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PJ: 池野 徹

「持ってるもの」それがスターのオーラだ。イチローの証明
2009年03月26日 08:35 JST


"The man whom God gets off"(制作/撮影by TV screen:池野徹) 

スポーツ等、勝負事におけるオモシロさは、意外性が起きた時に発揮される。プレーしているアスリートたち自身もそうだが、それを見ている一般の観衆が、ゾクゾクするほどの興奮と感激を覚えるものはないだろう。今回の野球という勝負の世界で、それが証明されたというか、最後に起きたのである。イチローという、まぎれもないスーパースターが勝負の決着を演じてみせた。イチローというとんでもないストイックな男が、野球の申し子みたいな、野球好きの男が、その実力は、野球好きなら誰でも知っている文句のつけようのない心技体を備えたパーフェクトに近い選手である事は、誰にでも知られている訳だ。

 しかし、その男がWBCという国別対抗戦の野球大会で、よりもうひとつ、オモシロイ野球ができると意気込んでいたに違いない。それは、ナショナルチームでやるアイデンティティー、孤独より仲間でやれる野球、当然イチロー自身中心的選手としての活躍を、日本という看板を背負い試合に臨んでいただろう。しかし、いざ蓋を開けると、打てない、納得できない、頭でっかちの散々の日々を過ごす事になる。その痛みをイチローは語っている。イチローという選手は、シングルヒットを打つ、つなぎの機動力のある名手であり、チャンスに打てる選手とは思っていなかったが。

 WBCでの韓国との決勝戦、9回の裏、2アウト、投手はダルビッシュ、後一つアウトを取れば日本の優勝だったのだ。ここで終わっていたのだ。しかし、韓国にヒットが出て同点になる。そしてもう一本出たら日本のサヨナラ負けだったが、ダルビッシュが踏ん張り同点で延長戦になる。そして、ランナー2、3塁となり、イチローが決勝のヒットを打ったのだ。この巡り合わせを持ってくる男、それは何だろうか。それは,スターのオーラなのだ。誰も知らないがイチローは持っていたのだ。イチローは心で実況中継しながら打席に立っていたという。「持ってるものが自分にはある」「神が降りて来た」と言った。

 この裏には、同点にされたダルビッシュを変えずに10回の裏に投げさせた、原監督がいる。先発投手のダルビッシュをクローザーに使った、原監督もジャイアンツのスターのオーラを持った監督だ。ダルビッシュは最後に三振をとり日本は、プレッシャーのかかった連覇を達成したのだ。ダルビッシュも若き日本のスターだった。他に、松坂投手は、スターのヒカリを見せたし、岩隈投手もスターの仲間入りができた。

 もちろん野球は、一人のスターで勝てるスポーツではない。こつこつとヒットを打つバッター、三振をとるピッチャーがいて、よく走り、よく守る選手がいて、そのトータルとして全員一丸のスピリットを発揮し、目標に対してモチベーションを高め、勝負を勝ち取るのである。しかし、よく言う様に、皆さんの応援のおかげ、一人一人のおかげというが、勝負事は、それだけでは全く面白くないのである。絶体絶命追いつめられて、それを逆転して勝ち取るサムシングのゴッドパワーがあるから、オモシロイし、感動する訳だ。そのぎりぎりのシーンに登場する男、スターがいるのだ。

 スポーツは、勝負であり、時には無残に破れ、そして時には、信じられないトップに立てる至福感に浸る事ができる、波瀾万丈であればあるほどオモシロイのだ。もしイチローが、ぼてぼてのゴロでアウトになって、その裏、逆転負けしていたとしたらどうなっていただろうか。イチローも日本人も地獄に堕ちたはずだ。そこまでイチローの意識は読んでいただろう。イチローは、このWBCで、その勝負を一番楽しんだ、楽しめるものを「持っていた」本物のスターだった。

「憔悴した、空虚な、痩身の、大金持ちの男、イチローを見てみたい。それを想像できる幸せは、今、現在ある」

【了】

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