PJ: 藤倉 善郎
ジャーナリストは「会見開放」の声を緩めるな
2009年10月02日 07:00 JST
自分が取材できればそれでいいのか(撮影:藤倉善郎、9月29日、外務省の会見室で) 
【PJニュース 2009年10月2日】9月29日、岡田克也外相が予告どおり記者会見を記者クラブ加盟社以外のメディアにも開放した。しかし、外務省を通じて示された「開放」の対象は、新聞・雑誌等5つの業界団体所属メディアと外国記者登録証保持者、そしてそのいずれかの業界団体に所属するメディアで過去6カ月間に2本以上の署名記事を書いた実績があるフリーランスだ。ネットメディアについては日本インターネット報道協会所属のメディアが対象となるが、活動実態もなく数社しか加盟していない協会だ。実質的に、ネットメディアについての開放は十分とは言えない。
29日の外相の会見後、外務省広報課の担当者は、記者クラブ加盟社以外からの取材登録申請状況について、こう説明した。
「申し込みは25社34人。今日の会見までに登録が済んで実際に会見にエントリしたのは20人です。申請を受け付けたものの審査が完了しておらず、今日の会見に間に合わなかったメディアや記者ありましたが、現時点では申請を却下したケースはありません」
また担当者は、登録基準について「まだ試行錯誤」とし、外相も会見で同様の見解を示した。登録基準が変更されたり柔軟に運用され、ネットメディアへの開放も進む可能性はもちろんある。しかし、仮に現在の登録基準が杓子(しゃくし)定規に運用されると、例えば、報道活動をする気などなく「外相に靴でも投げるか」と考えている人であっても、協会員メディアに記事を2本投稿すれば外相の会見に乗り込むことができてしまう。一方で、協会に加盟していないPJニュースの記者は、どんなにまじめに記者活動をしていても取材できない。明らかにバランスを欠いた基準だ。
こうした問題に言及している例は、ネットメディアの中にも見当たらない。唯一、産経新聞が、会見の様子を伝える記事の中で「ネットメディアへの開放が足りない」との声があったことを紹介している程度だ。
外相の会見前、ある雑誌編集者に「(単に開放されたという以上の)ネタになりそうな要素はありますか?」と聞かれた。「ネットメディアへの開放が不十分なので、原則としてすべてのメディアに開放するという外相の予告が果たされていない」と答えた。すると、
「うちみたいに雑誌協会に入ってるメディアは取材できるようになったわけだから、ネットメディアが入れないということを誌面で話題にする意味ないんですよね」(編集者)
こうなるであろう予感は以前からあった。鳩山首相の初会見が「開放」されなかったことで、週刊誌にも批判的な記事や内情リポート、記者クラブという既得権の問題に言及する記事が掲載されたが、ネットメディア参入の必要性を説く記事は見当たらなかった(もちろん、ゼロではなかったかもしれないが)。「新聞・テレビを叩くネタ」あるいは「自分たちが入れればそれでいい」という空気が感じられた。
近く取材に赴く予定だが、日本インターネット報道協会も、外相会見の開放を受けて何か対応するといった気配がない。これまで長きにわたり記者クラブ問題に言及してきたジャーナリストからは、こんな言葉も聞かれた。
「いままで記者クラブ問題に取り組んできたのは、自分の取材にかかわるからであって、記者クラブ問題そのものが取材テーマなのではない。(外務省については)もう開放されたわけだし、自分の(本来の)取材をしたい」
記者クラブ問題は、単に「自分たちが取材できない」という問題でしかなかったのか? 新聞・テレビ各社で構成される記者クラブと権力の癒着をいくら非難しても、自分が権力側に受け入れられれば口をつぐむのか? もしそうなら、「報道の自由」だとか「国民の知る権利」だといった議論はすべてデタラメだったことになる。
記者自身は、「協会加盟メディアで記事を2本書くだけで取材できる」という基準に反対するつもりもない。そういう基準なのであれば、同程度の実績がある記者についても協会と無関係に開放しなければ整合性がとれないことを指摘したいだけだ。もともと日本インターネット報道協会が活動実態のない名前だけの団体なのだから、「協会加盟」であるという肩書にも実質的な意味はない。
「開放」されたこと自体は喜ばしい。外相の大英断だったと思う。しかし具体的な手法にはまだいびつさが残る。その問題から目をそらしてしまえば、開放の動きが、新聞・テレビだけの“小さな記者クラブ”から、雑誌や少数のネットメディアを加えた“大きな記者クラブ”になるだけで終わりかねない。これまで散々記者クラブ制度を批判してきたメディアやジャーナリストたちが、「自分さえ取材できればそれでいい」人々ではないことを祈る。
「オレが取材できる」ことが報道の自由なのではない。「誰もが取材できる」ことが報道の自由なのだ。【了】
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