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PJ: 高橋 清隆

木村定男の江ノ電絵はがきが復活
2010年01月25日 07:24 JST


木村氏の絵はがきが置いてある鎌倉の雑貨店「まどか」(撮影:高橋清隆、1月11日) 

【PJニュース 2010年1月25日】成人の日、遅い初詣でに出掛けた。行き先は鶴岡八幡宮。大好きな鎌倉だが、昨年は遠慮して2回ほどしか来なかった。関東特有の冬の明るい日差しを浴びながらこの町を歩けると思うだけで、自然と顔がほころぶ。

朝寝坊のわたしが鎌倉に着いたのは、午後3時近く。それでも改札を出ると、駅前の歩道は人で埋め尽くされていた。晴れ着姿の女性もあちこちに見える。大抵の人は、すでに参拝を済ませているようだ。わたしは人波に逆らい、小町通りを上る。ここを経由して八幡様にあいさつするのが、鎌倉でのわたしの習わしである。

小町通りの途中、「まどか」という雑貨屋を探す。故木村定男画伯の絵はがきを初めて見つけた店である。あまり来ないうちに土地勘が鈍ったようで、迷う。通りの中程と記憶していたが見当たらず、悪い予感が頭をよぎる。不安になりながら歩を進めていくと、聖なる店は通りの終わり近くにあった。

「いらっしゃいませ」

初老の女性店主が声を掛けてくれる。客はわたししかいない。ざっと見渡して木村氏のはがきがないので、尋ねた。

「木村定男の絵はがきはありますか」
「そう、木村さんの絵はがきが入ったんです。3種類も」

2年前まで『なつかしの江ノ電スケッチ』と題する8枚入りセットだけだったが、「第2集」「第3集」が加わっていた。「第2集」には日傘を差す少女とともに描かれた夏の江ノ電、「第3集」ではチューリップやレンギョウの咲く民家の軒先に現れる江ノ電の絵が印象的である。

「去年、ご長男のお嫁さんが持ってこられましてね」

絵はがきの復活と新作の登場は、知っていた。昨年6月、新宿で開かれた個展で、木村氏のご遺族から聞かされていたからである。

氏の絵はがきが店頭から消えたのは、版権の関係で江ノ島電鉄(株)が“待った”を掛けたためだった。遺族側は「使用料」を支払うか訴訟に出るかの選択を迫られていたが、調整がついたとのこと。物販を所管する江ノ電商事(株)が降りたそうで、ご遺族はほっとした様子だった。「会社から連絡があって、本当に良かったわ。これからまた、お店に並ぶでしょう」と。

木村画伯の水彩画が広く知られる環境が整ったことはうれしい。絵はがきを通して鎌倉の魅力が再発見されればと思う。

参拝の後、晴れた気持ちで市内をぶらつく。長谷寺方面へ向かう由比ヶ浜大通りの商店街は、いつになくにぎやか。和菓子屋やコーヒー店にも人影が見える。すっかり暗くなった長谷駅に入り、電車を待つ。

すると、先ほどからテレビのような音がやかましく聞こえている。見回すと、ホームの真ん中に大型のモニター画面がつるされていた。観光情報や宣伝CMを流している。ホーム上には部活帰りの女子高校生や年配の観光客の集団がいたが、誰一人画面を見ていない。柱をつたう電飾とともに、木造駅舎の風情が台無しである。

江ノ島電鉄によれば、モニターは長谷ほか江ノ島、鎌倉、藤沢の4駅に設置された。広告料金は江ノ電商事に入るそうだ。質問の意図を聞かれたわたしは、「せっかくの雰囲気が損なわれ、うるさく感じる」と答える。「そのようなご意見も頂いております」と担当者。

絵はがきの版権で得られるはずだった収益を、モニターの広告販売で補おうという公算だろうか。わたしは複雑な気持ちで鎌倉を後にした。【了】

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■関連情報
木村定男公式ホームページ
高橋清隆の文書館
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