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PJ: 高橋 清隆

無心に太鼓打ち、自分らしさ保つ=未来太鼓道場の生徒たち
2009年04月11日 05:14 JST


熱がこもる練習風景。「中級Bクラス」には3年以上通う道場生が多い。この日は21人のうち18人が女性(3月、撮影:高橋清隆) 

高層ビルが立ち並ぶ西新宿の一角。幻覚的なペイントが施されたスタジオの中、太鼓の大きな音が響く。やぐら太鼓を囲むように20人ほどが輪になり、それぞれ締め太鼓や桶(おけ)太鼓を打ち鳴らす。先生の手拍子に合わせて足を上げながら、「ハッハッハッ」と勢いを付ける。

 太鼓の重い音はおなかに振動し、スチール棚も「ジンジン」と音を立てる。冷え込みの続く3月下旬の東京だが、生徒の多くはTシャツ1枚の格好。部屋は熱気に満ち、背中に汗がにじむ。

 未来太鼓道場は15年前、「誰もが太鼓を習える場を」と代表の小林政高(まさたか)さん(43)が東京・中野に開いたのが始まり。無心に太鼓をたたくことで自分らしさを表現する場に成長した。

 現在は新宿や町田、柏、横浜、大阪など8カ所で合わせて約400人が練習に励む。その成果は福祉施設や学校への訪問演奏のほか、年1度の発表会で披露される。本番2カ月前にもなれば、1つの目標に向かってチームの士気は上がる。

 入門は年齢や性別、国籍などを問わないが、道場生の約8割が女性だ。特練クラスに所属する藤田真葵子さん(31)は、入門して6年を過ぎた。大手建設会社でOLをしながら、月4回道場に足を運ぶ。高校時代にブラスバンド部で打楽器を担当し、ライブを見て太鼓に魅了された。地域の広報誌で太鼓体験教室の記事を目にしたのが、門をたたくきっかけになった。

 昨年、最上級の「特練クラス」に昇格した。2時間の練習は前半が基礎、後半に曲をやる。最近は横打ちのやぐら太鼓にも向かう。「今は特練クラスのスピードについていくのがやっと。でも、本番で演奏するときは、めげずに続けてきてよかったと思います。観客からの声援と一緒に盛り上がる気分は最高です」とすがすがしい表情を見せる。

 藤田さんのもう1つの趣味は走ること。マラソン大会の沿道で応援太鼓をたたくのが夢だという。

 道場はあくまで素人を対象にした教室だが、代表の小林さんは太鼓のプロ集団「梵天(ぼんてん)」を主宰する。3月はニューヨーク公演をこなし、東京ドームでのWBC開幕式では録音演奏が流れた。教えることと実践することが、小林さんの太鼓活動の両輪だ。

「もともと太鼓は地域の祭りのために地域の青年部が子供に教えるものと、お年寄りが集ってやるものに分かれていました。浅草に『馬簾(ばれん)太鼓』というチームがあって、練習に誘われたことで発想が広がりました」

 小林さんが率いる「梵天」のメンバーは、未来太鼓道場の初期の教え子が主力になっている。これからも世界的な太鼓奏者が現れるかもしれない。小林さんに将来の夢を尋ねると、意外な答えが返ってきた。

「一般の人が日常生活に張りを与えるものとして、太鼓を楽しんでもらえればいいと思っています。その点では、すでに夢はかなっているのかもしれません」

 ストレスの多い現代社会。摩天楼の谷間に流れる太鼓の響きは、癒やしのメロディーにも聴こえた。【了】

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