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PJ: 池野 徹

スーパースターは、時代に逆らい、時代と寝る。「裕次郎」の残したもの。
2009年07月07日 08:44 JST


"I Waiting For You" (制作:池野 徹) 

【PJニュース 2009年7月7日】1956年(昭和31年)1月23日、芥川賞に選ばれた一人の男が登場した。石原慎太郎である。当時、一橋大学の4年生だった。「太陽の季節」は、湘南の若いガキたちの女遊びを描いた小説で、その道具立ては、別荘、ヨット、クルマが登場するブルジョワの典型だった。「陰茎を障子にぶすっ」この表現は、戦後まもない、自由が目覚めだした日本の社会の価値観まで「ぶすっ」と変えてしまった。この無軌道な若者の生き方への嫉妬と羨望が、何か旧(ふる)いモノを打ち破り、新しいものを生む兆しになる「太陽族」という言葉が生み出された瞬間だったのだ。

そのモデルと言われたのが、弟の石原裕次郎だった。「太陽の季節」で、ガキのインストラクターを務め、そして、プロデューサーの水の江瀧子と慎太郎により映画俳優としてその地を活(い)かせる事になった。「狂った果実」で主演を演じるや、裕次郎の人気は爆発した。良家の童顔お坊ちゃんが、身長182センチ、また下90センチのしなやかなボディを生かし、スクリーン上で、典型的な、悪の愚連隊、陰謀輩を、鉄拳でやっつける姿が、カッコ良かったのだ。

1957年には、立て続けに映画主演を果たし、「嵐を呼ぶ男」でピークに達する。当時の映画館は、ドアを閉めないで上映したほどで、入場料は、係がダンボールの箱に足で踏みつけながら押し込んだと言う。映画館を出る男たちは皆、肩を怒らせ、足を投げ出し、裕次郎になりきっていた。「アイツは、ただ歩くだけで絵になる」と勝新太郎は言っていた。凄(すさ)まじい裕次郎ブームを起こす。また、歌う事で映画とともに大ヒット曲を輩出したのである。当初、裕次郎は記者の質問に応えて、「映画俳優なんてオレは一生やるつもりはねえ」と豪語していた。しかし、その人気と資産には、勝てなかった。

事実、裕次郎は演技など大根で、自然に振る舞っていた良さが新鮮さを呼んだのであり、歌も人前で歌えないほどのシャイな男が、どんどん前へ出て行かざるスターに、上り詰めた事で、大きな運命を背負ってしまったのだ。やがて、映画会社の協定を破り、独立プロを創る。時の、三船敏郎、高倉健、勝新太郎らと交流して、文字通りスーパースターとなったのである。しかし、その代償は、事故、病気を繰り返し、ついにガンに取り憑かれ、スーパースターの運命である、早すぎる生涯を送ってしまったのだ。

裕次郎の23回忌が、何と国立競技場に寺のセットを創り行われた。エンタテインメントの世界だからそれで良いのかもしれないが、いみじくも兄の慎太郎が言っていたが、「裕次郎を静かに寝かしといてやれ」と出席しなかったのはうなずける。しかし、慎太郎の障子への「ひとさし」が、裕次郎を生み、石原兄弟の運命がスタートして、現在の此処(ここ)まで来ている。政治の世界に飛び込み、裏切られ、日本の総理大臣をあきらめた男、慎太郎は、東京都知事として、東京オリンピック招致に打ち込んでいる様に見える。息子たちも政治家になり、慎太郎の果たせぬ夢の総理大臣の椅子(いす)に近づいている石原伸晃もいる。

旧い因習にアナを開けた男、慎太郎が、ここまでの石原一族を想定しただろうか。慎太郎が演出して、裕次郎が演じた、この石原一族が大衆に受け入れられたのは、良家の出身と品性。小説家、俳優のアーティストとしての純粋性、スターなるが故に、公に晒して来た自分たちの生き方、それらを看破されてる、いい意味での透明性、解りやすさと安心感が一般大衆を惹き付けて来た要素だ。

近ごろ、芸能界、異業種界から、政治を目指す、ある意味スター性のある輩が存在するが、己の運命を先取り、先読みし過ぎてはいないだろうか。もっとも、何をやろうと勝手だが、大衆を計算するのではなく、自然発生的に支持される、本来的なスター性を見つめ直したらと思うし、それからでも遅くは無いだろう。その本来のスター性があるなら民衆は受け入れてくれるだろう。プレスリーも、ひばりも、マイケルも、そして、裕次郎も、昭和の時代の大衆に生きて、大衆に生かされたスーパースターだったなと思うのである。

”一の子分、渡哲也の「裕チャーン」もテレまくっているだろう。”

【了】

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PJ 記者