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PJ: 池野 徹

自然のワイルドさに、昆虫動物のシャープさに、ファッシネートされる日々。
2009年07月22日 07:33 JST


"Silk Tree" (撮影;池野 徹) 

【PJニュース 2009年7月22日】先日、広告代理店のかつての仲間たちに会う1年に1度のパーティに出掛けた。近況を述べるくだりになり、都会からエクソダスして、田舎に住んでいる話をした。しかし、「似合わない」「イメージがわかない」などと、数人に言われてしまった。言われた本人も、確かに、広告代理店時代は、都会人の典型であったし、東京のど真ん中に住み、クルマを走らせ、秒刻みで仕事をしていたのだ。15秒のコマーシャルをクリエイトするのに、夜昼関係なく、自分のやりたいと言う欲望とともに、全神経を尖(とが)らせて、叱咤激励(しったげきれい)していた自分がいた。

「THINK BIG」の看板を掲げて、海外を飛び回っていた。新しもの好きで、人より先に情報は手に入れていた。アイディアも、人が1つ考える間に10は出せる自信があった。そのスピード感が快感だった。その分その強引さが周りの連中に迷惑もかけていたと思う。十二指腸潰瘍(かいよう)をやり、太い胃カメラを飲まされ、恐怖の見返りに、1日5箱100本のタバコを断ったのも懐かしい。

そして、160万もするコンピューター、MAC-2FXを武器に独立して、世田谷のど真ん中に、ホームオフィスを開いたのだ。仕事の流れは、全くと言うよりより、過激さを加えて行っていた。中庭と周囲に竹林に囲まれていたが、他の樹木も周囲に繁茂して、隣近所から区役所ご注進とか、勝手に切り落とされたりした。夜中の仕事でも、便利な環七と246に面していたので何の不自由も無かった。

しかし、はっきり言えた事は、その空気の悪さと、クルマの喧騒(けんそう)音であった。近くの本屋のおじさんは、毎日真っ黒になる舗道の掃除が日課だった。そんなオフィスに見切りをつけたのは6年前だった。もちろん、語るに尽くせない東京脱出劇は、持っていたのである。若い頃(ころ)に、マンションを買い、青山の高層ビルで仕事をして行く中で、あの灰色のビルに対する嫌悪感が芽生えていた。都心は仕事をする所だが、住む所じゃないと、千葉県に脱出したのだった。

現在、千葉市から茂原市の粟生野(あおの)と言う所に移り住んでいる。地元の人が言ってくれたが、この粟生野は、特に不便な所ですよと。まさに、バスが1日6本、土日は走っていない。1キロ先のセブンイレブンへは、歩くかチャリンコ。わが愛車は修理中。移り住んだ家は一軒家で、3方を自然の樹木の林に囲まれている。だから選んだのだけど。出迎えてくれたのは、ドアを開けるとハアリ君たちだった。家の周りはケムシ君の真っ盛り。窓ガラスに、ひょうきんなアマガエル君。

そのハアリの大きさは都会のアリの3倍、叩いても平然と歩き回る。ドアを開けたとたんにさーっと引く。ケムシは、よく見るとその羽毛見たいのが、体を尺取り虫のごとく動かして、除けるとポトンと落ちるが、その逃げ足の動作は速いのである。その動きは滑稽だが、見透かした様に逃げ足が速い。目の前のウインドウにカエルがへばりついている。2階のこの高いのに悠然と小虫狙いなのだろう。その足の吸盤を使い悠々と這っている。フロアを何やら走る黒い塊、追いかけると何とクモである。でかいヤツだ。その十肢を伸ばすと15センチにもなる。これがまた、素早い動きなのである。

この、ハアリ、ケムシ、カエル、クモを見ていると、今ここに人間と言う生き物がいるから眼の前に登場して来ている感じだ。彼らは、人間様を認知しての動きに見えるのだ。都会から来たヤツになんか、我ら自然で育ったモノには、あんたなんかに捕まる訳は無いよとばかりの身のこなしに見えるのだ。こちとらも年を食ったから、動きは良いとは言えないが、自然育ちの彼らのスピード感にやられっぱなしなのだ。

そして、今は、ケムシがぱたっといなくなり、チョウチョウとガたちが仲良く、植えた花の周りをハタハタと飛んでいる。続いて、トンボが多くなって来た。麦わらトンボだな。これは、人が近づいても逃げもしない。人に慣れてないらしい。当然彼らは、メイクラブを目前で堂々と展開する。おおらかなものだ。毎朝林の中から、「ホーホケキョ」とウグイスが朝夕と名演奏の良い声を聞かしてくれる。

ほかに、名も分からない鳥たちの嬌声(きょうせい)が聞こえるが、その姿はなかなか見る事はできない。陽が落ちるとカエルの大合唱だったが、虫の声と、カナカナ蝉の声がした。都会で見る、イヌネコのたぐいが見ないのが不思議だ。餌にありつけないのだろう。草刈りに来たおじさんに聞くと、この辺は、ヘビもいるし、タヌキもいると言う。

こうまで書くと、都会の奴らはまず遊びに来てくれないだろうなと思う。しかし、東の空から朝日が樹々を通して射して来る、朝焼けもあるし、目前の大きな「ネムノ木」の花が今盛んで花の先端がグラデーションで不思議な美しさを見せてくれる。日中の南側の樹々の風に揺れる様は、潮鳴りの様だ。千葉の平地は島国的で抜けが良いから、風が吹く。FMのウエーブもよくキャッチ出来てざわめくサウンドとミックスして心地よい。西日の夕焼けは抜群だ。こんなに、ゴールデンタイムを迎えて良いものだろうか。日替わりの夕焼けにワインを嗜みながら、妖怪が現れてもおかしくない夜の帳へ引き込まれて行く。

秒刻みの世界から、時間感覚の世界へ移行してしまった現在だが、パソコンに向かえば、都会の喧騒と同じ世界へ簡単に戻れる。一時、新聞とテレビをオフにしたが、今は戻って来て、テレビ映像の煩(うるさ)さと、誇張しているコマーシャル、芸能人、評論家、政治家の喧騒とに接していると、本来の人間部分に遊離してるのが見えて来るから不思議なものだ。小泉首相以来の国政選挙の喧騒が始まろうとしている。

遊離している人間たちの何とかったるい事か。自然世界の中で見る日常の営みの方が遥かに、鋭敏で、感性があり、自然と動物本来の接し方、生き方を見る気がしてならない。デジタル化したとはいえ、テレビ箱の中で見る映像は、人間の恥さらしと滑稽さが混じった娯楽箱のビジュアルに見えてくるのはオレの妄想だろうか。

いちばん不便で、いちばんオフな状況に置かれ、自然とその中に生息する生き物たちを身近に接すると、そのナチュラルな動きと古来よりあった生き方に出会う事が、良く言えば自然体に戻してくれる。悪く言えば、世俗離れした世界へ行ってしまいそうである。

「ふるさとは遠きにありて思うもの、そして悲しくうたふもの」

【了】

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PJ 記者