PJ: 高橋 清隆
【書評】『売国者たちの末路--私たちは国家の暴力と闘う』副島隆彦・植草一秀(祥伝社)
2009年07月07日 08:21 JST
 
【PJニュース 2009年7月7日】 実にまともな対談集である。5年にわたって恥辱的な悪宣伝にさらされた植草一秀元教授の潔白を断じ、彼と対峙(たいじ)した竹中平蔵元金融相や小泉元首相らの売国ぶりを赤裸々に明かす。この手の本が今まで大っぴらに出回らなかったことの方が不思議なくらい。竹中氏が飼われた強大な支配権力が機能してきた証しである。
鋭い眼力の持ち主である副島氏と、わが国最高のエコノミストである植草氏が、小泉・竹中政権から今日まで続く政府のかいらいぶりを例示していく。もちろん主人は米国で、財務省や金融庁はもとより総務省や法務省、警察までが国民を外国に服従させるために働いていることを浮き彫りにする。売国的な政策を批判する植草氏の逮捕も、この線上で起きたと副島氏はみる。
両氏は小泉・竹中政権が行った犯罪として象徴的なものを3つ挙げている。すなわち、りそな処理、UFJ・ミサワ問題、郵政民営化である。りそな銀行は2003年5月17日、当時の竹中金融相の指示で救済された。「退出すべき企業は、市場から退出させる」方針を一転したため、株価は急反発。外資系ファンドがボロもうけしたが、植草氏はこの過程でインサイダー取引があったことを指摘してきた。
旧UFJ銀行は2003年、金融庁による厳しい監査で人為的につぶされるとともに、主要融資先であるミサワホームとダイエーは産業再生機構に供出された。ミサワは創業者の三澤千代治氏が追い出され、トヨタにたたき売られる。今の社長は竹中氏の実兄。漫画のようなてん末だ。
郵貯・簡保合わせて優に300兆円ある国民の金融資産は、米国の「経済安全保障」にとって垂ぜんの的である。混迷を深める米国では、米国債を外国の投資家に持たせることによって経済の安定が保たれる。竹中氏は最近もテレビに出て「郵貯資金を米銀の救済に充てよう」と公言している。
「かんぽの宿」問題が明らかにされつつあるが、植草氏が本書で強調するのは、日本郵政が持つ優良な不動産が狙われていることだ。郵便事業会社と郵便局会社だけで簿価2兆4000億円の不動産を保有し、それらは全国の駅前や一等地に集中する。
竹中氏には、植草氏がライバルに映るのだろう。旧大蔵省財政金融研究所で2年を共に過ごし、共に金融庁のプロジェクトチームのメンバーに登用され、共にテレビ東京『ワールドビジネスサテライト』に出演した。そのたびに竹中氏の方が一緒にいるのをためらった。ごまかしの物言いが見破られると思ったからだろう。
植草氏は竹中氏によりどころとなる理論がないことを、遍歴から説明。学者ではなく「情報の流通業者」と形容する。けだし、名言だ。ゼロ金利や量的緩和についても、見解がころころ変わってきた。
一方、植草氏は2002年から2003年にかけ、竹中平蔵氏の代わりに金融担当大臣に据えられようとした。副島氏によれば、自民党の最高実力者だった青木幹男氏や野中広務氏、森喜朗氏や亀井静香氏など7人が企てたとのこと。しかし、米国に見抜かれてつぶされ、彼らは政治家として生き残るためにしっぽを巻いたという。
大衆はこうした事情をつゆ知らず、「本物」の植草氏が国民の笑いの種にされ、「業者」の竹中氏は学者大臣として出世の模範のように扱われている。ただし、これはマスメディアの宣伝にすぎない。売国者たちの主人である米国はサブプライム崩れ以上、急速に力を失い始めている。副島氏は「ここから先は愛国派が団結して、彼らに追撃戦を挑まなければいけません」と訴える。
植草事件の実態を見れば、小泉政権以降、警察や検察は「公設暴力団」そのものである。本書が店頭に並んだ約2日後、最高裁は植草氏に上告棄却の判決を出し、懲役4月の実刑が決まった。
しかし、落胆することはない。米国の手先として動いてきた者たちの謀略が次々と明らかになり、彼らは間もなくその座を追われるだろうと副島氏は予見する。突然の判決は、壊滅寸前のかいらい政権の断末魔の叫びだろうか。【了】
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