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PJ: 藤倉 善郎

過保護な姿勢が“報道”を自己否定した=誰がオーマイニュースを殺したか(上)
2009年04月27日 05:05 JST


ありし日のオーマイニュース編集部(08年4月、東京・虎ノ門、撮影:吉川忠行) 

2006年8月に「市民みんなが記者だ」をキャッチフレーズに創刊した市民メディア「オーマイニュース(以下、OMN)」が、24日に完全消滅した。08年8月にマネー情報を中心とした情報サイト「オーマイライフ」に衣替え(社名はオーマイニュースのまま)しており、報道メディアとしてはこのときが事実上の廃刊だった。07年から1年間だけ、OMN編集部記者として記事を書き、多少なりとも編集部員と交流を持ってきた立場から、オーマイニュースの問題点を総括したい。

 OMN側の発表によれば、閉鎖の理由は「世界的な経済状況の悪化」。しかし実際にはOMNは08年10月のリーマンショック以前から株主であるソフトバンクからの資金援助が途絶えて困窮し、6月に社員を全員解雇。8月には「オーマイニュース」を廃刊して報道の看板を下ろしていた。8月以降も広告収入は伸び悩んでいたと聞く。もともと、広告収入に頼るネットメディアの限界は一般的にしばしば言われていたことであり、OMNも例外ではない。ソフトバンクや韓国OMNに資金を頼るばかりで、自前の収益はごくわずかだった。

 しかしOMNの失敗から学ぶべき最大のポイントは、“ビジネスモデル”の問題よりも、OMNが報道メディアとしての問題点である。市民記者の単なる思い込みによって書かれた無根拠な記事がいくつもあった。新聞やテレビで取り上げられた話題に便乗して政治家や政府をなじるだけの、そもそも取材などしていない記事も多かった。取材姿勢や事実関係の正確さの問題ではなく、人としてのモラルを踏み外したものもあった。

 私にとって衝撃的だったのは、「Yahoo! 無線LANスポット、看板にいつわりあり??」(07年6月2日掲載)だ。マクドナルド店内でYahoo! BBのインターネット接続サービスを無料で使えると知った市民記者が、マクドナルド店内で一切飲食をせずにネットを使おうとして断られ、マクドナルドやYahoo!にクレームを行ったとする記事である。明らかに市民記者による企業への言いがかりであり、報道ともニュースとも呼べない。記者もおかしいが、それ以上に、この記事を掲載した編集部もおかしかった。本来なら掲載不可とすべきだったことは言うまでもなく、編集部が市民記者に「報道を勘違いするな」ときつく指導すべき事例だった。

 この例に限らず、OMN編集部は全体的に市民記者に対して過保護だったのではないかと感じる。昨年8月の廃刊直前のことだが、私は編集部で、編集部員が電話をかけている場に居合わせたことがある。市民記者の原稿の事実関係を、記事に登場する機関に直接問い合わせていたのだ。それを脇で見ていた平野日出木編集長が一言。「○○さん、裏取りするなら、ついでに(追加の)取材もしちゃいなよ」。

 一見、市民記者の原稿を丁寧にフォローしているように思えるかもしれないが、これも過保護の一例だ。これでは自立した市民記者が育たない。編集部が裏取りをしなければ掲載できないなら、市民記者は単なる“タレ込み屋”だ。原稿の事実関係に編集者が不安を感じるのであれば、市民記者自身に確認作業をするよう指導すべきだろう。OMNは「創刊宣言」で、「市民記者が書いた記事について『最小限の編集、最大限の事実確認』を行う」としていたが、この発想が間違いだ(そもそも、すべての記事について編集部が事実確認するなど、現実問題として不可能でもある)。

 編集部には編集責任があるが、記者にも執筆者としての責任がある。記者個人が負うべき責任を編集部が肩代わりするより、記者個人の責任を明らかにして、その責任を果たせない記者に対して指導あるいは排除することこそ、編集部が負うべき責任だ。そうでなければ、「市民ジャーナリズム」は、初めからジャーナリストとしてのセンスを持った人しか担えないものになってしまう。

 OMNは、市民記者に報道の理念を徹底させるための具体策が十分ではなかった。問題記者の排除やペナルティーも必要だったが、それが行われた例は極めて少なかった。そのことが、問題記者がのさばり、メディアとしての評価が上がらず、まともな記者が居着きにくいという悪循環を解消できなかった原因のように思う。

 しかし編集部には同情すべき点もある。というのも、そもそも日本版のOMNは創刊以前から報道と矛盾した“色”がついていたというハンディがあったからだ。そのハンディの原因は、初代編集長でありテレビコメンテーターの鳥越俊太郎氏である。【つづく】

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