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PJ: 安居院 文男

【書評】『暗黒日記』清澤洌著
2009年04月14日 08:54 JST


清澤洌著『暗黒日記』(1954年東洋経済新報社刊、300円)。古本屋で100円だったが、もうないだろう(14日、撮影:安居院文男) 

清澤洌という人をPJは知らなかった。『暗黒日記』という名前に惹(ひ)かれて東京・神田神保町の小さな古本屋で100円出して買った。汚い本で、表紙はぼろぼろ、読んでいると表紙の紙がぼろぼろとはがれ落ちる。東洋経済新報社が定価300円で出したもの。昭和29年6月19日発行と書いてある。

本は古いが、中身は大変おもしろかった。近代史上の人物との交流や、東條首相などの評判、第二次大戦が進み、日本が負け始めたときに、例えば、徳富蘇峰や頭山満などという人たちが、いかにアメリカという国を知らず、神国日本などと戦争を賛美し、それに当時無知な日本国民が熱狂したのがよくわかる。

昭和17年末から20年5月までの日記だ。原題は戦争日記。明治にアメリカに留学した長野出身の人らしい。後に英国大使だった吉田茂氏との知己を得るところなど、白州次郎のように外国をよく知っていた人だ。とにかく、どこをとってもおもしろいが、一例をそのまま書いてみる。

『昭和18年5月26日(土)、山本五十六大将戦死を昨日発表さる。正宗白鳥氏は、「田舎の景気はいい。子供を殺しても、それを運命的に見ている。日本国民は、戦争の前途に、たいした不安を持っていない」と話していた。そうだろうと思う。暗愚なるこの国民は、一種の宿命観を持っているのだ』

『昭和19年7月20日(木)、東条内閣総辞職す。さるにても、これほど乱暴、無知をつくした内閣は日本になかった。夜7時のラジオで大命が小磯と、米内に下ったことを知った。陸海の感情衝突は、もはや国民の常識だ。この協力を要請する最後の試みが、ここでなされたのである。陸海軍1方の代表者では、他方が言うことをきかぬことを示すものだ』

毎日が激動の中、今、歴史が動いていることがよくわかる。また、日常生活の様子も、庶民の食料がなくなってもなお、軍と中央の官僚が、いかにこうかつに私腹を肥やしていたかがわかる。本人は敗戦を待たずして病死している。生きていれば、戦後に活躍したことだろうと惜しまれる。

余談だが、巻末に読者カードが挟まっていたり、昭和29年6月の東洋経済新報社の「出版だより」という、茶色に変色したちらしが挟まっていたりして、当時が忍ばれる。戦争が終わってから9年後の出版だ。何回か復刻されている。

戦争も忘れたころにやってくる。【了】

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