PJ: 藤倉 善郎
“愛国雇用”の何がいけないのか=同志社大・浜矩子教授に聞く
2009年05月12日 07:23 JST
<外国人より日本人の雇用を優先する「愛国雇用」の兆候がある><差別や排除から平和が脅かされる」>──。憲法記念日の5月3日に「九条の会・おおさか」のイベントでの同志社大学大学院・浜矩子教授(国際経済)のこの言葉が、『2ちゃんねる』やブログで話題になった。“愛国”の何がいけないのか。
この発言は、5月4日『asahi.com』の「護憲、改憲、大阪市内でそれぞれ集会 憲法記念日」に掲載された。すぐさま『2ちゃんねる』でスレッドが立ち、「どこの国であっても自国民を優先するのが当たり前」など、浜教授を批判する書き込みが寄せられている。「反日」との指摘もあれば、「また面白い言葉を発明したねwww」「愛国無職」とちゃかす声もあった。
新聞記事データベースで「愛国雇用」を検索しても、ヒットするのは上記と同内容の『朝日新聞』と5月3日『毎日新聞』だけ。毎日新聞で浜教授は、“愛国雇用”だけではなく“愛国消費”や“愛国金融”という言葉で、アメリカなど世界各国の自国優先の政策を批判している。その真意を、浜教授に電話で尋ねた。
─新聞での発言を総合すると、“反日”というよりも、世界各国の“愛国経済”を批判しているように見えます。
「そのとおりです。ことさらに日本が悪いと言っているわけではありません。すべての国々が『わが国さえよければ』という発想に陥ると、結局は皆で足を引っ張りあって誰もよくなることはできない、と言いたいのです」
─それは“利己性”への批判だと思うのですが、あえて“愛国”という言葉を使った意図は?
「不況時には、自国優先の政策が『まともな愛国心』と結びつけて訴えられがちで、それが他国との平和を脅かしていく。『九条の会・おおさか』の講演タイトルが『世界不況と平和』だったこともあって、こうした問題意識から(単なる利己性ではなく)“愛国”という言葉を使いました。
─国という単位が存在する以上、自国優先は当然のこと。私は、程度問題だと思うのですが。
「程度問題と片付けていいのか疑問です。自国を安定させるためには、むしろ自国優先ぶりを表面化させない方がいい。まさに“情けは人のためならず”です」
─もともとグローバル経済でさえ、それを利益と考える人々の利己性がなし得たことのように思います。不況下で利他性を主張するのは、余計にハードルが高いのでは?
「不況だからこそ、『自分さえよければ』ではなく『他人さえよければ』であるべき」
─日本において、日本人の雇用より外国人を優先しろと?
「優先しろとは言いません。差別なく平等に、『来るものは拒まず、去るものは追わず』でいい」
─例えば中国は最近、輸入電子機器のソースコードの開示を海外メーカーに強制しようとしたほか、昨年は、チベット問題にからんで、飛行機や自動車の輸入を盾にフランスを恫喝(どうかつ)しました。“愛国経済”という点で、かなり問題がありますね。
「問題と言えば問題ですね。しかし中国は閉ざされてきた期間が長く、もともと大国は閉鎖的になりやすい。日本のような小国は、閉鎖的では生きていけないから自然と開放を目指します。中国には、地球経済の中における自らの役割を認識してもらえるよう、特に日本が相談相手として接していくべきでしょう。もちろん、批判すべきところは批判すべきだと思います」
浜教授は04年2月に京都政経文化懇話会で講演した際、日本の競争力回復策として「特に成長する中国とは、国内の空洞化を恐れず相互依存を深めること」(18日、京都新聞より)を挙げている。“愛国”という言葉を使い始めたのはごく最近だが、“情けは人のためならず”は一貫した姿勢のようだ。【了】
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