PJ: 藤倉 善郎
プロ記者はいったい何をしていたのか=誰がオーマイニュースを殺したか(下)
2009年04月29日 08:15 JST

さよならオーマイニュース(08年4月、東京・虎ノ門、撮影:吉川忠行) 
(中)からのつづき。市民メディア「オーマイニュース(以下、OMN)」が、24日に完全消滅した。私は、OMNの失敗は市民メディアの限界を示したものではなく、ただ単に報道メディアとして失敗しただけだと思っている。では、そのOMNで、プロのライターである私自身は1年間、いったい何をしていたのかを反省したい。
元講談社の元木昌彦氏が編集長となった07年、OMNではプロのライターの登用が積極的に行われた。私もその一人だ。「プロの記事で読者を集め、それによって市民記者の記事の露出を高めるため」だと、編集部員から聞かされた。当初私は、コメント欄やSNS機能やイベントに顔を出すなどして、市民記者や読者と交流を持つように心がけた。私自身が読者や市民記者から学べるものがあると感じたからでもあるし、報道について市民記者にもっと知ってもらう機会になるという思いもあった。ところが、こうした姿勢は、かなり早い段階で頓挫した。
新聞社のイベントで盗んだ腕章をつけてOMNの取材をしていると自慢する者(窃盗&身分詐称)、自己紹介の際に自分が所属してもいないNPO法人の名を入れた名刺を渡してくる者(身分詐称)、編集部からデータをもらっておきながら編集部の言い分を取材せずに一方的な解釈で編集部批判の記事を書く者(だまし討ち取材)──。報道云々以前に人間として狂っている人々を見て、私は「記事を書く」という活動以外でOMNに貢献できることはない、とあきらめてしまった。逆に、愚直に「取材して記事を書く」ことを実践している市民記者には、そもそもプロ記者が偉そうに口を出す余地はなかった。記者と会話するまでもなく、その人の記事そのものが教科書だ。
一方で、記事のコメント欄で私を誹謗中傷する市民記者に対して、私はかなり乱暴な発言や態度をとった。そういう人物は、私だけをターゲットにしているわけではなく、ほかの市民記者に対しても似たり寄ったりの問題記者だった。私は特定の問題記者を名指しして茶化したり、OMNから追い出すべきだという趣旨のことを、かなり態度の悪い言葉で書いたこともある。その記者は自らOMNを去り、編集部員たちも喜んでくれた。私は「編集部の手を汚さずに問題記者を追い出した」ことで結果的に自分がOMNに貢献できたと思った。
しかしこれは、大きな間違いだった。問題記者は、編集部が自らの手を汚して毅然(きぜん)とした態度で排除すべきだった。その方が、ほかの問題記者に自省を促したり、まともな記者に集まってもらえる環境を整えることにつながったはずだ。問題記者排除のために、強く編集部に働きかけなかったことが悔やまれる。
もうひとつ、プロ記者として反省すべきは、カネの使い方だ。OMNでは、地方取材の経費が実費で支給された。私自身の例で言えば、インチキチャリティー映画『純愛』の取材のために編集部員と2人で札幌に行き、交通費と宿泊費で10万円ほど使った。中越沖地震後の新潟・刈羽原子力発電所周辺の風評被害取材や、福島県内で行われた原発関連のシンポジウムや講習会、岐阜地方裁判所でのカルト宗教の裁判、長野で行われた北京オリンピックの聖火リレーなどの取材も、OMNに取材経費を出してもらっていた(さすがに海外取材はすべて自腹だったが)。
経費の大半は交通費だし、札幌の場合は正月の繁忙期で格安チケットも入手できないタイミングだった。新潟や長野の取材では自家用車を使って交通費を削減したし、いずれの場合も宿は格安のビジネスホテル。決してムダ遣いはしていないのだが、それでもこれほど頻繁に出張経費が出るメディアは多くはないだろう。
編集部にはプロの記事でアクセス数を増やすという目的があり、私自身も、市民記者に対して取材の面白みを示したいという思いがあった。それなりの理由はあったが、“市民メディア”にとっては、OMNがプロ記者や編集部員による取材にかなりの経費を費やすことに矛盾もある。しかも編集部や私のこうした目的は、実際にはさほど達成されていなかった。
「プロ記者の記事は市民記者の記事より、全体的にアクセス数は多く、トップ記事にはプロ記者の記事を一切掲載しないと決めたときには、アクセス数がガタ落ちした」(元編集部員)と聞く。しかし、しょせんはその程度だ。また、私の取材記事を見て、「じゃあオレも現場に行くぞ」となった市民記者がいたようには見えない。取材の面白みを示すのであれば、カネがかからない(つまりアマチュアでもできる)取材の比重を増やすことによって示すべきだった。
3回にわたって書き連ねたが、こうした反省を踏まえながら、5月25日(月)に東京の「阿佐ヶ谷ロフトA」で、OMNの元編集部員を中心としたトークイベントを開催する。OMNの失敗をほかの市民メディアの糧にしてもらえるよう、“楽屋ネタ”も暴露しながらOMNを総括したい。【了】
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