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PJ: 池野 徹

「桜の精」に撮り憑かれたミス・ユニバース。写真家、織作峰子
2009年03月21日 07:13 JST


"Mineko Orisaku"(制作/撮影:池野徹) 

幼き頃に見た桜の花は、その心に淡い映像として残っていたのだろうか。北陸の地に育った絵の描く事が好きな少女がいた。その小さな心に、感性への兆しが芽生えていた。石川県小松市の高校生のころ、陸上部でやり投げの選手として、北信越大会で入賞するほどの活躍をしたスポーツ好きの少女。そして京都文教短期大学在学中にミス・ユニバース日本代表に選ばれた運命、若くして花開いた女性、現在の写真家・織作峰子(1960-)である。

 美しい被写体と認め、感化され、人は心動かされ写真を撮る。しかし、美しい被写体を撮る人自身が美しい人であったら、撮られる被写体は違った顔を見せるのではないだろうか。ミス・ユニヴァースから、写真家・大竹省二に弟子入りして、写真家になった織作峰子は、その恵まれた環境は、花開いた桜の園のごとくであったろう。その写真展が、「時」と題して東京・銀座の三愛ドリームセンターのRING CUBEで3月30日まで開かれている。

 リング状のスペースに、数々の桜の大写真が咲き乱れている。演舞、銀色又兵衛桜、薄暮の宴、春雨桜、花かんざし、王仁塚一本桜、幽玄桜、落合の醍醐桜とストレートで確実な描写力。織作さんは「京都の醍醐寺の桜が好きです。そして、一本桜が気持ちをそそる」と言っていた。桜は、まさに日本の花である。春の気温に誘われて、ぱっと咲き、ぱっと散る。その短い命と散り際の美しさと、はかなさを、人間の時世に準(なぞら)えた、西行法師の詩歌を見るごとくである。

 同時に、ヨーロッパを旅された間隙を縫って撮った、モノクロームの写真が展示されている。「休日のエッシネン湖」「石畳の町」「スークの光線」など、奥行きのディテールが浮かび上がるモノクロのマチエールが見事に表現できている。しかし、悠久の時を感じる、時が止まった写真は、20世紀初頭のクラシカルな写真に見えてくる。縦位置にトリミングされた映像は、「スーラ」というプリント紙とともに、モノクロームの品格を見せてくれる。「被写体を前に時間をかけてその1枚を撮る」と織作さんは言っていた。

 現在、大阪芸術大学写真学科の教授も務めている。美人教授の学生たちは穏やかだろうか。「マジメな先生で、美しいカメラマンが、美しい写真を撮る、優等生過ぎじゃないですか」と意地悪な質問をした。「もっと崩れたとは言わないが、前衛的冒険写真はどうでしょうか」とたたみこむと、「その答えははっきりと自覚している。これからの私を見てください」ときっぱり言われた姿は、男装の麗人のごとく見えたのである。何かを秘めて、しかしはっきりと言葉を言い切る、やはりリアルな美しい人だった。

 会場にいきなり、にぎやかな声が流れ、知人のアルテクルーの伊藤恵子さんと、華道家の假屋崎省吾さんが現れて「美の競演?」となったのである。エクセビションの場は、一瞬にしてコラボレーションの出会いになるから楽しい。写真家を撮る私写真家としては、美しい桜に潜む「桜の精」の魔性の眼を撮れたらなと思った。

「世の中を 思えばなべて 散る花の わが身をさても いづちかもせん」西行

織作峰子写真展「時」
日時:3月4日(水)から30日(月)午前11:00から午後8時(最終日は午後5時まで) 火曜定休
会場:リコーフォトギャラリー / RING CUBE
場所:東京都中央区銀座5-7-2 三愛ドリームセンター9F受付
電話:03-3289-1521
公式サイト:リコーフォトギャラリー / RING CUBE

【了】

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