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PJ: 池野 徹

「イナカモン」の都会人より、「カッコイイ」田舎人になりたい。
2009年05月29日 07:35 JST


"Hello !" (撮影/制作:池野 徹) 

さりげなく日常に歩いている街並みは、特別には感じないかもしれないが、自分の住む街であると、季節による移り変わりはあるが、安心感があったりして、夜などもその灯(あか)りや、匂(にお)いにほっとするものである。幼い頃(ころ)過ごした街並みに、成人してから尋ねた時に、その道幅が広いと思ってたが、本当に狭い街並みだったりして、幼き頃との目線の違いにびっくりした事もある。記憶の街に、角のタバコ屋さんがあったりするとうれしいのだが、今は全く様相を変えた街並みを歩くとしらけると言うか、寂しい気がするものである。

 初めての土地に行った時に、その街並みは、通り抜けるのが新鮮に感じられる。外様的に歩いている自分だが、その街に生活している人たちが街並みになじんで生活しているのがわかるからだ。パリのサンジェルマンで、若いカップルが、絡みながら珈琲テラスで語る横で、盛装の老人が杖(つえ)を石畳に押しつけ居眠りしてる。ベニスの狭い路地の間から運河の橋を抜ける、ゴンドラの歌い手の声が響いてる。見上げると、黒い下着がビルの間にぶら下がっている様とか、ニューヨークのハーレムのパーマ屋さんで、黒人のおばさんがでかい声でこちらを怒鳴る様とか、少し不安があるが、期待感が上回り、エキゾチックにいっぱいになれるから楽しい。

 東京の都会のど真ん中に長く生活していたが、仕事の中に埋没して、通り過ぎていた街並みだが、状況の流れもあるが、ビルの谷間におさらばして、地方都市千葉に来たが、少しは、幼き頃のふるさとの匂いが感じられて、人と、新鮮な食べ物に恵まれて、心がほぐれるのを感じていた。そして新しく引っ越して来たのが、三方を緑に囲まれた、朝日夕日が木々を通して感じられる環境に来ている自分がいるが、はやい話、カエルと、ケムシと、ハアリに迎えられた田舎に来ている。街並みなどほど遠い、田んぼの畦道(あぜみち)並みに現在いるのである。

 地方都市、茂原市に転入の挨拶(あいさつ)に行った。駅から降りると、地方都市にありがちなスーパーが、ちょっとしたデパートがあり、同じパターンのにぎわいがと思ったが、意外とひっそりしていて、市役所に向かって歩き出す。その街並みはあるが人が歩いていない。昭和の初めの頃のような旧(ふる)い商家がある。倒れそうだが、雨を凌(しの)いでやっと建っている感じだ。風情があるが、ぽつんぽつんと街並みにはさまれて、旧家が残っている。米屋さんとか、蕎麦屋さんだ。

 通りすがりに聞くと、「若い者がいなくなってね」と当たり前みたいに話していた。その通りには、魚屋さん、八百屋さんの看板だけが残ってるシャッター街になってしまっていたのだ。まだ昼間だと言うのに、ゴーストタウン状態だ。「駅の近くと、夜の飲み屋さんくらいかな、にぎやかなのは」と、雑貨屋の主人が話してくれた。不思議と、美容院とか、生け花教室みたいなところに華やかさがちらりと見えていた。

 目指した茂原市役所に着くと、市役所と言うより、10階建てもありそうなホテルである。エントランスからしてまさにホテルなのだ。中に入り、案内のおばさんに、「この建物は元何と言うホテルだったのか」と聞いた。すると何か返事が無い。転入手続きを済ませて街の人に聞くと、これはホテルじゃない。先代の市長が建てた、れっきとした市役所だと言う。「エッ」と驚いた。続けて、しかし「評判が悪くてねバブルの産物ですよ」と言う。そりゃそうだ。お膝(ひざ)元の街並みはゴーストタウンなのに、威風堂々の市役所なのだ。さすが驚いたのである。市役所通りのクルマの多いところに、マルチのスーパーマーケットがあった。街の中心からずれて、外へにぎわいが逃げているのである。

 これは、驚くにはあたらないのかもしれない。地方都市の住宅街も、土地の空き地はあっても家が無い。あるいは、空き家が増えているという事だ。若者が流失、老人だけの過疎地になって来ている。都会から田舎へ来てわかった事は、地方都市のゴーストタウン化、その土地に住み着いて生活する人たちの過疎化が進んでる事だ。世間で地方の時代と叫ばれてるが、地方の生活状態の本質は、報じられていないし、根本的な問題がそこにあるのは間違いないと思ったのである。

 軽小短薄、コンビニ感覚の人間になったものは、戻す事ができないのだろうか。時は、携帯端末が表す様に、超便利社会へ突き進んでいるが、エコ社会などとカッコはつけているようだが、生まれ来る人間への医学的介護不足、年老いて行く年金老人蔑視の格差社会が進行しているのが実情ではないだろうか。都会のど真ん中で便利さに埋まっていた自分が、地方の田舎の不便さの中で過ごす事への興味が、新しい発見として感じて行きたいと、生活して行くという体験を、素晴らしい自然の中で、何処(どこ)まで続くか見つめて行きたい。

「ケロケロ ムシムシ ブンブン」

【了】

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