PJ: 高橋 清隆
財政めぐる質問に暴論を繰り返す政府 逆戻りの答弁書、クラウディングアウトの認定…
2009年06月07日 04:28 JST

2日付の答弁書 
景気対策にようやく重い腰を上げ始めた政府だが、その見解はいまだに煮え切らない。財政出動が将来世代へのつけを減らすか否かについては揺れ動いたままで、2日にはわが国の現状では起こり得ないとされる、財政政策の拡大が民間需要を抑制する効果「クラウディングアウト」を認定する始末だ。滝実(たき・まこと)衆議院議員(無所属)への答弁書で分かった。
景気回復と国の借金を減らすには、思い切った財政政策が必要。需要を喚起し、景気の好転によって税収を増やしていく以外ないからである。この点について滝議員は質問主意書を使って政府見解を問い続けてきた。
麻生内閣が景気対策を打ち出してから、政府の答弁書に一層のうろたえが見てとれる。それまで、財政政策の効果一切を否定してきたからである。
政府が4月10日に15.4兆円の財政支出を発表したのを受け、同21日に質問を出した。今回の景気対策によって国債残高は11兆円増えるが、GDPは2%増える。それなら、国債残高のGDP比は減少する。つまり、将来世代へのつけを減らすのではないかと。
これに対する4月28日の答弁は次のものだった。「『国債を財源とする財政出動によって将来世代への国債の負担が重くなることはない』と一概には言えない」。
しかし、これは財政政策が将来へのつけを減らすことを一部認める言葉である。滝議員は5月1日、「国債を財源とする財政出動によって将来世代への国債の負担が重くなる」とも一概に言えないのではないか、とただした。
これに対する答えは目を疑うものだった。「『国債を財源とする財政出動によって将来世代への国債の負担が重くなることはない』と一概には言えない」。逆戻りの答弁は国民と国会を愚弄(ぐろう)するものではないか。
国債発行の知識についても、重大なほころびが見られる。4月21日の質問で「需要不足のすべてを解消することが財政出動で可能なのではないか」と向けたところ、「需要不足のすべてを財政出動で埋め合わせることについては、過度に公需依存となり、民間経済の自立的回復をむしろ遅らせる」と返ってきた。
しかし、デフレスパイラルに陥ったとき、需要不足を財政支出で補わなかったら、経済は果てしなく縮小し、国が貧乏になり、民間経済の自立回復どころではなくなる。「民間経済の自立的回復を遅らせる」根拠を5月1日、グラフを付けてただしたが、無回答だった。
そこで5月22日、再度説明責任を果たすことを要求し、「民間経済の自立的回復を遅らせる」根拠がいわゆる「クラウディングアウト効果(政府による国債の大量発行が民間の資金調達と競合を起こし、金融市場がひっ迫して金利を上昇させ、民間の資金調達が阻害される現象)」を指すものか質問した。
これに対する6月2日の答弁書は驚くべきものだった。「経済政策を行うに当たっては、クラウディングアウト効果についても考慮する必要があると考えている」。
この答弁は、経済学を学ぶものなら誰もが一笑に付すだろう。わが国は1990年以降、国債をどんどん発行したのに金利は下がり続けている(図)。経常収支が黒字の国では、クラウディングアウトは起こらないのだ。
政府が現実を直視し、政策の誤りを認めない限り、国民に豊かさは戻りそうもない。
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