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PJ: 葦乃原 光晴

「貴殿を解雇いたします。」さあ、どうする? =(5)一歩でも前へ
2008年12月31日 07:57 JST


ハローワーク墨田は12月30日(火)も就職相談に応じていた。見上げると空は快晴だった。(撮影:葦乃原 光晴、12月30日) 

(4)のつづき。就職活動を始めて一カ月余りたって、初めて面接の機会を得た。国家資格を取得するためのセミナーを開催している会社で、受験対象者に電話でセミナー参加を勧誘する仕事だった。わたしにとっては未経験の仕事だったが、銀行員時代に預金の電話セールスをした経験が評価されたのだろう。

 面接会場に行くと5人の応募者が来ていた。会社の担当者から、「普段は応募者2人ずつで面接していますが、今回は予想外に応募者が多くて5、6人ずつで面接しています」と、説明があった。面接前にハローワークでこの求人に対する応募状況を確認したところ、1人の求人に対して54人応募していた。いったい、会社側は何人と面接するのだろうかと思った。

 わたしは幸い面接もパスして最終選考の筆記試験を受けた。しかしこのとき、まだ6人残っていた。結果を言うと、わたしは採用されなかった。54分の6には選ばれたが、54分の1には選ばれなかった。

 最終選考まで残っても採用されなければ、書類選考で落とされたのと結果は同じだ。しかし、気分的にはずいぶん違う。あきらめずに応募を続ければ、これから先も面接してくれる会社は見つかると希望が持てる。今回は面接の練習ができたと思えばいい。この次は、もっとうまく自分をアピールできるはずだと思えばいい。わたしは、この連載で(1)の記事を書いたときに、年齢の数ほど履歴書を書かなければならないだろうと考えた。まだ、その数は年齢の半分にも達していない。

 わたしは12月30日(火)にも、特別相談で窓口を開けていたハローワーク墨田に行った。さすがに求職者の数はまばらだったが、隣の席で、大晦日や正月の仕事がないか相談している人がいた。ほんとうに困っている人には正月など無いのだ。

 わたしがリストラになった勤務先で、5月までわたしの席の隣で仕事をしていた三十代半ばの男性がいた。彼はファイナンシャル・プランナーなど幾つかの資格を持っていて、資格を生かした仕事がしたいと話していた。わたしは、彼が会社に内証で転職先を探しているのを知っていたので、ハローワークで仕事を探しているのかと尋ねたことがあった。

 すると彼は、「ハローワークには行きません。ネットの転職サイトに登録してスカウトを待っています」と、答えた。そしてすぐ、「ハローワークで仕事を探している時点で、すでに『負け組』ですよ」と、付け加えた。

 世間で「勝ち組」「負け組」という言葉が使われ始めたころから、人々の格差拡大が顕著になってきたように思う。52歳で失業して晦日にハローワークで職探しをしているわたしは「負け組」かもしれない。しかし、この「勝ち組」「負け組」という言葉の中には、カネが全てという考え方が潜んでいるように思えてならない。金儲(もう)けがうまければ「勝ち組」で、「勝ち組」は価値ある人間、「負け組」は価値の無い人間という考え方が潜んでいるのではないだろうか。

 資本主義社会において金儲けしようと考えるのは当然のことで、金儲けができる能力はすばらしい。しかし、今の日本は、その考え方が強くなり過ぎていないだろうか。今年発覚した食品偽装は全て金儲けが目的だった。まだ来年以降も出てきそうだ。「派遣切り」も企業の金儲けのためだ。

 ハローワークで仕事探しをする人のことを「負け組」と思う人は思えばいい。しかしわたしは自分が、消費者を騙してでも金儲けしようと考える経営者や、今まで働いてくれた人に対し、年末に職も住み家も奪って寒空に放り出すような経営者に負けているとは思えない。

 各種報道によると、今年10月から来年3月までに職を失う非正規労働者の数が8万5千人に上るという。今回の不況は、いつ底を打つか予測がつかない。景気に関して明るい話題はほとんど聞かない。就職戦線は今後更に厳しさを増すだろう。しかし、求人が無いわけではないので、厳しくてもあきらめるのはまだ早い。わたしでも応募できる会社がある限り、わたしは年が明けてもハローワークで仕事を探す。【了】

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