PJ: 藤倉 善郎
幸福の科学は“カルト”なのか
2009年09月18日 06:20 JST
90年代における幸福の科学の主な訴訟戦果。地方で信者が原告となった訴訟には、表中の6件のほか徳島地裁での訴訟があるが詳細不明。(作成:藤倉善郎、敬称略) 
【PJニュース 2009年9月18日】これまで、幸福の科学を母体とする幸福実現党の選挙戦について6本の記事を書いた。そこで全く触れてこなかった論点がある。「幸福の科学はカルトなのか」についてだ。私自身は、カルトである可能性を念頭に置いて警戒すべき対象であると考えている。
「カルト」の定義は、これと決まったものはない。辞書の上では「正統ではない集団」「熱狂的な集団」といった説明がつく場合が多いが、カルトの社会的問題性の実情にまったくそぐわない。カルト問題に取り組む人々の間でコンセンサスとなっている判断基準は、「人権侵害などの反社会的要素があるかどうか」である。
例えば統一協会は、正体を隠して勧誘活動を行い、先祖の霊やなどを口実に信者を脅して高額な商品を売りつけたり献金を迫る。これが違法であり反社会的行為であることは、民事訴訟で結論が出ており、現在は刑事裁判も始まっている。しかし、反社会的かどうかは裁判上の形式論ではなく、社会的価値判断だ。裁判事例がなくとも、精神的な教えを用いながら人の精神や行動を束縛し、その手段や結果に反社会的な要素があれば、記者はカルトと呼ぶ。
では、幸福の科学は、どこが反社会的なのか。まず第一には、「新聞はみんな腰抜け=幸福実現党の選挙戦2009(4)」で書いた1991年の「フライデー事件」が挙げられる。彼らは講談社に乗り込んでハンドマイクでがなりたて、電話やFAX攻撃で会社業務をまひさせた。第二には、フライデー事件も含めて、幸福の科学が常軌を逸した額の損害賠償を求めて訴訟を乱発してきた点だ。
フライデー事件では、教団が原告となった訴訟のほかに、全国7つの地方裁判所で信者約3000人が講談社を相手取って訴訟を起こした。賠償請求額の合計は約30億円。教団が原告となった訴訟については教団が勝訴したが、個々の信者による訴訟は、フライデーの記事で実名を挙げられた作家・景山民夫氏と女優・小川知子氏について計60万円の賠償が認められただけで、ほぼ全敗。これによって、団体が名誉を傷つけたとしても個々の構成員に賠償請求権はないとする判例が確立された。法曹界からは、「反社会的団体の濫訴を抑制する判例ができたのは、当時、幸福の科学が裁判をやりまくってくれたおかげ」と皮肉る声すら聞こえる。
この頃の幸福の科学は、メディア以外に対しても手当たり次第に牙をむいた。1993年には、暴露本を出版した元幹部に対して、幸福の科学が1億円の支払いを求める訴訟を起こした(最高裁で敗訴)。95年には、教団の施設建設に反対していた栃木県の住民団体代表者を相手に、1億円の賠償金を求める訴訟を起こした(その後、取り下げ)。
97年には、幸福の科学から献金を強要されたと主張する被害者の訴訟代理人・山口広弁護士に対して、8億円の損害賠償を求め提訴した(最高裁で敗訴)。山口弁護士を訴えた訴訟の判決で東京地裁は、提訴を「教団を批判する者に対する攻撃、威嚇の手段として訴訟制度を利用」しようとしたとして、逆に幸福の科学に100万円の賠償支払いを命じている。高裁で、この判決が確定した。
宗教団体にも訴訟を起こす権利はある。しかし「攻撃、威嚇の手段として訴訟制度を利用」するのは、どう考えても反社会的だ。もはや“訴訟カルト”と呼ぶ以外ない。
幸福実現党の取材で東京・五反田の教団施設を訪ねた際、党の広報担当者とこんなやりとりをした。
広報「藤倉さんは、政治よりも宗教を取材している方なんですね」
─はい。カルト問題を取材しています。
広報「うちもカルトなんですか」
─そうですね。
広報「うちは、もう10年くらい、訴訟もほとんどなく、おとなしくしているんですよ」
近年、ほとんど訴訟がない(新潮社を訴えたケースはある)とは言え、本格的な批判報道がない中でのことだから、“安全宣言”の根拠としては不十分だ。批判報道がない現状自体が、そもそもフライデー事件の威嚇効果なのではないか。幸福の科学の関連サイト「幸福の科学 法務室」には、彼らの対メディア闘争の歴史が記されているが、高額な賠償を請求した濫訴への反省はない。フライデー事件の頃にはなかったインターネットが普及し、一般市民の言論の幅が広まっている現在だからこそ、反省なき“訴訟カルト”は、よりいっそう警戒されるべき存在だろう。
上記の会話の後でも、幸福実現党の広報担当者はにこやかに取材を受け入れてくれている。これまでの記事について、とくだんのクレームはない。選挙後は、党の人事や方針の刷新作業中との理由で一時的に取材が止まっているが、選挙期間中以外の平常時の取材にどう向き合ってくれるのか。一般社会との関係性や良識が重視される政治活動に身を投じたことで、教団の社会性に変化は見られるのか。本当にもうカルトではなくなったのか。そういった点を見守っていきたい。【了】
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