分で呪文が終わり、外に出た。
「来年は、八白土星の人は、地下鉄サリン事件や阪神大震災が起こった年と同じくらい運気が悪い。次の年末にもお祓いをしにきてください」
こんな不吉な話をされ、再度のお祓いを勧められた。
大みそかの午後11時40分。神社では信者数百人を本殿前の広場に集め、「大祓い」を行った。その場で神職姿の男性がマイクを片手に挨拶。
「さきほどまで先生(教祖)がいらしてまして、『ここに幼神様がいない』『あっちの稲荷神社の方に行ったらいた』とおっしゃっていました。なぜかというと、みなさんはこっちの神社には集まるのに、向こうの社にはあまり人がいなくて寂しい。だから神様はあっちの社に行かれたんだそうです」(男性)
信者らに、本体の神社だけではなく、近くの関連施設にも参拝に行け、と言っているのである。年越しの挨拶にしては、ずいぶんとネガティブなお説教だ。
午前0時をまわり、年が明けた。
「みなさんが神社に来れば、それだけ神様も潤います。今年はなお一層、(みなさんが)神社のために神様のために尽くすようにと、神様も願っています。神様の庭を賑わせて神様の御心を和ませていかなければ、私たちの幸せはないんだということを念頭に置いて、この三日間大変でしょうけども、よろしくお願いいたします。では、まだ夜が明けたばかりですが、明日の朝拝は5時45分です。今日は、残ってくださった方がこんなにたくさんいて、よかったと思います。しかし朝拝になると来ない人も多いので、大勢の方にいらしていただきたい。お祓いは何回やっても構わない。何回でもやっていただきたいと思います。それだけ厄がついてるんですから」(男性)
神様に尽くせ、もっと神社に来い、朝5時45分に来い、お祓いを受けろ……。初詣に来た神社でこんなことを言われたら、一般参拝者は不快にしか感じないのではないだろうか。神社の入口には、「一般参賀歓迎」と書かれた横断幕もあったが、事実上は信者の参拝のみを想定した内輪の宗教集会である。
「では、とりあえず解散にしたいと思います」(男性)
参拝者たちは、本当に解散して帰っていってしまった。明朝5時45分にまた来なければならないのだから、早く帰らねば睡眠も満足にとれないだろう。
境内がカラフルな点滅イルミネーションで彩られていようが、神社でありながら悪魔祓いをしていようが、天使を像を置いていようが、それだけでは悪い宗教とは言えない。単に「神社と称しているにしては変わっている」というだけだ。しかし一般参拝者である記者にまで「水子云々」の恐ろしい話をしたり、「来年は悪い年」などと言ってお祓いを勧めるなど、人の恐怖や不安を煽って信仰を集めようとする宗教は健全とは言えない。
「水子供養」は、悪質な宗教団体が信者を脅してカネをまき上げる際のネタとして悪用されてきた側面もある。箱根大天狗神社がそれと同類だと決めつけるつもりはないが、一抹の不安を感じた。【了】
※箱根大天狗神社に関する情報をお持ちの方は、記者(藤倉)までご一報ください。
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