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PJ: 池野 徹

「金箔」は再現できるのか。文化財をデジタルで=フォト イメージング エキスポ 2009
2009年03月30日 05:11 JST


『国宝 洛中洛外図屏風』(上杉本)狩野永徳 筆、(原本)所蔵:米沢市上杉博物館(撮影:池野徹) 

時代が進むと、その生活度、文化度、欲望度が、技術革新にともない向上するたびに、より高度になっていく。大昔は、たった一つしかない貴重なものが、技術により複数のものに展開できるようになる。それにより、人間生活に快適さとか、便利さとかが広がっていく。これは健全なる文明度の進歩であるが、しかし、一つのものが、二つになること、三つになることで、一つの大切さが尊重されているうちは良いが、大量に生産されたものの中に、オリジナルでないものが作られて、偽物が増えていく要因にもなる。これも自然の流れかもしれないが、文明文化度が進んでいくと麻痺(まひ)されてとんでもない偽物が横行することにもつながっていくのだ。

 生活の必需品といえる生産物、食料品の産地偽装品が平然と流通する。偽装建築が立ち並ぶそのモラルが低下してることに気がつかないで進行していく世の中だ。もっとも、宇宙衛星だか、核弾頭弾かさえ分からない世界情勢だ。ちまたの生活に、コピー品、ブートレグ、模造品、複製品、デッドコピー、レプリカ、フィギュア、ミニチュア、写本、贋作(がんさく)と、挙げたらきりのないくらい氾濫(はんらん)しているのである。すべてが悪とは言わないが、真贋を見極める眼を問うのは不毛に近い世の中だ。そんな中、デジタル技術の写真アート分野での高度な複製品表現を見ることができた。

 3月26日から29日まで、東京ビッグサイトで行われた「フォト イメージング エキスポ 2009」。各カメラメーカーを始め、写真関連企業がブースを連ねて、近ごろの写真ブームといえるほど観衆を集めていた。その中で、ジェネラルには、新製品をはじめ、デジタル対応の製品群がラインアップされていたが、キヤノンとニコンの両雄が同じ展示をしていたので興味を引いたのである。それは、日本の古来からの文化財としての、日本画の襖絵(ふすまえ)、屏風(びょうぶ)絵の複製品がデジタルアウトプットで表現され、その精度を競って展示されていたのだ。ニコンの担当者に直接会えなかったので、キヤノンの担当者に聞いてみた。

 キヤノンでは、文化財未来継承プロジェクト「綴─TSUZURI─」として、後世に貴重な文化財を伝えていくために、海外へ流失した作品の里帰りのために、日本を代表する水墨画作品のために、歴史教育の現場で生きた教材として活用されるために、取り組んでいるという。そのために最新のデジタル技術を投入している。

 文化財を35mm判フルサイズ2110万画素のデジタル一眼レフカメラ「EOS-1Ds Mark III」で分割撮影し、パソコンで合成。そのデータにカラーマッチングを行い、12色のインクを使用する大型インクジェットプリンター「imagePROGRAF iPF9000」で出力する。問題は文化財の特徴の「金箔」部分だが、金箔部分のマスキングをして、糊版をつくり、それに箔工芸作家により、京都西陣の伝統技で金箔をたたいて仕上げていく。和紙にプリントされた作品を経師により表装される。つまり、デジタル技術と伝統工芸の人間技により完成するのである。プリンティングにインクジェットの金色粒子ができないために、人間技が必要な段階だ。

 出来上がったプリントは、見た目に遜色(そんしょく)はないが、複製品は複製品である。この分野では、さらなるデジタル技術の進歩が期待される。

「狩野永徳や尾形光琳は、デジタル画を見て何と言うだろうか」

【了】

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