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PJ: 高橋 健太郎

「沖縄返還協定偽造事案」、いわゆる「西山事件」を振り返る
2009年09月06日 07:00 JST


左側「密約」の著者、作家・澤地久枝氏 右側が西山太吉氏 公判報告集会にて、8月25日。(撮影:高橋健太郎) 

【PJニュース 2009年9月6日】2008年9月2日、最高裁は沖縄返還協定に関する外務省の公電を同省事務官から入手し、国家公務員法違反で有罪が確定した元毎日新聞政治部政党長の西山太吉氏が、違法な逮捕・起訴で名誉を傷つけられたとして、国に謝罪と損害賠償を求めた訴えを棄却した。判決理由は、「除斥期間」(民法上の時効)を適用し「密約の有無」には一切触れなかった。

社会的には、「外務省機密漏えい事件」や「西山事件」などと標記されることが多いが「沖縄密約」事案と標記するべきだ。「機密漏えい事件」という文言は「官製用語」。問題の本質を分からなくする。外務省の機密が漏洩したことを問題視するのではなく、「違法密約」を結び、財政法や国会法に反して、アメリカへ「用地補償費」を支払った外交姿勢こそが問われなければならない。

10月27日(火)に東京地裁103法廷で午後、「沖縄密約」情報開示請求訴訟第3回公判(杉原則彦裁判長)が開かれる前に「沖縄返還協定偽造事案」のポイントを時系列的に検証する。

「沖縄返還協定偽造事案」の概略
1972年4月4日、毎日新聞の西山太吉記者と外務省事務官が、国家公務員法違反で警視庁捜査2課に逮捕された。西山記者は、国家公務員法111条(秘密漏洩をそそのかす罪)同省事務官は、同法100条違反(秘密を守る義務)。

国家公務員法違反容疑で逮捕された新聞記者は戦後初。「知る権利」をめぐり、最高裁まで争われたが、1978年5月30日に西山元記者の有罪(1審は無罪)が確定した。事務官は1審で有罪が確定(1974年1月30日・執行猶予・控訴せず)

西山記者の「観測記事」と逮捕
1971年6月18日付朝刊3面(前日に調印された沖縄返還協定関連記事)に掲載した「米、基地と収入で実とる 請求処理に疑惑 あいまいな゛本土並み゛交渉の内幕」という「観測記事」を掲載。

沖縄返還に伴い、米国政府が沖縄県民に補償金を支払わなければならなかったが、「日本政府が、補償金を肩代わりする可能性がある」という疑惑を示唆する内容。

西山氏は、日米政府の機密公電や機密書類の写しなどを外務省審議官付女性事務官から入手し、これらを参考に記事を掲載。入手した機密公電を、ストレート・ニュースの形で報道すれば、ニュース・ソースに累が及ぶと考え、機密書類に触れず「観測記事」の形で報じた。

しかし「日米密約」を、ストレートニュースの形で報道しなかったため、世論を喚起できぬまま10月16日に、いわゆる「沖縄国会」が開会する。

12月13日に衆院沖縄・北方特別委員会で、社会党の横路孝弘議員(弁護士から社会党議員・北海道知事・民主党副代表などを経て衆議院副議長)が密約疑惑を追及。しかし、密約の存在を裏付ける証拠がないため政府が逃げ切る。この後、横路議員は西山記者と接触。西山は後輩の政治部記者を通じて機密公電の写しを横路議員に提供する。

1972年3月27日に、衆院予算委員会で横路議員が機密公電の写しを基に政府委員を追及。佐藤栄作首相・吉野文六外務省アメリカ局長らが窮地に立つ。

1973年4月3日に外務省が女性事務官を告発。4日に女性事務官と西山記者が逮捕される。

4月5日付『毎日新聞』1面(朝刊)に、取締役・中谷編集局長名の「毎日新聞見解」を掲載。「知る権利」を訴え、「女性事務官」に詫びた。4月9日に、西山のみ釈放される。事務官は、4月15日に釈放。

起訴「世論」の流れが変わる
4月15日に西山と女性事務官を起訴する。担当検事は、東京地検特捜部佐藤道夫(盛岡地検検事正・札幌高検検事長などを経て民主党参議院議員・09年死去)。起訴状に「山王ホテル」で「ひそかに情を通じて」極秘公電を入手したという文言を入れる。「計画接近」を示唆した。

同日『毎日新聞』夕刊1面に社告「本社見解とおわび」を掲載。同時に、編集首脳交代が行われ、西山を特別休職にした旨の社告を1面に掲載した。西山は1審判決後「法廷外の責任をとるために」と依願退社。

女性週刊誌は、西山と外務事務官との人間関係を重点的に「報道」。「密約の有無」から「取材方法」の是非に世論の関心が移行。

「公益の代表者」である検察官は外務官僚などを「財政法」や「国会法」違反では捜査せず。刑法上は公訴時効が成立した。

沖縄密約情報開示請求は公判中だが、12月1日に吉野文六氏が出廷するか否かが焦点となる。【了】

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