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PJ: 藤倉 善郎

ガス業者がリンカーンに乗ってやってくる!? ある町の悲しい滞納集金の顛末(上)
2009年03月03日 12:34 JST


プロパンガス料金の滞納が、なぜこんなことに……(撮影:藤倉善郎、写真はイメージです) 

「ガス代を滞納したら、自宅のドアに『天罰が下る』『暴力団に知り合いがいる』などの脅迫的な紙を張られ、ドアの鍵穴に詰め物をされて使用不能にされた上、勝手に水道の元栓まで止められた。どうしたものか」

 そんな相談が、知人を通じて記者のもとに寄せられた。そもそも滞納する方が悪いとは言え、公共料金の集金にしては過激すぎる。これが本当なら、恐喝と器物損壊というれっきとした犯罪ではないか。事実関係を確かめるべく、記者は某地方都市へ飛んだ。現地で記者を出迎えたのは、相談主であるA氏(30代男性)。彼の説明によると、ことの経緯はこうだ。

 A氏は08年6月、それまで勤めていた会社を退職。社宅を引き払ってアパートの部屋を借り、アルバイトを始めた。社宅時代からプロパンガス料金の半年分(計約3万円)を滞納していたため、ガス会社に引っ越し先住所を伝えた上で引っ越した。

「引っ越し後、ガス料金の金額を記した小さな紙が入っていたかもしれないが、よく覚えていない。張り紙が始まったのは、引っ越ししてすぐの7月です。深夜にアルバイトから帰ってくると、部屋のドアに長さ80cmほどの張り紙があり、大きな文字で、滞納料金の支払いを求める趣旨が書かれていた。お金がなかったことに加えて、隣近所にまで丸見えになるようなこんなやり方はひどいと思って、連絡しないでいました。これ以降も張り紙は続き、1週間のうちに2回張られることもあった」(A氏)

 A氏の妻は体調を崩しがちなため、A氏は妻の精神面の負担を考えて、日ごろからインターホンを切っていたという。在宅中にガス業者がインターホンを押しても、妻は気付かない。しかし夫婦ともに、張り紙があったときでもドアをノックする音や呼び声は聞かなかったという。

「今年に入って、私が帰宅すると妻が『給湯器のお湯が出ない』という。いまの部屋は都市ガスで、こちらは滞納していない。都市ガスの会社に電話したが、『止めていない』と言う。しかし屋外に設置されている元栓を見ると、閉められていました。自分で開栓して、すぐお湯が出るようになりましたが」(A氏)

 この頃から、プロパンガス業者の取り立て(?)はさらにエスカレート。張り紙に暴力団の名前が登場するなど脅迫的な文言が含まれるようになり、さらにドアの鍵穴に詰め物をされて、玄関を外から施錠できなくなったという。

「水道の元栓も止められて、バルブが取り外されてなくなっていたこともあった。おかげで、六角レンチを使って必死になって開栓しなければならなかった。鍵穴の詰め物は、2回やられた。1回目は大家さんが費用を負担して直してくれた。2回目は、つい3日ほど前で、いまもそのままになっています」(A氏)

 そこでA氏の自宅へ。実際に鍵穴を見せてもらうと、確かに何か詰め物がされたような跡があり、鍵が穴に全く入らない。屋外の壁にある配管スペースの扉を開くと、バルブがない水道管。隣の部屋につながる水道管には、きちんとバルブがついている。さらに、A氏が保管している張り紙の現物を見せてもらった。全てが手書きで、文言が過激になった最近の何枚かは、こんな調子。

「ガス代金の入金をお願いします。天罰が下る前に入金を」

「本日簡易裁判所にて手続きさせていただきますので、宜しくお願いします(略)尚、私は大阪出身なんですけど最終手だん(ママ)は、知人の、組員(○○組)を同入(ママ)します!! 外車のリンカーンを所有しております!! たぶん逃げられませんよ!!」

 「○○組」の部分には、実在する暴力団名が書かれていた(「リンカーン」のくだりは意味不明)。脅しではなく泣き落としの封書もあった。

「私、B(集金担当者の名前)は、あなた様のガス代金の未納につき、会社(○○○○=実在の地元企業名)に私の責任ということで\31,850の支払いを、強用(ママ)されています。(今月の給料から\31,850-)を、差し引いた金額の給料を支払うということです」

 平成21年1月23日との日付が書かれている。張り紙でもこの封書でも「法的手続き」「差し押さえ」という言葉が繰り返されているが、「裁判所からは何の連絡もない」(A氏)。

 A氏の妻は精神的に参ってしまい、泣きながら電話で知人に相談したことも。「恐ろしくて、ますますガス会社にこちらから連絡を取れなくなった」というA氏自身、頭部に大小2カ所の円形脱毛ができてしまっていた。地元警察に相談したが、「ガス料金を払えば済む話だ」と、取り合ってもらえなかったという。A氏が地元LPガス協会に相談したところ、「それはひどいので、協会に正式に苦情を申し立ててもらえれば対応する。張り紙などの証拠を送って欲しい」との答え。

 記者はA氏に「まずは消費生活センターに相談し、ガス協会にも証拠を送ることを勧める」と助言し、その足で、料金請求の主であるプロパンガス業者の店舗に向かった。社長もB氏も不在だったが、社長家族の証言から、B氏が同社の正規社員であることがわかった。次回、業者側の言い分をリポートする。【つづく】

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