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PJ: 藤倉 善郎

「カネよりケアを」・オウム真理教事件被害者の現状(下)
2009年06月30日 05:34 JST


左から、会見するR・S・C事務局専従者・山城洋子氏、理事長・木村晋介弁護士、理事・石松伸一医師(東京・千代田区で、6月24日・撮影:藤倉善郎) 

【PJニュース 2009年6月30日】(上)のつづき。「オウム真理教犯罪被害者等給付金」制度の問題点や申請受付窓口である警察の対応のまずさを危惧したNPO法人「リカヴァリー・サポート・センター」(R・S・C)は、今年1月末、サリン被害者に対して、申請を一時見合わせるよう呼びかけた。しかしその後、R・S・Cと警察庁との間で話し合いを進め、申請処理に際して、R・S・Cが保管する約1500人分の被害者の検診データとの照合や、これまで検診にあたってきた医師が診断書を発行する等の協力体制を築き、今年5月に被害者に対して申請の再開を呼びかけたという。当初の認定基準になかった症状も後遺症として認めるといった面でも、警察庁はR・S・Cの要望を受け入れた。

しかし問題がすべて解決したわけではない。これまで公安委員会の依頼で80〜90件の診断を担当してきた聖路加国際病院の救急部部長でR・S・C理事の石松伸一医師は、「後遺症の認定方法はいまだ確立されていない」と、医師の側でも診断の難しさを感じていることを示した。給付金制度以前に、サリン後遺症への治療方法が存在せず、国もこれといって調査・研究を行っていない点が、より根本的な問題だろう。

R・S・Cの毎年の検診統計によれば、「体がだるい」「疲れやすい」との症状を挙げる被害者が7割前後で依然として多く、「目が疲れやすい」「かすんで見えにくい」など、視神経に影響を与えるサリンとの関係が疑われる症状も同様。「忘れっぽくなった」「体が緊張する」といった、脳や精神面にかかわる症状も4〜5割にのぼる。近年になって割合が増えてきている症状もある。

「理想を言うなら、国に検診をやってほしい。これが被害者にとって、一番心の支えになるんです。被害者が『社会から見捨てられる』と思ってしまうことが、一番悲しいことだし、症状の悪化につながる。検診結果が毎回同じでも心の支えになる。テロ事件が起こったときの対処として、まったく検診もせずほったらかしているなんていうのは、先進国の中では日本くらいではないか。カネを出すよりケアをしてほしい」(R・S・C理事長の木村晋介弁護士)

たとえば広島・長崎における原爆被害のデータは、現在でも放射線被曝にかんする統計的な発症リスクの算出や安全基準策定に大きく役立っていると聞く。原爆投下には米軍による“人体実験”の側面もあったからこそデータが豊富という事情もあるかもしれないが、いずれにせよ、被害者への検診は被害対策の研究としても有用なことに違いはない。サリン事件において国がそれを怠ってきたことは、被害者救済に加えてテロ対策の面においても重大なミスと言わざるを得ない。

オウム真理教は事件後に宗教法人としては解散し、破産を宣告された。しかし教団そのものは存続し、事件への反省を表明して被害者への賠償を開始したのは、教祖・麻原彰晃(本名:松本智津夫)死刑囚が逮捕されてから5年後の2000年。しかし今年3月に破産手続きが終結し、被害者への配当率は約40%にとどまっている。約12億円の賠償残高について、弁護士らで作る任意団体「オウム真理教犯罪被害者支援機構」が債権譲渡を受け、後継団体である「アレフ」「ひかりの輪」との間で支払契約の締結を目指し交渉中だ(ひかりの輪は、契約する意向を表明している)。

一方、オウム真理教をめぐっては、一連のテロ・殺人事件以外にも、入信した信者や家族が財産等の収奪を受けたという被害がある。しかし、これについては公的な救済制度はない。

松本サリン事件から15年、地下鉄サリン事件から14年。そして、各事件前からいちはやくオウム被害者の救済活動に乗り出していた坂本堤弁護士が、家族もろとも教団に拉致・殺害されてから20年。これだけ時間がたっても、オウム事件は何一つ解決していない。【了】

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サリン事件被害者支援活動NPO法人 リカバリー・サポート・センター



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PJ 記者