PJ: 高橋 清隆
国家の分断促す地方の反乱報道(下)
2009年03月12日 09:38 JST
(中)からのつづき。
未来の生活支える公共事業を止める
地方の反乱に光を当てる報道は、地方交付税や補助金の廃止、税源移譲を促す。富の再分配を支えるこの仕組みを壊していくのは、国を滅ぼす道である。
道路や橋、ダムや堤防などは未来の産業発展の基礎となるインフラだが、住民の将来生活を規定する下部構造(インフラ)でもある。「公共事業は景気対策にならない」「公共工事は談合ばかり」などとマスコミが宣伝してきたのは、日本を衰退させたい外部勢力の代弁にすぎない。公共事業の投資乗数は依然高いし、談合の摘発は米国からの『年次改革要望書』に毎年書かれてきたこと。
今回の負担金不払い表明は、直轄事業を滞らせるものだが、「反逆首長」が催促する「三位一体の改革」は地方交付税の廃止を伴う。この縮小を受け、「単独事業ではできない」と嘆いてきたのではなかったか。それでは、何を財源に公共事業をするのだろう。
「税源移譲されれば、単独で」と言いたい人もいるかもしれない。しかし、直轄の負担金を払う意志もないのに、数倍割りの悪い単独事業を吝嗇(りんしょく)首長がやるだろうか。地方分権論議は、公共事業をままならなくして確実に将来発展の芽をつぶしている。
地域間対立につけ込んでの収奪と国家解体
地域同士の分断は、国際金融資本の望むところでもある。地方公共団体の懐具合は、中央の庇護(ひご)から離れるにつれ、差が開きつつある。ここが彼らの狙い目である。
先ほど税源移譲について少し触れたが、これこそ最大の格差要因になる。すでに対立は始まっている。国税の所得税の税率を引き下げ、代わりに地方税の個人住民税の税率を上げるなどしたため、首都圏を中心とした12都県が「黒字」、ほかの35都道府県が「赤字」になっている。法人2税の一部を国税に振り替える「税源交換」についても都市圏が反対、地方部が賛成と火種になっている。
総務省は2007年12月に自治体の破たん基準を定めた。地方分権委の提言に沿う形で、病院や地下鉄などの普通会計以外の財務状況も反映した「連結実質赤字比率」を設定。4つの指標を基に、都道府県は赤字比率15%以上、市町村は30%以上(当面は40%以上)で破たんとする。わざと線引きをして、落第する地方が出るのを待つようなものだ。
地方債の利率にはすでに格差が生まれている。2006年8月に公正取引委員会が「統一条件交渉方式」の廃止を打ち出したのがきっかけである。米国の保証会社は破たん法制の整備と地方債のデフォルトリスクを見越して、すでにわが国に上陸している。都内に駐在事務所を置き、投資環境の調査を始めているという。保証料を取るのが目的と思われるが、もし破たんすれば、わが国の自治体が外国の手に渡ることになる。それだけに、マスコミが対立と危機をあおれば、金融資本は労せずして住民の血税を収奪できる。
自治体が債権者の手に渡ることなど、想像できないかもしれない。しかし、金融資本による国家解体はすでに起きている。あなたも見ているはず。旧ユーゴスラビアがそうだ。チトー大統領の求心力が失われた1980年、米国を中心とした海外の債権者は国際通貨基金(IMF)の下で強制的な通貨切り下げを行い、激しいインフレを引き起こした、連邦政府は予算を債権国への利払いに回すため、共和国と自治州への支援を中断した結果、分離主義運動が加熱。各地域が連邦を離脱していった。国際金融資本家が心に描くわが国の将来像ではないか。
祖国の分断を喜ぶ大衆
メディアの影響で、ほとんどの国民が地方分権と道州制は避けて通れない道と思い込まされている。道州が税金や法律を決める権限を持てば、わが国を虎視眈々(こしたんたん)と狙う外国を喜ばせるだけだろう。国際金融資本がぬれ手で粟(あわ)でもうけることは先に述べた。彼らの満足は、地域住民の所得低下と社会不安で賄われるだろう。
国際企業の誘致を見込んでの経済政策も同様だ。法人税の低い地域に企業は集まるとの考えから、国内の各道州は値引き合戦を行い、その結果、無税化に向かうだろう。前からある国内企業と違い、売り上げの多くは外国に流れるはずである。最低賃金も引き下げ合戦が展開されるだろう。これは、住民の生活が世界の貧困地域と競争にさらされることを意味する。われわれの子孫が豊かに生活など、どうしてできようか。
各道や州はそれぞれ違う国際金融資本がバックに付くだけでなく、国交や軍事協定など、違う外国勢力の介入を受けるようになるだろう。と言っても、戦火を交える以前に不安感を利用してしゃぶり尽くされると思われるが。
地方分権と道州制の議論は、外国勢力のためにわが国を分断する戦略なのは明らか。ところが、マスコミが支配装置であることを知らない大衆は、地方の反乱に快哉(かいさい)を叫ぶ。彼らが反論を聞かされる機会もなく、みすみす分断を許している。【了】
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