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PJ: 藤倉 善郎

「記者クラブ」から「居眠り記者」をつまみ出せ!
2009年05月31日 06:52 JST


初めは手元の資料を読んでいたのに、気がつけば……(5月28日、東京司法記者クラブで、撮影:藤倉善郎) 

日本全国ほとんどの官公庁には「記者クラブ」というものがある。ここでは原則、国内の大手新聞社とテレビ局に所属する記者に限って入会が許可され、雑誌やフリーの記者の入会は認められることはほとんど無い。排他的な記者クラブで行われる会見内容は、新聞・テレビが独占し、国民にもたらされる情報は彼らが取捨選択する。権力側との癒着につながる側面もあることから、記者クラブ制度はこれまでも散々批判されてきた。

そんな記者クラブのひとつに、裁判所や検察の案件を扱う司法記者クラブがある。例えば東京司法記者クラブは、東京地裁・高裁が入る裁判所の2階に部屋を持っている。加盟各社の記者たちは、場合によっては裁判の当事者より早く判決文要旨の文書を入手できる。

ここにいれば裁判の傍聴などしなくとも、待っていればネタが転がり込んでくるし、「資料をもとに記事を書くだけ」ならいくらでもできる。裁判情報の中央市場のようなもので、記者クラブに所属する大手メディアはいわば特権的中卸業者だ。

私はフリーライターであるため、記者クラブには原則として入ることができない。しかし、カルト宗教などをめぐる訴訟の会見には、ときどき立ち会うことがある。

これまで、記者クラブ制度のあり方について考えさせられる会見がいくつかあった。ひとつは、あるカルト的集団に損害賠償請求の訴訟を起こした被害者たちの会見だ。東京司法記者クラブでテレビも含めていくつもの大手メディアが会見に出席し、原告や弁護団に質問も行った。しかし、実際に報じたメディアはゼロ。記者クラブにいなかった『赤旗』と『週刊現代』だけが記事を掲載した。いずれも私が情報提供した。

もうひとつは、キリスト教会の牧師から暴行を受けた男の子が損害賠償を求め、勝訴した際の会見だ。裁判所内ではなく隣の弁護士会館で、横浜司法記者クラブの仕切りによって行われた。提訴時に小学生だった原告が、勝訴報告の際には中学生になって会見に臨んだ。母親も同席して喜びを語っていた。そんな中、会見場で居眠りをこいている若い記者がいたのだ。記者席で気持ちよさそうに舟をこいでいた。

カルト的集団による被害を訴訟で争う人々は、自分の被害を取り戻したいという個人的利益のためだけではなく、その問題を世に訴えて同様の事件が起こらないようにしたたいとか、すでに被害を受けた人々の励みにして欲しいと考えていることが多い。だからこそ、わざわざ記者会見を行う。勝訴したことを自慢しているのとは、わけが違う。

彼らは司法記者クラブではなく、裁判所近くの弁護士会館などで、記者クラブに加盟していないメディアも招いた会見を行うことも可能だ。しかし、会見以前から注目されているような事件でなければ、新聞・テレビの記者が司法記者クラブから弁護士会館まで足を運んでくれないという難点もある。会見する側にしてみれば、大手メディアで報じてもらうためには司法記者クラブで会見を開いた方が理にかなっている。

とはいえ現実的には、記者クラブで会見しても、多くの情報は捨てられてしまう。掲載される記事が短いとか、配布資料以外の情報が反映されないということだけではない。それでも報じられればいい方で、そもそも全く報じられないケースもある。雑誌社やネットメディアは記者クラブに加盟できないので、「新聞が報じなくても雑誌やネットメディアがやってくれる」とはならない。

会見に臨むカルト被害者たちの思いは、記者クラブにおいて十分生かされているとは言えない。当然、国民が「知りたい」と思う事実でも記者クラブで捨てられてしまえば、それまで。記者クラブには、裁判情報の生殺与奪権を握っているという不当なほどに大きな責任がある。いかに裁判担当記者が激務であるにせよ、よくもまあ、そんな場所で居眠りができるものだ。

5月29日に掲載された「X JAPAN・TOSHI所属事務所、二審も敗訴=自己啓発セミナー被害訴訟」でも、勝訴した被害者が東京司法記者クラブで会見を行った。5年にわたる裁判を戦い抜いた被害者が、涙ながらに喜びを語っていたが、ここでもまた、どこぞの記者が居眠りをこいていた。

そもそも記者クラブ自体ない方がいいのだが、廃止できないまでも、態度の悪い記者を排除・指導するくらいのことはできないものか。【了】

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