PJ: 池野 徹
ウグイス嬢と、カエル君と、ケムシ達が、迎えてくれる朝。
2009年06月23日 09:11 JST
"Good Morning..." (制作/撮影:池野 徹) 
午前4時過ぎに東の空に朝日があがり、樹々(きぎ)の間から透明感のある光が漏れてくる。ウグイスの鳴き声が聞こえだす。ウグイスの姿は見る事ができない。微風に、樹々の林が絶えず揺れている。映画「ブロウアップ」のワンシーンだ。すり抜けて、鳥鳥の声が響く。ポストに新聞を取りに行く。玄関のドアのに、アマガエルがぴったりと張り付いている。二階のベランダの手すりにも鎮座している。キョトンとした眼で。足下には、ケムシが這(は)っている。その数にあ然とする。棒でよけると丸くなって結構逃げ足が速い。洗面所の床にハアリが数匹現れる。都会のアリの3倍はある。田舎の実感がわいてくる。
陽の光が南側の窓から燦々(さんさん)と入ってくる。5月。庭の樹々は、名前が分からないが、まさに萌(も)えるような緑がいっぱいだ。緑の香りが顔面から浴びている感じになる。西側の遠い田んぼのかなたに、西陽が部屋に斜めに入ってくる。まさにゴールデンタイムだ。田植えの終わった田んぼの水に輝きを落として、朝と同じ冷気が漂い始める。
そして6月に入ると、朝には水分を含んで朝霧が時々林を覆う。墨絵のごとき景色がまじかにある。あれだけのケムシどもがぱたりといなくなる。代わりにふ化したチョウチョウがやたらとつがいで飛んでいる。カエルは健在で、その鳴き声が夜中じゅう聞こえてくる。軒下にクモが現れて銀糸の巣をつくりはじめる。大きなヤツも部屋に入ってくる。はたこうとするとさっと身を縮めて小さくなり逃げ足が速い。そして、麦わらトンボが現れた。のんびりしていて、人を恐れない。庭の草木は凄まじい勢いで天に向かって突き進んでいる。驚いたのは、あの緑濃い葉の一部が、モミジとか色付きはじめて来た事だ。まじかに自然に接していると、その日その日に自然の移り変わりが見える事だ。庭のステージで演じられる樹々の変化は、デジタル的、映像を見るより迫力があり、その動きに興味が尽きる事は無い。
野の小さな雑草の花とともに、紫陽花(あじさい)が鮮やかなアオ、ムラサキ、ピンクに染まり、菖蒲たちが華やかにしなだれかかって道ばたの一角を占めている。田んぼの稲は、グリーンの絨毯に変わりつつある。黄金の秋の収穫時が期待できる。朝晩の気温は落ちて涼しい。緑の空気に似合うのは、唯一、人工のサウンズとしては、音楽だ。FMを朝早くから聞きながらマイフェバリットなサウンドが自然の充満した中をすべったり、抜けたり、突き進んだりするのは、快感である。しばらくは、自分自身のフレームで切り撮る自然の実像に意欲が湧く、あまりにも自然なる田舎の世界である。
「アートはネイチュアを越えられるだろうか」
【了】
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