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PJ: 高橋 清隆

「監視タクシー」の恐怖
2009年05月08日 13:28 JST

先日、地方でタクシーに乗ったら、車内に見慣れぬ札が下がっていた。

 「運転手を狙った強盗・暴行事件が発生しているため、防犯カメラを設置しました」

 運転手に尋ねると、カメラはバックミラーの横に付いていた。「事件があったみたいでね。うちの会社は全部付けたよ」と胸を張る。以前、客に脅されたタクシー運転手の話を聞いたことがあった。運転手も不安な稼業である。

 しかし、突然こんな機械を設置するのはおかしい。住基ネットの完成やインターネット規制、ICチップ入りカード、GPS搭載の携帯、ETCの普及と並行する国民監視の一環ではあるまいか。街頭の防犯カメラとともに、映像でも国民を捕捉できる。ドルが崩壊すれば、100兆円超の米ドルを持たされているわが国は、失業者であふれるだろう。一握りの者が民衆を奴隷のごとく使う「人類家畜化計画」も真実味を帯びる。

 運転手さんは車内犯罪防止のためだと信じているようだ。きっと、事件もわざと起こされたはずである。監視社会をつくるために。言おうと思ったが、車内で偉そうに演説をぶつのも気恥ずかしく、二の足を踏む。

 後で調べたことだが、この地区で設置の引き金となった強盗事件は1万2000円の売り上げを持ち逃げされたもの。カメラは1台3万3000円である。採算が合わない。社団法人東京乗用車旅客自動車協会によれば3月1日現在、同協会加盟380社で約2300台がカメラを設置している。警察庁広報室に問い合わせたところ、車内犯罪防止のため、タクシーを抱える全国の協会に「防犯カメラの設置が望ましい」と通知したと答えた。

 どうせそんなことだろうと予想していた。車に揺られながら、一人悶々(もんもん)としているのが無意味に思えて、口を開いた。「運転手さん、これは国民を監視するためだと思うんです。もし大不況になって強制労働や徴兵制が始まっても、これじゃあ逃げられません…」。一通りしゃべったら、運転手さんもまんざらではなさそうだ。

 「そうかもしれんねえ。全く世の中、どうなるんだか」。すっきりした気持ちで支払いを済ませ、車を降りると気付いた。

〈全部撮られた!〉

【了】

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