PJ: 高橋 清隆
ニュース研究(7) 救急たらい回し報道の先に待つもの
2008年12月23日 09:52 JST
この1年、救急たらい回し報道が盛んだ。昨年8月、奈良県の妊婦が9つの病院で受け入れを断られ流産したニュースを皮切りに、最近では10月と11月に都立墨東病院や杏林大病院などがかかわる搬送事故が報じられた。痛ましい医療の現実を伝えるニュースは一見正義に満ちているが、こうなった原因と外国の要求を一切伝えない報道は、国民をさらにむごい医療環境に導いている。
救急患者のたらい回しは医師不足によるものだが、これを招いたのは小泉構造改革による診療報酬のマイナス改定と医局制の廃止である。2002年からの大幅な診療報酬の引き下げの結果、診療所の閉鎖が相次ぎ、自治体が経営する公立病院も5年間で300カ所減った。ところがマスコミは小泉改革を無駄が減らせると礼賛し、医師の名義貸し問題を大々的に取り上げて医局制を廃止に追い込んだ。その上でのたらい回し報道は、外国に新たなビジネスと雇用先をもたらそうとしている。
総務省消防庁と厚生労働省が救急たらい回しの改善策として示しているのは、夜間や休日を含めた医療機関の受け入れ状況を判断できる情報システムの構築。米国が2007年に提出した『年次改革要望書』には、「医療のIT化の促進」が明記されている。
診療報酬の引き下げに加え、医療費予算の削減は医療機関の弱体化を招いてきた。そこで米国は日本政府に、病院の株式会社経営と業務のアウトソーシング化を認めることを迫っている。行政が十分な医療費を負担しなければ、さらなる医療崩壊をもたらし、救急車の有料化や時間外診療の特別料金化を招きかねない。そこに民間の保険会社の新たな市場が用意される。
このような未来は、患者にとって地獄だ。すでに株式会社経営が認められ、民間保険が主流となった米国の1人当たり医療費は世界一高い。株式会社病院の診察費は公立病院の10倍。がんで病院に行けば初診料は30万円を超え、心臓発作でバイパス手術を受ければ治療費と救急車代で約1200万円請求されたとの報告もある。一方、WTOは保険制度の総合評定ランキングで、わが国を1位にしている。
原因に触れない救急たらい回し報道が促す究極の政策は、外国人の導入である。舛添要一厚生労働大臣は全国知事会との意見交換で外国人医師の導入について触れ、「免許を取ったらやるべきだ」と答えている。在日米国商工会議所の『ACCJビジネス白書 相利共生』(2006年刊、原題は“Business White Paper: "Working Together, Winning Together")は、10−20年後日本で医師や看護師の深刻な不足が予測されるとして移民の活用を要求している。具体的には「人的資源」の章の「提言」に就労ビザ給付の簡素化を図る対象として4群を挙げており、そのうちの1つは次の通りである。
「○医師、看護師、看護助手、高齢者介護助手などの医療従事者」
医療費削減により医療従事者たちの報酬は減らされる一方だが、その末に物価水準の低い国や地域から来た外国人医療労働者との価格競争にさらされようとしている。これは診る側にとっても診られる側にとっても地獄ではないか。
マスメディアは医療の分野でも世界の覇権者の意向に従って真実を隠し、その国の民衆をだます役割を果たしている。【了】
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